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MicrosoftはVistaの混乱を乗り越えられるか

» 2006年05月31日 15時43分 公開
[Stan Gibson,eWEEK]
eWEEK

 5月23〜25日にシアトルでWinHECカンファレンスを開催したMicrosoftは、Vistaのリリースに向けて重要な局面を迎えている。同社はVistaの各種エディションの具体的なハードウェア要件を公表したばかりで、来年1月に予定している同OSの一般リリースに先立って、突然のスケジュール変更がなければ、近いうちにβ2を200万人に配布する。

 現時点では、Vistaには期待と不安が交錯しているようだ。Vistaには、多くの企業が歓迎しそうなさまざまな機能が搭載される。例えば、高度なセキュリティ機能、改善されたノートPCサポート、強化されたコラボレーションおよびワークフロー機能、診断機能、FAXとスキャナのサポートなどだ。だが、既にβ2を入手した人々は、β2コード、とりわけそのネットワークサポートとドライバは安定しておらず、Microsoftが予定どおりに発売できるかどうかは心もとないと話している(5月23日の記事参照)

 VistaはWindows XPよりもはるかに多くのメモリを必要とし、Vistaのユーザーインタフェース「Aero」が動作するには強力なグラフィックスハードウェアが必要だ。Aeroは、現在使われているPCの多くでは動作させることができないが、これを必要とする企業ユーザーは多くはないだろう。とはいえ、一部の企業は新しいVista対応のPCを多数購入しなければならないかもしれない。またMicrosoftは、暗号化機能のBitLockerのサポートを、同社のSoftware Assuranceプランの加入企業にのみ提供する考えだ。

 これまでの5年以上に及ぶVista開発の取り組みは、Microsoftとその多くの企業顧客にとって大成功だったのか、それとも大失敗だったのか。これは聞くに値する質問だ。あるいは、もっと端的に言えば、問題は、Microsoftがこれからもこれまでのやり方でいくのかどうかだ。MicrosoftはVistaに続く次のWindowsの開発でも同じようなアプローチを継続するのだろうか。この「Fiji」というコードネームの製品は2008年にリリースされると見られている。

 われわれの見方では、明らかにMicrosoftには、同社自身のため、そして顧客のために、学ぶべきことと改めるべきことがある。5年以上もの年月は、メジャーバージョンの開発サイクルとしては長すぎる。

 しかも、Microsoftが2004年に目玉機能の1つだったWinFSの搭載を見送るなど、Vistaの機能構成の変更を重ねたことで、顧客はいつまでもはっきりした見通しを立てられなかったほか、βテストのやり直しも必要になった。また、MicrosoftはβリリースをCTP(Community Technology Preview)と呼んで顧客を混乱させ、後に以前のようにβと呼ぶようになったが、その一部はCTPの寄せ集めだった。Vistaのハードウェア要件は何年も定義されないままになっていた。

 要するに、Microsoft幹部が規律の取れた開発プロセスを徹底しようとしたにもかかわらず、Vistaの複雑さのせいで、その開発とリリースのサイクルはほとんどコントロールできなくなってしまった。今後、Microsoftは規律を徹底する方針を必ず実行しなければならない。リリースサイクルの短縮、確固とした機能セット、ハードウェア要件の明示、用語の一貫性は、もはや賢明なことであるばかりでなく、必要不可欠なのだ。

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