昨年のPC業界の10大ニュースを選ぶとすれば確実にランクインすると思われるのが、デルのAMDプロセッサ採用ではないだろうか。長年インテルプロセッサだけを利用したデルだが、昨年の半ばからAMDのプロセッサを搭載したサーバやPCの提供を開始している。デルは長年インテルと盟友関係にあると思われてきただけに、この決断に大きな驚きを示す関係者は少なくなかった。
しかし、そのインテルとの“特殊な関係”が終わりをつげたことで、デルにとってどのプロセッサを自社製品に採用するかは、まさに“顧客からの要求”と“性能”や“機能”次第になったと言ってよい。そうしたフリーハンドを得たデルが自社の4ソケットサーバに選んだのがAMDのOpteronだ。デルの4ソケットサーバの最新製品であるPowerEdge 6950には、AMDのOpteronが採用されており、特に仮想化ソリューションを求めるユーザーのニーズに応える仕様となっている。
今、サーバ市場、特に仮想化技術を利用したサーバ市場が空前の盛り上がりを見せている。確かに仮想化技術を利用することは、エンタープライズのサーバ利用にとって効率をアップさせるというメリットがある。
仮想化技術を利用するメリットは、ハードウェアを仮想化することでサーバの物理的な台数を増やすことなく、ソフトウェア的なサーバを増やしていけることにある。例えば、Webサーバを4台用意するのに、今までであれば4台の物理的なサーバが必要なのに対して、仮想化ソフトウェアを利用すると1台の物理的なサーバを4台のサーバとして利用できる。これにより、PCサーバにかかる物理的なコストを削減できるほか、電気代や地代といった固定費の削減も可能になるのだ。
しかし、そうはいってもエンタープライズシステムでどこまで普及しているのか、という反論が返ってきそうだ。確かに、これまでもVMwareやXenのような仮想化技術をサポートしたソフトウェアが話題になることは多かったが、それはどちらかと言えば次世代の注目技術としてであり、現実には採用例はあまり多くなく、まだまだこれからというのが2006年の春頃までの扱いだったと思われる。
しかし、その状況はこの1年で大きく変わったと、デル マーケティング&オペレーションズ本部 アライアンス&ソリューションズ部 マネージャの布谷恒和氏は指摘する。「代表的な仮想化ソフトウェアのVMwareだけを見ても、デルの販売実績としては2006年度比で8倍という伸びを見せている」と指摘し、今や日本市場でも仮想化技術の利用は急速に拡大しているという。これまで、仮想化技術はITの本場とも言える米国で、2005年あたりから急速な伸びを見せていたのだが、ついに昨年の後半あたりから日本でも普及し始めているというのだ。
「(2006年度)下期の予算で実際に導入していただく案件が急速に増えた。実際の売り上げベースでこれだけの伸びを見せているということは、検討している企業はもっとあるはず」(布谷氏)との通り、すでに仮想化技術は将来の導入を検討するというものではなく、実際に普及しつつある当たり前の技術になりつつあるのだ。
布谷氏によれば、ヘビーなアプリケーションまでを含めて、本格的に仮想化技術の導入を検討するユーザーは、4ソケットのサーバを検討することが多いという。「1台の物理サーバ上に何台の仮想マシンを搭載するか(統合率)、そして、その仮想マシンごとにどのくらいのメモリ容量を割り当てるか、がキーになる。データベースサーバやSAP/R3などのパワフルなアプリケーションを仮想マシンとして利用する場合、64ビットのゲストOSが必要となり、割り当てるメモリも余裕を持って用意しておかなくてはならない。当然物理サーバ上でのメモリスロットが少ないと、統合率が低くなって仮想化の効果が出てこないために、32Gバイトや64Gバイトとより大容量のメモリを搭載できるようにする必要がある」(布谷氏)、とその仮想化技術を活用していく上で今、後は大容量のメモリを搭載できることが重要だと指摘する。
そうしたときに、ダイレクトコネクト・アーキテクチャを採用しているOpteronのアドバンテージが生きることになる。AMDのダイレクトコネクト・アーキテクチャでは、メモリコントローラをCPUダイに統合しているため、メモリはチップセットではなくCPUに接続されている。このため、各CPUソケットごとメモリソケットをもうける形になっているのだ。
この方式のメリットは、Registered DIMMと呼ばれる比較的安価なメモリモジュールを利用することができることだ。現在多くのサーバでは、DDR2 SDRAMというメモリデバイス規格がメインメモリに利用されているが、メモリバスが従来製品に比べて高速化されている分、多数のメモリデバイスを接続するのは非常に難しくなっている。AMDのダイレクトコネクト・アーキテクチャでは、各ソケットに対してメモリデバイスが接続される形となっているので、システム全体としては“ソケット数”分のメモリデバイスを搭載することが可能になる。
布谷氏によればデルが4ソケットのサーバにOpteronを選択した大きな理由は、パフォーマンスに加え、その低消費電力性能にあるという。「PowerEdge 6950は4ソケットサーバながら、100Vの通常電源を採用している、これはOpteronが低消費電力であるから実現できたこと。このクラスで一般的な200Vの電源を利用する場合に比べて低コストで運用できるというメリットがある」(布谷氏)。特別な工事などの必要がない100V電源を利用できることは、運用時のランニングコストを下げることが可能であり、その点もOpteronを採用する大きな理由となっている。
仮想化環境で、複数の仮想マシンを稼働させた際に、バランスよくCPUのコアを使い、きちんとした性能が出せるかどうかが、もう1つの重要なテーマとなるが、布谷氏によればOpteronを搭載したPowerEdge 6950はそれも問題がないという。
布谷氏を中心としたデルのチームが行ったベンチマークは、同社内で“DVDStore2”と呼ばれる擬似的なDVD販売ショップでのトランザクションを実行するWebサーバアプリケーション。これを利用して、単位時間にいくつのトランザクションを処理できるかを計測するテストであるという。テストしたのは、PowerEdge 6950のうち、デュアルコアのOpteron 8218(2.6GHz)を4つ(つまり8コア構成)搭載したモデルで、仮想化ソフトウェアにはVMwareの「VMware Infrastructure 3.0.1」を利用し、その上で20台の仮想マシンを起ち上げて、それぞれの仮想マシンでマイクロソフトのWindows Server 2003 R2 Enterprise EditionをOSとして稼動させている構成のマシンであるという。
その結果は、CPU負荷85%の状態で約38万OPM(Order Per Minutes:1分間あたりに処理することができたオーダー)で、負荷がほぼ100%の状態では50万245OPMが実現できたという。ちなみに、他のサーバと比較するとどうなのかと言えば、デルが米国で公開しているホワイトペーパーの中で公開されているデュアルコアXeonを搭載したPowerEdge 2950の負荷85%でのスコアが20万260OPMであるというので、およそ2倍程度となっている。PowerEdge 6950の方は8コアでコア数が倍になっていることを考えると、リニアに性能が伸びていることがわかる。
「今回のテストでは2.6GHzが8コアで、合計20.8GHz分のリソースがある。それぞれの仮想マシンに1GHzずつ割り当ててテストしたが、すべての仮想マシンがほぼそれをきれいに使い切ることができていた」とVMwareを利用することで、マルチコア、大容量メモリというリソースを無駄なく利用することができると布谷氏は指摘する。
「すでに市場にあるOSやアプリケーションを利用しても、マルチコアのCPUをここまできれいに使うことは難しい。しかし、今回VMware ESX Serverをテストしてみてわかったことは、仮想化ソフトウェアを利用すればそれが可能になるということだ」とのべ、今後x86サーバに必要になってくるのは、そうしたソフトウェア側の要求に応じてマルチコアや大容量メモリなどを適正なコストで提供できるプラットフォームであると指摘した。
今後さらに仮想化技術の普及が進めば、1つの仮想マシンにより多くのリソースをというニーズは高まっていくことになるだろう。現在4ソケットのプラットフォームにおいてマルチプロセッサ搭載で、高性能勝つ効率的な消費電力という点でもっともコストパフォーマンスに優れるプラットフォームは何かと言えば、やはりOpteronだといえる。このように顧客の要求を満たすプラットフォームを現時点ですぐに提供できるという点が、デルが4ソケット向けの最新製品であるPowerEdge 6950でOpteronを選んだ理由だと考えることができるのではないだろうか。
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