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Web2.0バブルはまだ続くか

» 2006年07月26日 18時39分 公開
[Eric Lundquist,eWEEK]
eWEEK

 Web2.0は、はじける寸前のバブルなのか。そもそもWeb2.0は存在したのか。これらはブロゴスフィア(わたしはこの言葉がなくなることを心から願っている)で盛んに議論されている問題であり、B2B市場にとっても一定の重要な意味を持っている。わたしは、消費者分野ではバブルがはじけるのは確実だと思う。しかし、B2B分野は今回は安泰だろう。

 オム・マリク氏をはじめ多くのブロガーが、Web2.0はバブル崩壊が迫っていると声を大にして警告している。Web2.0企業の基盤そのもの、つまり社会的交流に特化したWebプラットフォームそのものが、破綻の原因になるというのがその主張だ。こうしたソーシャルWebは、ベースとしているものがブログ、個人の自己紹介、ポッドキャスト、ビデオキャストのどれであるかにかかわらず、クールなたまり場の提供を、収益を生むビジネスとして成立させようとすると、もともと抱えている問題に直面せざるを得ない。

 Web2.0の課題を幾つか挙げてみよう。まず、大きなサイトを運営するには、大規模で高コストなインフラが必要だ。また、大きなソーシャルサイトはクールな人々だけでなく、Webにアクセスできるあらゆる怪しげな人々も引きつける。さらに、ビジネスとしての展開を目指すクールなサイトは、かつてのネットバブルを覚えておらず、そこから学んでいない人々なら確実につまずくはずの、財務、法律、経営上の難題を乗り越えなければならない。

 だが、現在B2B分野で進められているWeb関連の計画は、消費者分野のそうした計画とはまったく別物だ。このビジネス2.0の世界では、デジタルな世界とリアルな世界が結びつけられようとしている。例えば、Hewlett-Packard(HP)のラボが最近発表したMemory Spotチップは、大きな関心を集めた。トマトの種ほどの大きさのこのチップは、10Mbpsのデータ転送速度と約4Mビットの容量を持つ。ラボでの試作から実用化までの道のりは遠いが、Memory SpotチップやRFIDチップ、拡張バーコード、Dust Networksの無線センサーのいずれの場合でも、リアルな世界の情報がITインフラの一部になろうとしている。企業が電力や空調の使用状況を把握したり、製造ラインを流れる部品のリアルタイム情報を利用したりできることのメリットは明らかだ。そしてリアルな市場のメカニズムを通じて、ビジネスメリットが理解され、そのメリットを活用できる製品が作られる。消費者向けのソーシャルネットワークはいかにクールなものでも、リアルな市場を模倣することしかできない。

 ビジネス2.0の世界のもう1つのプラス面として、仮想化のメリットが得られることがある。ゲーム業界では仮想世界の真価はまだ発揮されていないが、ビジネスにおける仮想世界は業務の現場でその可能性を実現しつつある。例えば、多数のプロセッサにまたがって動作できるOS、多数の物理デバイスで構成される仮想ストレージネットワーク、そしてホスティングされた仮想アプリケーションだ。ユーザーはこうしたアプリケーションを個人あるいは企業単位の契約に基づいてネット経由で利用でき、更新プログラムや新機能の提供をシームレスに受けられる。これらの技術はビジネスコンピューティングのあり方を変えつつある。Salesforce.comVMwareNetSuiteといった企業が先頭に立って、仮想アプリケーションは、インストール、更新、保守を社内で行わなければならないアプリケーションよりも効率的に利用でき、使い勝手が良く、堅牢であることを証明しようとしている。

 ビジネス2.0の世界には、消費者分野のソーシャルアプリケーションに似た要素もある。CEOやCIO、あるいはそのほかのCXOがWeb上で交流し、お互いの経験を共有するというものだ。だが、CEOは概してコンピュータにそれほど詳しくなく、ほかのCXOも、オンラインの情報交換の場に参加するにあたっては、会社の情報開示ルールやプライバシーポリシーを念頭に置いておかなければならない。ソーシャルアプリケーションが大きく発展するためには、多くのユーザーが必要だが、そうした発展自体が法や政治、管理上の制約を招くことになる。こうした制約は克服されるかもしれないが、いずれにしても当面は、ビジネス2.0におけるリアル世界と仮想世界のWebを介した結びつきのおかげで、バブルの崩壊はないだろう。

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