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2006年10月16日 09時05分 UPDATE

ネット時代の新潮流――CGMとは(10):“ネットらしさ”の先に――CGM的民主主義 (1/2)

個人が情報発信するブログやSNSのような「CGM」は、ネットが本来持っている双方向性を生かしたもの、といえる。この動きが進んだ先には、どんな世界が待っているのだろうか。

[伊地知晋一,ITmedia]

 これまで「CGM」(Consumer Generated Media:消費者がコンテンツを生成するメディア)をテーマに連載してきましたが、私は「CGM」という表現に常に違和感を覚えていました。

 CGMのMは「Media」を指し、一般的に、ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサイト)などがCGMと呼ばれています。しかし、ブログやSNSで生成される集合体(衆知)は、個人の体験や知恵、知識、技術、作品等、多岐に及んでおり、とてもメディアの一言に収まる範ちゅうのものではありません。

 例えば、Linuxに代表されるオープンソースソフトウェアは、多くの人による知恵の集合体から生成されたものです。そもそもインターネットは、世界中に散らばった人々と、そこから発信される情報のネットワークです。そう考えると、“Consumer Generated”――消費者が生成した何かは、メディアよりもっと大きなものであり、インターネット全体の原理原則に則った概念といえるでしょう。

 ブログやSNSなど、CGMを活用して急速に巨大化するメディアが現れ始めたことにより、ネットメディアは、新聞やテレビのように一方的に情報を伝える「1.0型メディア」の延長線上ではなく、消費者から消費者に、双方向に情報を伝える「Web2.0型メディア」に進路を取る動きが活発になって行きました。

 2ちゃんねる発の「電車男」や、個人制作のFlashアニメ「やわらか戦車」など、個人の力の集合がコンテンツビジネスに発展させる例もあり、新たなコンテンツビジネスの潮流も起き始めており、ビジネスの多様性を予感させています。

 ただ、Web2.0型メディアには、消費者が自由に意見を書き込めるため、広告主に対して批判的な意見が入り込んでしまう可能性も高くなります。広告主と利害が相反する危険性があるため、“1.0型”のビジネスモデルを採ってきた企業は、Web2.0型メディアの展開をちゅうちょする例もあります。

 現在、CGMビジネスで成功している例は少ないものの、確実に利益を上げるものも現れ始めています。CGMビジネスは、しばらくの間、手法や技術的課題に試行錯誤が続きそうではありますが、今後、それらを解決していくことで大きな利益を上げたり、社会的な意義を発揮する者が現れるでしょう。

CGMの未来

 今後CGMは社会に何をもたらすのでしょうか。以下の事例からその片鱗をうかがうことができるかもしれません。

Wikipedia

 Wikipediaは、米国フロリダ州にある非営利組織「Wikimedia Foundation」が、寄付金により運営している多言語百科事典で、市民が自由に書き込むことで、情報が追加されていきます。

 現在、英語版には140万、日本語版には26万の記事が登録されています。プロが編集したコンテンツと一概に比較することはできませんが、国民的辞書である「広辞苑」の記事が約23万であることを考えると、記事の量の面では相当なものです。

 Wikipediaは現在も急激に成長しています。英語版では1日約1500もの記事が追加されています。無償のボランティアから世界中の知識が集まり、しかも無料で利用できます。人類にとってかつてない財産の一つになる可能性を感じます。

地域ポータル

 地域情報のメニューを持ったポータルサイトがいくつか存在しています。従来からある地域情報は、運営者から消費者に情報が一方的に配信される1.0型なケースがほとんどでしたが、ライブドアでは、ユーザーが投稿したグルメ情報や写真などCGMを地域ごとに切り分けることで、地域情報サイトを提供しています(関連リンク:ライブドア北海道

 CGMは特定の切り口で整理することによって、あらゆる用途のサイトへ変化します。例えば、CGMから旅行情報だけを抜き出した旅行サイト、食べ物ならグルメサイト、地域なら地域情報サイトと、組み合わせによってどんな目的のサイトにも変化させられます。

 切り口の中でも「地域」は大きな意味を持つ分類だと思います。マスメディアは「1.0型」メディアであるため、全国の情報を中央から一方的に配信することを主とし、各地方のニッチな情報を追うことには、非効率的なことから積極的ではないからです。

 これを補う可能性をもっているのが、CGMを地域でカテゴライズした地域情報だと思います。地域に密着したパブリックジャーナリスト(市民記者)も今は数が少ないですが、数が増え、全国に散らばれば、発信される記事を地域でカテゴライズすることで、マスメディアが取り扱わないニッチな情報をすくい上げるメディアとなるでしょう。

 そもそもインターネットは、中央から一方的に配信されるものではなく、各地から情報が発信され、それがネットワーク化されることで大きな力を発揮します。CGMの情報も、都心からだけでなく、全国の地方から発信され、そらがネットワーク化されていく、という方向が、あるべき姿ではないかと思います。ネットを通じて地域振興ができれば、地域格差や過疎問題も多少は改善されることが期待できます。

ネットから生まれるメジャーコンテンツ

 電車男ややわらか戦車がヒットしたことを考えると、今後、個人発のCGMからメジャーコンテンツが生まれてくる可能性が大いにあると思われます。

 従来のコンテンツビジネスは、テレビや映画に始まり、最後にインターネットへ下っていく流れでしたが、今度は逆にインターネット発でテレビや映画に流れていく現象が活発になっていくのではないかと感じます。

 また最近では、携帯電話向けに書かれた小説が、書籍化され、数十万部のヒットを次々と生み出すという現象が起きており、携帯電話で生まれたデジタルコンテンツが、紙の製品へ変換することでヒットする、新しいコンテンツビジネスの方向性を表しているように

見えます。

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