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» 2006年07月10日 16時19分 UPDATE

ブログでも2chでもない「市民新聞」とは――オーマイニュース鳥越編集長に聞く

韓国のネット新聞「OhmyNews」日本版の創刊準備が佳境だ。ブログや2ちゃんねるなど、ネット上で発言できる場が整っている日本で今、ネット新聞を作る意味は何か。鳥越俊太郎編集長に聞いた。

[岡田有花,ITmedia]

 韓国の市民参加型ネット新聞「OhmyNews」が日本に上陸する。一般人の「市民記者」とプロ記者の記事を、1日計200本ほど掲載するメディアで、韓国の市民記者数は4万人。2002年の大統領選では、盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補の当選に大きな影響力を持ったと言われており、既存のジャーナリズムに匹敵する力を持つとされている。

 3月に設立した日本法人「オーマイニュース・インターナショナル」はOhmyNews初の海外支社。韓国Ohmynewsとソフトバンクの合弁で、8月下旬に創刊する日本版の公開準備を進めている(関連記事参照)

画像 オーマイニュース・インターナショナルのオフィス

 都内にオフィスに約20人のスタッフが勤務。うち約10人が、新聞や雑誌記者経験者など編集にスタッフだ。市民記者は年内に1万人、最終的には4〜5万人程度集める目標。収入はバナー広告から得る計画だ。

 編集長は、ジャーナリストでテレビキャスターとしても知られる鳥越俊太郎さん。鳥越さんに、オーマイニュースの役割や目指す姿を聞いた。

――編集長に就任した理由は?

 韓国Ohmynewsの呉連鎬(オー・ヨンホ)社長から4月に「編集長をやってくれないか」と依頼を受けた。ぼくは昨年12月にがんの手術をしたばかりで、体力的に自信がなく即答できなかった。家族や主治医、テレビ局関係者に相談すると、体に良くないと全員が反対。

 でも、オーさんが言う「市民みんなが記者」という世界に興味がわいた。それが韓国では成功している。日本でも、本格的に成功しているとは言えないかもしれないが、「JANJAN」やライブドアのパブリックジャーナリストなどがある。

 市民記者による双方向のメディアは、これまで40年、ジャーナリストとして仕事してきて経験したことのない世界。好奇心が湧き、やろうと決めた。

――どんなメディアになるのか。

画像 「どうすればうまくいくか、分からないから面白い」と鳥越編集長

 「責任ある参加」がキーワード。日本人は、特に政治への参加意識が希薄になっていた。それは税金の源泉徴収システムのせい。税金を払っている意識があまりなく、税金の行方について見届けようという気持ちが出てこない。

 だからこれまでの政治は劇場型だった。小泉劇場がその典型で、政治が自分の生活に関わっているという意識が薄い。しかし21世紀には、劇場型から運動会型変わりつつある。劇場は見ているだけだが、運動会は参加しないと楽しくない。

 そういう変化の中でオーマイニュースが生まれてきた。劇場型に慣れた今の日本人に、市民記者として発言してもらうのは難しいかもしれない。だがこの流れの中で、新聞という“広場”に自ら記事を書く人が増えるのでは、希望的観測だが、そう思っている

 マスメディアのように一方通行ではなく、今までマスメディアに相手にされなかったような市民の声を載せていきたい。子ども学生も、農業をやっている人も町工場の職人も、キャリアも新聞記者も。みんな市民。国民全員が市民だ。

――2ちゃんねる(2ch)やブログなど、発言の場はたくさんあるが。

 2chはどちらかというと、ネガティブ情報の方が多い。人間の負の部分のはけ口だから、ゴミためとしてあっても仕方ない。オーマイニュースはゴミためでは困る。日本の社会を良くしたい。日本を変えるための1つの場にしたいという気持ちがある。

 オーマイニュースも、基本的にはブログとそう変わらない。ただブログは基本的には日記。内容は他愛もないことが多く、社会が変わるような発言は少ない。内容が事実である担保もなく、中身の確認はできない。

――市民記者の記事は、事実の確認をしてから掲載するのか。

 もちろん。ただ、記事が100件きたら100件全部裏を取るというわけではない。特定の人物を名指しして批判したり、違法行為を摘発するような記事は、関係者に裏を取る。

――2ch管理人は「情報の真偽は読む人が判断すればいい」と言っているが。

 2chはエンターテインメント、娯楽だからそれでいい。これが報道、ニュースと言われた上で嘘だったら大変なこと。2chを見るときは、あそこには本当もあるかもしれないけど嘘もある。そういうもんだ、と思って見ているから成り立つ。

――市民記者に「記事を書きたい」と思ってもらうにはどうするか。

 「あなたにとって今日の喜怒哀楽ニュースは何かありますか?」と問いかけたい。誰だってその日見たこと、聞いたことで喜怒哀楽のニュースがある。目の前で交通事故があったとか、今日嫌なものを見てしまったとか。市民記者の日常のニュースから、社会全体で考えた方がいいことが見つかれば、専門記者が追加取材する。

 編集部の専門記者が今、米軍再編問題などいろいろ取材している。そういうものに誘発されて、書いてもらえることもあるだろう。

画像 携帯電話と手帳は手放せない。妻や娘と携帯メールもやりとりする。文字サイズは大きくしているが、それでも眼鏡をかけないと読みづらいのが悩みだ。自宅にはPower Mac G4とPowerBookがあるという。モバイルPCはLet'snoteで、イラク戦争取材に持って行き、内蔵DVDで米国映画を見た。「アメリカが戦争しているところで、アメリカ映画を見るのも変ですよね」

 情報が事実に立脚して伝われば、大きな影響力を持ち、社会を変える力になる。市民が社会を良くしたい、変えたいと思った時に使う場という位置づけができれば、後は自動的に走り出す。ただ最初に走り出す前は、押してやるとかモーターをかけるとか必要になる。記事を書いてもらうための仕掛けは作らないといけない。

――影響力を高めるための策は。

 情報のインパクトだろう。オーマイニュース以外にはどこにも出ていないニュースがあれば、マスメディアが追いかける。韓国でも、そういう風にしてこだまのように情報が駆け抜けている。

 インパクトがある情報を集める方法は、やってみないと分からない。韓国では成功例があり、荒唐無稽な話ではない。ただ、日本の社会と韓国社会の違いがあるから、日本は日本独自の仕掛けや表現のシステムなどが必要だろう。

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