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Microsoft、いよいよ携帯デバイスに本腰

» 2006年06月30日 18時41分 公開
[John G. Spooner,eWEEK]
eWEEK

 米Microsoftはモバイルデバイス向けWindowsの改良に注力している。Windowsクライアント製品プロダクトマーケティング部門にWindowsクライアントモビリティマーケティングチームを新設し、新たなマーケティング手法を考案して強化を図りながら、新しいパートナーシップを模索するとともに将来のWindowsアップグレードに向けてより一層モバイルに適した機能の研究に本腰を入れる構えだ。

 Windows製品管理担当ディレクター、ミカ・クラマー氏率いる同マーケティングチームのスタッフ数は現在20人未満と小規模ながら、その存在はモバイルコンピューティングに対するMicrosoftの考えと重点のシフトを表している。

 ノートPCおよびスマートフォンの世界市場が拡大傾向にあることから(IDCによれば、世界ノートPCの出荷台数は2005年の6500万台から2010年には約1億4800万台に増加すると見込まれており、世界PC総出荷台数の半分近くに迫る勢いを見せている)、Microsoftは次期WindowsのVistaをはじめとする自社OSに、よりモバイル向けの機能を付加し始めている。

 Microsoftの本拠地、ワシントン州レドモンドで行われたeWEEKの取材で、クラマー氏は次のように語った。「市場におけるモビリティ、教育、トレンドけん引の強化という点で、Microsoftがモビリティ分野で大きな役割を果たす時期が来た。顧客のモビリティをいかに高めるか、調整の取れた構想と戦略が必要となる。それには電話からデスクトップPCの代替としてのノートPCまでの、すべてがかかわってくる」

 これまで同チームは、Ultra-Mobile PC(UMPC)分野、ウルトラポータブルノートPC分野、そしてデスクトップPCの代替としてのノートPC分野で、より多くの機能を搭載したモバイルコンピュータを推進するなど、幅広い目標に向けて活動している。また、PC向けWindowsと携帯端末向けWindows Mobile間のスムーズな連携を確実にする目標も掲げている。

 2006年4月に設置されたこのチームは、これまで分野やOSに特化して個別の取り組みを進めてきたMicrosoftが、初めて幅広いモバイルハードウェアタイプの提案を試みたものだとクラマー氏は説明した。

 同チームに課せられた最初の仕事は、Windows Vista搭載ノートPCのマーケティングテーマの考案を支援することだった。テーマの1つである「staying in touch(いつでもどこでもつながる)」には、WWAN(無線WAN)などVistaに備わったアドオンによる通信機能の連係などが含まれる。「collaboration(コラボレーション)」というテーマの下では、ノートPCユーザーがWi-Fi無線通信を使って自分たちのPCにアクセスし、ファイルを共有したりプレゼンテーションを配信する、いわゆる無線通信によるコラボレーションの実現が目指されている。

 モビリティへの注力は、Microsoftにとってかなりストレートな戦略と言える。つまり、この分野こそ現在PC業界で成長しているところだからだ、とアナリストらは指摘する。一部にはもっと積極的に動くべきだと見る向きもある。

 カリフォルニア州サンマテオに本拠を置くIDCのアナリスト、リチャード・シム氏は、Microsoftが新設したチームは「非常に理にかなっている。(PC業界で見られる)成長の多くは、現在モバイル市場から創出されている」と話す。

 「(Microsoftが)モバイルに特化したOSを投入する時期が来た、あるいは少なくとももっと積極的な(モバイル)機能を提供すべきだ。例えば省電力性などといった基本機能以上の何かを」とシム氏。モビリティは「Microsoftにいる誰もが考えるべき重要なテーマだ」

 モビリティマーケティングチームには、さらに大きな長期目標がある。ハードウェアメーカーおよびソフトウェアメーカーとの新たなパートナーシップの模索、そしてWindows XPとVistaに関するモバイルユーザーからのフィードバックを探り出して新しいモバイル指向機能を考案することだ。「わたしのチームは将来のOSにも目を向けている」とクラマー氏は語る。

 同チームが進めているもう1つの短期パートナーシッププロジェクトは、中小企業向けのVoIP(voice-over-IP)ソフトウェア開発に関連したものだと言う。

 このような提携により別個にVoIPを開発しているからといって、Windowsの将来版にVoIP機能を追加する可能性がないわけではない。

 モビリティマーケティングチームは、UMPCの将来にもかかわっている。MicrosoftはこのUMPCに新しいパートナーを加えることで、年内により大きな成功を手にしたいと考えている。

 MicrosoftはUMPCメーカーの提携先を拡大し、これら企業とともにUMPC製品の価格引き下げに取り組みながら省電力性を強化し、より広範なフォームファクタを提供していく考え。UMPC用ソフトウェア開発に関心のあるデベロッパーの支援も検討している。

 UMPCは「当社がモビリティで目指している製品ポートフォリオ全体に適合する。これまでとは違ったイノベーションおよびPCの用途を促すものであり、重要なフォームファクタだ」(クラマー氏)

 「独創的でより良い体験を生み出すために必要なパートナーシップを検討している。市場全体のポートフォリオをとらえると、個々の(モバイル製品)分野の関心を引くであろう先導要素とターゲット市場が見えてくる」(同氏)

 MicrosoftはUMPC用アプリケーションを提供できるISV(独立系ソフトベンダー)との提携を検討しており、例えばこうしたアプリケーションによってUMPCはコンシューマー向けの自動車内ナビゲーションデバイスとして機能するようになる。ビジネス指向アプリケーションであれば、WWANサービスを使って現場担当者に注文を送ることが可能になるかもしれない。

 クラマー氏は「ISVのソフトウェアをUMPC上で効率的に走らせることができるよう、彼らへの支援を真剣に考えている」と語った。

 実際、同チームの焦点は主に、パートナーシップの締結と自社のマシンへのWindows Vista採用を計画しているパートナーへのマーケティング支援となる。

 2007年1月に出荷予定のWindows Vistaは、企業向けとコンシューマー向けに幾つかの異なるエディションが用意される。「Slideshow」と呼ばれる新機能は、Vistaを走らせるノートPCの外側に設置されたサブディスプレイを提供する。この小型ディスプレイはノートPCの電源がオフでも起動可能だ。

 もっとも、Slideshowを使ってユーザーが電子メールやインスタントメッセージにクイックアクセスできるアプリケーションの開発には、まだ時間がかかりそうだ。

 「こうしたユーザー体験を市場に投入できるように、今はOEMパートナーやOHV(独立系ハードベンダー)と協力し合うことが必要だ」(クラマー氏)

 新たなWindows機能の研究に関して、モビリティマーケティングチームはしばらく時間をかけるもようだ。Vistaサービスパックアップデート以外の次なるWindows主要アップデートである「Fiji」は、少なくとも2008年まで登場しない見込みだからだ(5月31日の記事参照)

 それでも同チームの取り組みは「Microsoftがモバイル環境、すなわちモバイルPCで目指しているものに今まで以上に力を入れていることを、当社顧客およびパートナー企業に示す動きであるはずだ」とクラマー氏は話している

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