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カカクコムが見る「Web2.0の先」

» 2006年12月11日 11時28分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 価格比較サイト「価格.com」は、1997年のオープン以来、ユーザーが発信した情報を蓄積してきた。累積口コミ数は500万以上。Web2.0のキーワードとして注目を浴びるCGM(Consumer Generated Media)の最大手の一角と言える。同社の安田幹広CTOは「CGMブームはありがたい」としながらも、「Web2.0やCGMという言葉は一時のブームでしかない」と語り、口コミサイトの次の形を模索する。キーとなるのは、APIの公開だ。

画像 安田CTO

 価格.comは、PC価格情報サイトとしてスタートし、家電や携帯電話、自動車保険、ゲーム、カメラなど、取り扱うカテゴリーを順次増やしてきた。グルメの口コミサイト「食べログ.com」を昨年3月に開設したほか、宿泊予約サイト「yoyaQ.com」や旅行の口コミサイト「4travel」も傘下に収め、口コミ情報のネットワークを広げてきている。収益源は、アフィリエイト広告やバナー広告が中心だ。

 口コミサイトは、企業のブランディング広告が入りにくく、収益化しづらいと言われてきた(関連記事参照)。プロが編集するメディアと異なり、どんな内容が載るか分からないためだ。「企業が表だって応援することはできない、と思われていた」

 だがWeb2.0ブームが風向きを変えた。「Web2.0ブームでCGMの評価が上がってありがたい。まず代理店が飛びつき、企業もうまく使ってくれたり、『こういう使い方ができないか?』という提案ももらえるようになり、ビジネスがやりやすくなった」

 自ら率先して「Web2.0企業」と宣伝することはない。「Web2.0はキーワードに過ぎず、いつか陳腐化する。それに価格.comを利用する一般消費者は、サイトがWeb2.0かどうかは意識していない」。ただAPIの公開など「Web2.0的」と呼ばれる取り組みは急ピッチで進めている。「プラットフォーム化」という次の戦略を進めるためだ。

「サプリを買うにもまず価格.com」目指す

 今後は、取り扱いカテゴリーの拡大と、プラットフォーム化の2方向で成長戦略を描く。

 PC関連商品から始まった同社の価格比較だが、今や自動車、旅行、DVD、書籍、コスメ、インテリア、サプリメントなど、あらゆる商品を取り扱っている。「『サプリを買おう』とカカクコムに来る人はいないだろう」――PCや家電以外の分野でも認知を高め、ユーザー層を拡大するのが当面の課題だ。「何を買うにも最初に訪れてもらえるショッピングポータルを目指す」

 ブランド力強化を目指し、ユーザーが最も支持している製品を分野別に発表する「価格.com プロダクトアワード」を今年から開始。受賞商品の商品情報サイトには「プロダクトアワード受賞」と掲載されるなど、認知度向上に一役買い始めた。サイトの検索性能を高めるなど利便性も向上させ、1度使えば「また使いたい」と思ってもらえるサービスを目指す。

 同時に、サービスのプラットフォーム化を急ぐ。今後、ブラウザが高機能化し、RSSなどコンテンツ配信の仕組みやAPIを組み合わせたサイトが普及すると、特定のコンテンツにアクセスする経路が多様化する。APIの公開は、そんな時代を見据えた“先手”だ。

API公開でアクセスアップを

 「FQDN(完全修飾ドメイン名)を叩かなくても必要な情報が全部手に入る時代が来るかもしれない」――例えば、Aというサイトのコンテンツにたどり着く経路は、サイトAのトップページだけでなく、AのRSSフィードだったり、Aのデータを引っ張るAPIを活用したサイトだったりする。

画像 価格.com Webサービス

 価格.comもコンテンツを“パーツ”として外に出す仕組みを整えておきたい、と安田CTOは言う。グループ各社のAPIを公開するサイト「価格.com Webサービス」を今年9月に公開。価格.comの商品検索API、アイテム情報取得APIのほか、4travelの旅行記検索APIなど、8つのAPIを公開した。9月にSNSソフト「Open PNE」がアイテム情報取得APIに対応。アクセス増に寄与しているという。

 APIによって機能を外に出しても、収益は価格.com内であげる仕組みを模索していく。広告やアフィリエイトの仕組みも強化していくほか、価格.com内に決済機能を付け、ブランド力のない販売店の商品でも安心して買ってもらえる仕組みの構築も検討する。決済機能のAPI化も視野に入れる。「これまで価格情報を見るだけだったユーザーに、買ってもらうところまで進んでほしい」

 APIの公開を、技術力のアピールにもつなげる。Mozilla Japanと共同で、APIを使ったサービスのコンテストを来年1月15日まで実施。技術者コミュニティーにもアプローチする。

 「できるだけ多くのAPIを公開し、オープン化していきたい」

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