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» 2006年08月30日 21時08分 UPDATE

美少女ゲームは「ゲーム」なのか

美少女ゲームがゲーム性を失ってきている。プレイヤーはテキストを読み、たまに出てくる選択肢を選ぶだけ。ゲームよりも小説や映画に近いと言えそうだが、それでも「ゲーム」と呼ばれるのはなぜなのだろうか。

[岡田有花,ITmedia]

 学校の教室などが背景。そこに少女の「立ち絵」が入れ替わり立ち替わり現れる。「プレイヤー」は表示されるシナリオを読んでストーリーを追うだけ──こんなPC向け美少女ゲームが、1990年代後半からメインストリームとして人気を集めてきた。

 これらのゲームには、いわゆる「ゲーム性」がほとんどないにも関わらず、「ゲーム」と呼ばれ、受け入れられている。それはなぜなのだろうか――ゲームソフト開発者向けカンファレンス「CESAデベロッパーズカンファレンス 2006」(CEDEC)で、哲学者で批評家の東浩紀さんが分析した。

画像 東さん

 「ときめきメモリアル」(1994年)、「サクラ大戦」(1996年)など、コンシューマー機で人気を集めたかつての美少女ゲームは、プレイヤーがキャラクターを操作し、次の行動を選んで実行するなど、能動的なアクションがストーリー展開を大きく左右した。

 だが、2000年前後から次々に登場したPC向け美少女ゲームは、プレイ中に必要な操作は最小限。テレビアニメにもなり、コンシュマー機への移植も決まっている「ひぐらしのなく頃に」(2002年)は、選択肢すらほとんどなく、いわゆる「ゲーム性」は皆無に近い。

 このタイプのゲームは、チュンソフトのサウンドノベルシリーズの影響を受け、1996年に発売されたサウンドノベル型美少女ゲーム「雫」(Leaf)の影響によって出現したジャンル。東さんは「テキスト+立ち絵形インタフェースに依存し、選択肢選択以外のプレイヤー側の自由度をほとんどもたない、シナリオ分岐形恋愛アドベンチャーゲーム」と定義し、「これをゲームと呼ぶならば、ゲームの定義は変わったと言うしかない」と語る。

 こういった美少女ゲームはゲームと呼べない、と言う人もいる。だが「ひぐらし作者の竜騎士07さんも、ひぐらしを疑いなくゲームと思っているようだ。プレイした人の多くもゲームととらえている」と東さんが言うように、素直にゲームと受け止めている人も多い。

 では、これらが「ゲーム」と受け止められるのはなぜなのか――東さんは美少女ゲームの“ゲーム性”を、インタフェースとマルチエンディングの組み合わせ、そしてコミュニティーに求める。

10年間進化しないインタフェース

 主流の美少女ゲームのインタフェースは、「萌え絵の静止画」「背景CG」「テキスト」の3つだけで、ここ10年でほとんど進化していないという。「『最果てのイマ』(2005年)でテキストを囲むテキストボックスが採用されたことが、ここ10年で最大の変化」と東さんは冗談交じりで語る。

 PCのスペックは向上し続け、表現力が増しているにも関わらず、低スペックで動作可能な極めてプリミティブなゲームが受ける。「プレイヤーは、美少女ゲームのインタフェースに強い思い入れを持っているようだ」。キャラクターを動かしたり、グラフィックスをち密に描き込んだり、プレイヤーの自由度を高めたりすると、かえってプレイヤーからの反発を買うという。

 また、これらのゲームはたいがいマルチエンディング。クリア後のおまけとして、登場キャラクターがゲームの世界をメタな視点で眺める、という構造を持つ作品が多いという。

 「従来のゲームは、プレイヤーとシステムのインタラクションがゲーム性だったが、美少女ゲームのプレイヤーは、インタフェースとマルチエンディングというシステムにゲーム性を感じているのでは」――東さんはこう分析する。

“ゲーム語り”まで含めてゲーム?

 ゲームにまつわるコミュニティー空間まで含めてゲーム性なのではないか、という仮説も提示する。美少女ゲームについて語るコミュニティーやブログはネット上に数多く、ニッチなゲームでも仲間を探し、議論するのは難しくない。

 「インターネットがなければ、PCゲームという小さな世界の、さらにアダルトゲームの分野でどんなことが起きているかなんて、絶対に広がらなかった」。東さんは自身が大学生だった80年代と比べ、個人のオタクがコミュニティーに属することがはるかに簡単になったと語る。

 その結果プレイヤーは、2次創作やコミュニティーもひっくるめたゲームの“外”の世界に手軽に触れることができるようになり、そこに新たなゲーム性を見い出しているのではなかと東さんは分析する。

 「美少女ゲームはゲームじゃない、と結論付ける人もいるが、それでは面白くない。これがゲームと呼ばれるのなら、そこにあるゲーム性は何か、考えるべきだと思う」

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