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“エレキの復活”へ嵐の船出 ソニー新体制発足

» 2005年06月23日 21時29分 公開
[ITmedia]

 ソニーのハワード・ストリンガー会長兼CEO(最高経営責任者)と中鉢良治社長兼エレクトロニクスCEOは6月23日、就任後初の記者会見を都内で開いた。ストリンガー会長は「エレクトロニクスの復活」を最大の課題に掲げ、不採算部門からの撤退を含め選択と集中を進める進める方針を明らかにした。詳細な新経営計画は9月末に発表する予定だ

会見に臨んだストリンガー会長と中鉢社長

 「競争戦略では一定の成果があったが、成長戦略がなかった」(中鉢社長)ことを反省し、中長期的な成長の柱になりうる有望分野への選択と集中を進める。具体的な分野は新計画で明らかにするが、中鉢社長はテレビ、Blu-ray Discなどのレコーダー・プレーヤー、携帯型プレーヤーなどを重点領域として上げた上で、「研究開発レベルでは撤退分野を定めてやってるのは事実」と明かした。

 前日の株主総会で、出井伸之前会長が未達を陳謝した売上高営業利益率などの数値目標や、事業再編策は新経営計画で明らかにする方針だ。

「顧客の視点からずれていた」

 コモディティ(日用品)化と低価格化、焦点を絞ったライバルの攻撃────2期連続の赤字に陥ったソニーのエレクトロニクス事業だが、建て直しを迫られた中鉢社長を取り巻く環境は厳しさを増す。「嵐の中の船出だ」

 「エレキの復活」に向け、中鉢社長が掲げるのは商品力と技術力の強化だ。だが「技術に自信を持つばかり、顧客の視点からずれてしまっていた」と話し、高い技術を誇る企業が陥る典型的な落とし穴にソニーもはまってしまったことを認める。

 「世界最小・最軽量」などはソニーのお家芸だが、「お客に真っ先に買ってもらえる製品作りがわれわれのビジネス。お客が何を求めているのか、今後はスペックを含めて精査していく」という。

 ただ、「決してご用聞きではない。常に半歩先を行かねばならない」とも話す。ユーザーの視点に立ちつつ、初代ウォークマンが代表するような「新しい楽しさ、新しい喜び」をもたらすモノ作りこそが“ソニーらしさ”の復活につながるという考えだ。

「ソニーユナイテッド」

 ストリンガー会長は最近、グループの幹部約1000人を集めたミーティングで「『ソニーユナイテッド』になろう」と呼び掛けた。経営改革の重点課題の1つは、ソニー長年の病と指摘され続けてきた社内の縦割りの突破だ。

 デバイス畑出身の中鉢社長だが、「デバイスやってる人だけでは限界があるし、セット(最終製品)だけの人も限界がある。セットとデバイスの融合は協力し合わないとできない」と説く。優れた独自デバイスを活かして新しい製品を世に送り出す──かつてソニーがお家芸としてきたことが「最近は少なくなってきた」(中鉢社長)。

 ソニーの潜在力についてはストリンガー会長、中鉢社長とも自信を持っている。一方で事業間の厚い壁が協力をはばみ、せっかくの技術を活かせないできたことも認める。しかしストリンガー会長が「米CBS時代、社内のサイロをかなり長い間をかけて打ち破ってきた」と話す通り、縦割り意識を短期間で解消するのは難しい。

 「ソニーユナイテッド」は、言わばソニーを一枚岩の“チーム”に転換するスローガンだ。中鉢社長は会見で、「対話」「コミュニケーション」という言葉を強調した。強いチームにはチームメイト同士の信頼が絶対だ。そして「信頼のカギはコミュニケーション」。社内の力を結集し、1+1を2以上にする「シナジー」と、複数の技術を組み合わせて新しい価値を生み出す「ケミストリー」(化学)──2つの効果が「ソニーユナイテッド」の目指すゴールだ。

 「私と中鉢社長、井原勝美副社長は『三銃士』」と話すストリンガー会長も「1カ月のうち2週間は日本にいる。必要なら日本中足を運ぶ」と対話を重視する姿勢を見せる。「私は孤独な独裁者ではない。妻との夕食より中鉢社長との夕食のほうが多くなるだろう」

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