日立製作所の古川一夫社長は11月16日、2009年度までの中期経営計画を発表した。赤字化している薄型テレビ、HDDは2007年度に営業黒字化を目指す一方、今後も2年以上赤字が続く事業は聖域を設けず撤退も検討する。
古川社長は2009年度に連結営業利益率5%(2006年9月中間期で1.8%)、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)0.8倍以下の維持(同0.75倍)をコミットメントとして掲げ、「日立を安定的に高収益にするのが私の使命。コミットメントを必ず達成すべく、収益にこだわっていく」と話した。
薄型テレビ事業では、年間2〜3割のペースで進む価格下落に対抗するため、大型パネルへのシフトや、富士通日立プラズマディスプレイの新工場(宮崎県)の本格稼働によるコスト競争力の向上、他社との協業強化などを図っていく。
HDD事業は米IBMからの買収後、「どの製品をどこで作るのかなど、旧IBMとの統合に手間取ったのは事実」(古川社長)。だが現在は日本型もの作りの浸透で歩留まりや品質が向上している上、垂直磁気記録方式を採用した新製品の投入など、「着実に改善は進んでいる」(同)という。今年7〜9月期で約17%の台数シェアを、2007年通年で20%に引き上げたい考えだ。
両事業は2007年度に営業黒字化、2008年度に同社独自の経営指標「FIV」(Future Inspiration Value)で黒字化が目標。FIVは、税引き後営業利益(NOPAT)から資本コストを控除したEVA(経済的付加価値)をベースに、環境貢献度やCSR(企業の社会的責任)など独自の変数を加えた指標だが、詳細は公開していない。
今後はFIVを指標にした事業管理を徹底する。2年連続でFIVが赤字の事業は再建計画を作成するが、計画が認められない場合や、承認後2年以内に黒字化しない場合は原則として撤退する。
研究開発も強化し、研究開発費を現在の売上高構成比4.4%を5%に拡大。中央研究所などコーポレート部門の研究者の15%を事業部門などに振り向けるほか、社内ナレッジの共有化などで研究開発期間の3割削減が目標だ。
同社は中部電力と北陸電力の原発タービン損傷に伴う補修費用の計上などで、今年度は550億円の最終赤字に転落する見通し。
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