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PSE法、「ビンテージ品のみ除外」に困惑する中古業者(1/2 ページ)

» 2006年03月15日 18時41分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「4月までに売り切るつもりだったのに」――ある中古品販売事業者は困惑を隠さない。電気用品安全法(PSE法)に適合したことを示す「PSEマーク」なしの家電が4月1日から販売できなくなる問題で、経済産業省は3月14日、「ビンテージ品」と呼ばれる古くて貴重な楽器などを「例外」とし、PSEマークなしで販売を認めると発表した

 「ビンテージ品販売を禁止すれば、音楽の発展に支障が出る」とするミュージシャンの声などに押された土壇場の対策だったが、既に在庫を格安販売したり、店舗の縮小を決めていた中古業者は急な方針転換に困惑。経産省の対応を「場当たり的」と批判する声も挙がっている。「ビンテージ」の基準も不明確で、「楽器だけを適用外とするのは不公平」との意見もある。

正直者がバカを見た?

 中古AV機器を販売するハードオフは今年1月、「中古品もPSE法の対象になる」とする内閣法制局の見解を得て対策を検討。PSEマークのない商品の買い取り停止を決め、在庫品も4月までに売り切ろうと、2月からセールを実施してきた。

 「経産省の事務次官も先週末、『今ルールを変えることは適切ではない。正直者がばかを見ないということも大事』と話していたと聞き(関連記事参照)、現状は変わらないという確信を持っていた」(ハードオフの担当者)

 14日の経産省の発表を受け、同社はビンテージ品のセールを急きょ打ち切り、買い取りも再開することに決めた。しかし既に多くの商品を格安で売ってしまった後。「良い物から売れていった」(ハードオフの担当者)という。

 買い取りにも不安が残る。ビンテージ品の定義が不明確で、「売れない品を買い取ってしまうリスクもある」(ハードオフの担当者)ためだ。ビンテージの定義について経産省は「専門家の意見などを聞きながら決めることになるだろう」としているが、明確な基準などは示していない。

「もう戻れない」――対策急いだ中古店の“損害”

 ビンテージのAV機器を中心に販売していた、東京・秋葉原ラジオ会館の中古楽器店「清進商会」は、PSE法を知って事業の大幅縮小を決め、2人いた従業員を解雇。店舗も引き払い、小さな事務所に移転した(関連記事参照)

 店主の小川進さんは、「当店で扱っている商品のほぼすべてがビンテージ品。除外対象にあてはまるだろう」と語るが、元の店舗に戻ることはできないという。「すでに引っ越しを終え、200万円以上払って原状回復も行った。従業員も解雇した。以前の業態には戻れない」(小川さん)

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