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「CeBIT」来年は1日短縮 “総合”展示会の意義問う場に

» 2007年10月09日 20時40分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 世界最大のIT関連展示会「CeBIT 2008」が、来年3月にドイツ・ハノーバーで開かれる。来年で22年目を迎えるCeBITだが、近年は専門展示会などに押されて出展者・来場者が減少傾向。これまで7日間だった会期は6日に短縮する。主催するドイツ産業見本市(Deutsche Messe)は、会場レイアウトを変えたり、ジャンルをまたいだ出展テーマを設定するなどし、総合展示会の意義を改めてアピールしている。

画像 CeBITを主催するDeutsche Messeのプルーザー上級副社長によると、欧米メディアの取材も減少傾向にあるという。「欧米で記者の数自体が減っていることもあり、所属ジャーナリスト全員を送り込むメディアが減った。ただ独立系ジャーナリストは増えている」

 1978年にスタートしたCeBITは、2000年ごろのピーク時には8000社以上が出展し、80万人以上が来場した。だが昨年は6150社の出展にとどまり、大手メーカーも減少。来場者は48万人と、ピーク時の半分強に減った。

 CeBITが縮小傾向にある中、欧州では、携帯電話関連イベント「3GSM World Congress」(スペイン・バルセロナ)や家電の「IFA」(ドイツ・ベルリン)などが活況。22年前と比べると「IT」にまつわる分野の幅が大きく広がってジャンルも細分化した今、CeBITのようにコンシューマーからビジネス、公共分野までを横断した“総合”展示会の意義が薄れてきているという指摘もある。

 「複数の分野にまたがった展示が見られるメリットは大きい」――Deutsche Messeのスベン・ミハエル・プルーザー上級副社長は総合展示会の意義をこう強調する。「CeBITを訪れる人は平均3つの分野に興味があり、それら全てをチェックできる。出展者も、専門イベントには来ないような商談相手に出会える」

 会期の短縮を決めたのは「出展コストを削減したいという企業の要請があったため」という。「購買力のある来場者は、会期に関わらず必ず来てくれる。出展企業はむしろ、ビジネスコストが下がる」

 来場者にとっても「長すぎる会期」は不要になってきたという。「20年前のCeBITでは、1日目はざっと歩いて情報収集するだけで終わってしまっていたが、今はネットが普及しているからみんな事前に勉強してくる。例えば、来場者1人当たり平均23のアポイントメントを取っている」

「来場者は、技術そのものには飽きてきている」

 会場レイアウトは、「ビジネスプロセス」「コミュニケーション」「デジタル機器とシステム」など、機器やジャンルで9種類に分かれていた従来の分類を廃し、「ビジネスソリューション」「家庭ソリューション」「公共部門ソリューション」と3つの「ソリューション」に集約した。「来場者も、技術そのものには飽きてきた」――そんな分析が、レイアウト変更の背景にあるという。

会場レイアウトを変更

 「来場者の関心の対象が変わってきている。例えばプリンタに興味がある来場者は、以前なら『1分に何枚プリントできるか、というスペックを見に来ていた。だが最近は『私のこの環境に合うプリンタはどれ?』『プリンタを含めたオフィスソリューションを提案してほしい』など、メーカーにアドバイスを求めている」。商品スペックから、利用シーンや使い方の提案へ――「ソリューション別」展示ならそんな変化に対応できるという。

 ソリューション別展示は、次のトレンドにつながるという。プルーザー副社長が次に来ると見ているのが「インテリジェントホーム」。例えば松下電器産業のモデルルーム「イーユーハウス」のように、ホームネットワークで機器同士をつながったり、センサーで人の位置を感知して自動で機器のスイッチが入る――といったもので、商品分野の異なる機器同士の連携が不可欠だ。「ソリューション別なら、さまざまな機器を組み合わせて展示できる。

 また、機器自体のスペックではなく、付加的な機能――省エネ性能やデザインなど――も新たな展示テーマに置いた。商品デザインにフォーカスした「デザイン イノベーションの活力」や、省消費電力など環境に配慮した「グリーンIT」など。新しい切り口を提示することで、“総合”展示会の意義をとらえなおそうとしている。

 CeBIT 2008の想定出展者数は約6000社、来場者数は約48万人と、昨年並みを見込んでいる。

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