ITmedia NEWS >

MicrosoftとGoogleの「宇宙戦争」で浮かび上がるローカル検索の課題

» 2005年05月31日 09時49分 公開
[David Coursey,eWEEK]
eWEEK

 先ごろMicrosoftGoogleが発表したローカル検索サービスには、興奮せずにはいられない――今やAmazonもこの波に飛びついている。道路地図と航空写真の合成表示、2地点間の経路案内、興味深い場所に関するデータベースの画面表示は印象的だ。Microsoftはこの取り組みを「Virtual Earth」と呼ぶ。私が見たデモでは、斜め45度上からの景観も披露され、高度を下げて仮想道路に降りながら、建物の側面を見ることができた。

 これらが素晴らしい「デモウェア」であることは間違いない。

 MicrosoftやGoogleが構築しようとしているのは、ローカル地図と航空写真の上にデータベース情報を表示する地理的なユーザーインタフェースだ。地理情報システム(GIS)と呼ぶのは行き過ぎかもしれないが、明らかにその一端ではある。データベースに収められる情報が増え、機能が充実してくれば、こうしたサービスはいずれ“低コストのGIS”として確立されるだろう。

 しかし実生活でローカル検索を――実際にその“地元”に住んでいる人々にとって――有用にすることは、デモを作ったり、サービスに地理的ユーザーインタフェースを組み入れる以上に難しいかもしれない。

 私がVirtual Earthのデモを見た際Microsoftのスタッフに提起した問題を挙げよう。スタッフはまず、シアトル市街にあるホテル近くのステーキハウスを見つけるために、このサービスをどう利用すればいいかについて示してくれた。それから彼らが別の場所に地図をドラッグ――おそらく私がホテルを変えたのだろう――すると、瞬時に新しい場所のレストランのリストが表示された。

 この第1世代の“MSN仮想地球”が一方通行といった細かい事情を把握していない――したがって私がシアトル市街から出たことは良かったのかもしれない――ことはひとまず置いておこう。しかし、このサービスは、もっと複雑な質問について答えられず、おそらく数年先までそのままだろう。

 例えば、私がちょうどホテルに到着したとする。午後10時だ。となると、ホテルから歩ける距離にあり、この時間まだ開いていて遅い食事を取れるすべてのレストランのリストが欲しくなる。

 オンラインでは、以前からレストランに関する多くデータベースが提供されている。しかし読者の皆さんは最近これらを使ったことがあるだろうか? 誰も使っていないのではないだろうか。なぜなら、一般的にこうしたデータベースでは、古い情報しか掲載されておらず、網羅範囲も広くないからだ。時間を区切った検索ができるサービスはこれまで見たことがないし、営業時間がこれらデータベースの項目に含まれているのかさえ疑問に感じている。

 したがって、私は人々と同じ行動に出る。生半可であまり役に立たない情報をオンラインで探すよりも、ロビーに電話してコンシェルジェやドアマンにお勧めのレストランを聞くのである。たとえMicrosoftのVirtual Earthが現在うまく稼働していたとしても、やはり同じ行動に出るだろう。

 Microsoftは、コンテンツの質と網羅範囲の改善のために、ユーザーや企業が持っている情報を入力できるようにしてデータベースを拡充(および修正)する計画だと説明している。だがそれは、ローカル検索サービスが管理しなければならない膨大な情報量を取り扱う正しいソリューションとはいえない。

 実際、インターネットは誰かをだまして金をせしめることができる危険に取り巻かれており、それを考えると外部者にデータベースを開放し、入力できるようにする手法はデータベースの有用性をさらに低くすることになる。しかも生身の人間が新しいデータをいちいち検証するようになるとは現実的に考えられない。

 Googleのローカル情報がほかの検索結果と同じくらい“汚染”されるようになるまでどれくらいかかるだろうか? Googleが抱える最大の問題は、Microsoftでもローカル検索の必要性でもない――それはGoogle自身の品質が下がり続けることだ。

 私が住んでいるカリフォルニアの都市の日焼けした7万5000人を、このサービスの仮想世界の住民にするには、どれだけの情報量が必要か想像すらできない。もちろん、詳細レベルと網羅範囲を制限して観光客向けの、あるいはイエロページ的な情報にしてもいいが、こうしたものは既にオンライン上で広く提供されている。だがそれが結論だとすれば、MicrosoftとGoogleのサービスは単に優れたユーザーインタフェースとユーザー体験をもたらすであろうサービスに終わることになる。

 その点に関して、航空写真を最初に見たときは感激するが、たとえ地図が重ねられても使い勝手は悪いことを言い添えておきたい。私自身、数多くの航空写真にアクセスするが、これを使うときは目的地周辺に何があるかを本当に知る必要がある特別なケースに限られている。これだけは信じて欲しい――上空からの景観を見たときの感激は、すぐに冷めるということを。

 しかしローカル検索に伴う最大の問題はモバイル対応だ。新しいサービスを職場や自宅のデスクトップで利用しても素晴らしいに違いないが、モバイルデバイス上ではどれくらいうまく機能するのだろうか?

 どんな形態のハンドヘルドデバイスで不動産を閲覧しても、デバイスによって、「小さい」から「極小」レベルにとどまる。現行のユーザーインタフェースは、最良のものでさえ何かを検索しようという意欲をわかせるものではない。わいたとしても有用な情報量をダウンロードするにはかなり時間がかかる。

 どんな地図でも好きだという人と同様、私自身はこのようなサービスの登場を喜ぶ性質だ。だが同時に、自分がこうしたサービスをいかに活用したいか、そして各アプリケーションが有用になるためにどれくらいの情報量が必要になるかについて、あらゆる方法を考えてみる。そして心配になる。それから、携帯電話の小さな画面上でも使えるようにするための課題を加えると――ものすごく不安になってくる。

 それでも、検索サービスはGoogleにとって自社が200ドル超の株価に価する企業であることを証明するために挑むべき新たな戦場だ。一方Microsoftは、ソフトウェア販売以外の収入源を見出す必要に迫られている。ここには動機とビジネスチャンスがあり、企業各社はこれにきちんと決着をつけるために多大な資金を投じることだろう。

 ローカル検索サービスは普及するだろう。しかしそれには非常に長い時間がかかるはずだ。取り組みが進められる間にも、私としては、競合企業が「ロ−カル検索は、中途半端なデータ集合体の穴を埋めるユーザーインタフェースの仕掛けだけでは成り立たない」ことを理解してくれることを願っている。

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.