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「世界の技術者、刺激したい」――ライブドアRSSリーダー英語版公開

» 2007年07月04日 12時19分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 ライブドアのWeb型RSSリーダー「livedoor Reader」が英語化され、「Fastladder」として7月3日に世界デビューした(関連記事参照)。ライブドアとしては初の英語版サービス公開。「いいものを世界中の人に使ってもらいたい」「RSSリーダーのレベルを引き上げたい」――開発者の純粋な思いが、世界を目指したきっかけだという。

画像 Fastladder

 昨年4月に公開された日本語版livedoor Readerは、大量のRSSを受信・管理するユーザーから特に人気だ。Ajax(Asynchronous JavaScript+XML)を駆使し、ほとんどの操作が1画面で完結する簡便なインタフェースと、1000件以上のRSSを登録してもサクサク動く軽快さが高く評価されており、登録ユーザー数は約14万人と「Web型RSSリーダーとしては国内最大」(同社)。1日当たりのアクティブユーザー数は1万人という。

 海外の代表的なRSSリーダーは「Bloglines」「Google Reader」だが、同社CTO(最高技術責任者)の池邉智洋氏によると、「まだ“巨人”がいない状態」。この2サービスは数千件ものRSSをフィードを処理しようとすると、重くなったり止まってしまったりするため、livedoor Readerの“付け入る隙”はある。

 「BloglinesやGoogle ReaderでRSSを大量登録すると、開いた瞬間止まってしまったりするが、livedoor Readerなら大丈夫。毎日開きたくなるような“気持ちいい軽さ”で作っている」と、同社開発部システム開発2グループのma.laさん(本名非公開)は言う。

 世界のWeb型RSSリーダー界に、Fastladderは“3番目”として名乗りを上げる。「livedoor Readerはいいものだから、日本人だけでなく、世界の人に使ってほしい」(池邉CTO)という思いもあるが、BloglinesやGoogle Readerとガチンコ勝負してシェアを争いたいかというと、開発陣の意識は少し違うようだ。

 「Fastladderを公開し、世界の開発者にアピールすることで、Web型RSSリーダーの世の中のベースラインを引き上げたい。使い勝手のいいユーザーインタフェースで数千件のRSSフィードを軽く処理できるくらいの状態には、当たり前になっていてほしい」(ma.laさん)

 クライアントサイドのソースコードも難読化しておらず、同じものを作ることは難しくないという。「Fastladderと同じことをGoogleやYahoo!がやれば、体力がある分勝つだろうと思うし、個人的にはそれでもいいと思う。そうなった上で勝負しないと意味がない。できの悪い物を使っているとその程度のライフスタイル・使い方に縛られてしまうから」(ma.laさん)

 ユーザーを囲い込むつもりはない。RSSリーダーはOPML(Outline Processor Markup Language)を利用すれば移行は簡単。Fastladderが開発者を刺激し、既存のRSSリーダーの処理能力が上がったり、新しいRSSリーダーが出てきてくれれば、乗り換えてもらっていいとすら思っている。

 Fastladderは、一部にRuby on Railsを採用。同社システム開発2グループの上田智さんがRails部分を担当した。「Rails採用はネタみたいなもの。海外の技術者に『クールなサービスはやっぱりRailsで作られている。さすがだぜ』などと思われれば面白い」(ma.laさん)

大量のフィードを読むライフスタイルとは

 「1000feeds in your sight」――Fastladderのログインページにはこう書かれており、千単位のRSSを処理できる能力をアピールしている。

画像 ログインぺージで処理能力をさりげなくアピール

 数百、数千のフィードを受け取っているRSSリーダーユーザーは、あまりいないかもしれない。だがフィードを中心に情報を受け取る生活に切り替えると、新しい世界が見えてくるようだ。

 RSSを700ほど登録しているという池邊CTOは「朝来て開くのはlivedoor Readerとメーラー。一般のポータルサイトを見なくなった」という。ma.laさんも、気に入ったRSSを片っ端から登録していったところ、登録数は3300に。「フィードを吐いていないサイトは見なくなった」という。

 大量登録すると、フィードすべてを読み切ることができずに不安になる人もいる。「RSS未読症候群」などと呼ばれる“症状”だが、ここまで大量に登録した場合は全部読むのはそもそも無理。読めないという前提で考えたほうがいいという。

 「RSSリーダー導入前に読んでなかったサイトは読み飛ばしても人生の損失ではない。livedoor Readerのレート機能を活用し、必ず読むものは高いレートに、参考程度にチェックするものは低いレートに設定するなどして情報整理していけばいい」(ma.laさん)。優先順位をつけつつ、ニュースポータルを眺めるときのように、気になった記事だけを拾い読みしていく――そんな使い方を提案する。

 「RSSリーダーにも2対8の法則がある」と池邊CTOは言う。2割のヘビーユーザーが、8割のフィードを読んでいるというのだ。「livedoor Readerは、2割の人に最適化している」(池邊CTO)

ユーザー登録も独自で メアドだけで利用可能に

 英語版のサービス名からは「livedoor」の文字を取った。「livedoorブランドは海外ではあまり意味がないし、ロゴを使うとデザイン面で制約が出る」(同社コンシューマメディアグループの佐々木大輔グループリーダー)ためだ。

 従来のlivedoor Readerを利用するにはlivedoor IDの登録が必要。登録には日本の住所などを入力する必要があったが、Fastladderはメールアドレスだけで登録できるよう新たに仕組みを作った。

画像 ログインページ

 「台湾人がlivedoor Readerの登録方法を中国語でWebサイトに書いていたのだが、それを見て、livedoor IDの登録は海外の人にはハードルが高いと改めて思った」(ma.laさん)

 livedoor IDをメールアドレスだけで取れるようにすることも考えた。「長い目で見るとそうしたほうがいいのかもしれない」(池邊CTO)が、他サービスとの兼ね合いですぐには変更できず、まずは専用のIDを発行することにした。

 法務面の処理も含め、サービスを海外展開する際のノウハウは身に着けた。だがどんなサービスでも海外に出す、というわけではなく、次に海外展開するサービスも決まっていない。「圧倒的に優れたサービスでないと出す意味がない」(ma.laさん)

ビジネス化は?

 livedoor Readerには技術者向け求人広告を出すなど、ビジネス展開も一部で行っている。ただ、1画面でほぼすべての処理が行え、ページビュー(PV)を稼げない構造なため、出稿実績をPV単位で見る一般のWeb広告にはあまり向かない。

 ビジネス展開の可能性としては、スケジュール更新情報なども受け取れるRSSリーダーとして、企業向けにASP販売する――といったものも考えられる。

 livedoor Readerを利用するヘビーなRSSユーザーは「味方にしたい」(池邊CTO)といい、自社の新しいネットサービスをいち早く使ってもらってフィードバックをもらうなどと、新サービスへの意見をもらえる“濃い”ユーザーとして期待している。

 ただ、livedoor ReaderもFastladderも、当面は目先のビジネス展開より、「たくさんの人に使ってもらいたい」という思いのほうが強いという。livedoor Readerは、国内のRSSヘビーユーザーには浸透した。Fastladderも海外のヘビーユーザー向けに、まずは10万ユーザー獲得を目指す。

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