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「著作物の利用許諾、ネットで簡易に」 著作権保護期間延長派が計画(1/2 ページ)

» 2007年01月25日 22時02分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 著作権の保護期間を、著作者の死後50年から同70年に延長するよう求めている「著作権問題を考える創作者団体協議会」は1月25日、日本音楽著作権協会(JASRAC)本部で会見し、ネット上で著作物の許諾を取れる簡易なシステムを2年以内に構築する計画を示した。

 会見では、著作権保護期間延長に反対する意見への反論を展開。3月上旬に一般紙上に意見広告を掲載し、延長の必要性を訴えていく。

画像 著作権問題を考える創作者団体協議会代表の三田誠広氏

 著作権問題を考える創作者団体協議会(以下「賛成派」と表記)は、JASRACや日本レコード協会、日本文芸家協会、日本脚本家連盟など17の団体で構成。「著作権の保護期間を欧米諸国と同等の70年に延ばし、著作者の創作意欲を高めるべき」などと訴え、文化庁に対して延長を求める要望書を提出している

 これに対して保護期間延長に反対するクリエイターや作家中立的立場の大学教授などが「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」(以下「反対派」と表記)発足。十分な議論なしに保護期間を延長しないよう訴えている。

 賛成派・反対派はそれぞれシンポジウムを開催するなどし、互いに意見を交換してきた。この結果を踏まえ、賛成派代表で小説家の三田誠広さんが、反対派の意見の一部に対して反論した。

システム構築で利用許諾を得やすくする

 三田さんは、反対派が最も気にしている点として、著作物の利用許諾取得が難しいことを挙げる。特に古いコンテンツになればなるほど著作権者を割り出すのが困難になり、著作権が切れるまで2次利用しにくい。また、ネット上などで簡単に著作物を発表でき、同人誌も多く流通している今、著作権管理団体に登録していないアマチュア作家も数多い。

 対策として賛成派は、権利者を簡便に検索でき、著作物の利用料を支払うことができるシステムをネット上に構築することを提案。データベースにない、権利者不明のコンテンツについては、簡便な裁定制度で利用できるようにするよう働きかけるという。

 「賛成派のすべての団体が、早急にち密なデータベースを作り、共通のネット窓口から簡単にアクセス・検索できるようにする」(三田さん)。保護期間の延長実現までに最低2年かかると見ており、それまでにシステムを完成させる計画だ。

 また現在、著作権者不明のコンテンツを2次利用する際は、文化庁に申請し、著作権情報センターでその旨を公表し、供託金の算定を受け――といった手間がかかる手続きと、最低数万円の費用が必要。これを簡略化するよう訴えていく。

 三田さんによると、文化庁の担当者も新システム構築について理解を示しているといい「だいたい我々の提案している方向に行くのではないか」と見ている。

「日本はコンテンツ輸入大国ではない」

 反対派は、保護期間延長を考え直すべき論拠の1つとして、日本はコンテンツの「輸入超過」だから、輸入したコンテンツの保護期間は早めに切れる方が経済的に得だと主張している。

 この意見に対して三田さんは「著作権は私権。国全体の損得で一部の著作者の権利が損なわれてはならない」とした上で、「コンテンツの輸出入に関する統計を見ると、輸出が増えてきている」と語り、2005年の「デジタルコンテンツ白書」でコンテンツ産業規模が伸張していることや、2005年の「エンタテインメト白書」(ぴあ総研発行)で、エンタテインメント関連の輸出額(1兆4347億円、ソフトの特許使用料含む)が輸入額(1兆6562億円、同)に迫っている、といった資料を提示した。

 また、漫画家の松本零士さんの話として「欧米では漫画やアニメの海賊版が横行しており、ちゃんと取り締まれば輸出額が増えるが、日本の著作権保護期間は欧米より20年も短いから取り合ってもらえない」といった意見を紹介した。

「70年は国際標準だ」

 賛成派は「保護期間70年は国際標準。これに合わせるべき」と主張。反対派は「著作権保護の国際条約『ベルヌ条約』加盟国で、著作権保護期間を70年としている国は半数以下」と反論している。

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