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» 2008年03月13日 14時19分 UPDATE

「アキバは現代の高野山」――“アキバプロデューサー”妹尾堅一郎が語る

電化製品とPCパーツと萌えグッズが同居し、それぞれが深化していくアキバ。「知を集積し、全国に伝える現代の高野山」だと、秋葉原再開発計画を推進してきた妹尾堅一郎さんは言う。

[岡田有花,ITmedia]

 ラジオ街から電化製品街、PC街、そして“萌え”の街へ。戦後以来、姿を変えてきた秋葉原(アキバ)。「アキバは知を集積し、全国に伝える現代の高野山だ」――秋葉原再開発計画を推進し、「秋葉原クロスフィールド」をプロデュースした東京大学客員教授の妹尾堅一郎さんが3月12日、情報処理学会のイベント「ワクワクIT@あきば2008」で「アキバ学ことはじめ」をテーマに講演し、アキバの歴史や特殊性、将来性を語った。

ラジオ街から萌えの街へ

 戦前の秋葉原は「あきばっぱら」と呼ばれる原っぱだった。火事の際、江戸城や寛永寺への延焼を防ぐための火除け地で、秋葉原という名の由来となった「秋葉神社」(台東区)も火除けの神社だ。「あきはばら」と呼ばれ始めたのは戦後、JRの秋葉原駅が「あきはばら」という読みを付けたことに由来する。

 戦後、アキバはラジオ街に変わった。ラジオ部品などを売る露天商が集まって商売していたのを、GHQが秋葉原駅のガード下に集めたのが始まりだという。高度成長期に入り、アキバは電化製品の街として発展していく。

 1970年代後半から1980年代前半にかけてのマイコンブームが、アキバをPCの街に変貌させていった。76年にNECのサービスセンター「ビットイン」がアキバに登場。95年のWindows 95発売時には、PCとインターネットに熱狂するマニアがアキバを埋め尽くした。そして今、フィギュアやロボット、萌え系コンテンツが、アキバに集まっている。

画像 パーツもフィギュアもおでん缶も、あらゆる種類が集まる

 アキバ文化は“交代”せず“積層”するという。今でも駅前の「ラジオ会館」にはパーツ店がひしめく。家電店とPC専門店が軒を連ねる中に、フィギュアや同人誌の店が進出する。「ラジオ街、電気街、PC街と変わっていったのではなく、それぞれ積み重なって、厚みを増している」

 アキバにはプロ向けパーツ店から一般向け家電店、フィギュア専門店など多様な店があるが、どの分野の商品も「徹底集積」されていると妹尾さんは言う。あらゆる商品をとりそろえており、「アキバに来れば、必ず何かは手に入る」。

アキバの来訪者、8年で倍増

画像 神田川と東京湾をつなぐ船の路線を作り、浅草・アキバ・東京ビッグサイト・東京ディズニーリゾートをつなぎたいという。「5年ほど前はだれもまともに取り合ってくれなかったが、最近は興味を持ってくれる人が増えた」

 妹尾さんが推進してきた秋葉原の再開発計画は00年に始動。05年に「秋葉原ダイビル」が、06年には「秋葉原UDX」が建ち、「秋葉原クロスフィールド」が完成した。研究都市つくばとアキバを結ぶ「つくばエクスプレス」(TX)も05年に開通。テレビドラマ「電車男」で、“電気街アキバ”と縁のなかった一般の人からも注目を浴び、観光地としても人気が高まっていく。

 00年時点で、秋葉原の1日の来訪者数は約11万人だったが、08年現在、土日には25万人ほどが訪れるという。JR秋葉原駅の乗降客数は1日当たり80万人を超え、「渋谷駅に迫る勢い」という。

アキバは現代の高野山

 「アキバは現代の高野山」だと妹尾さんは言う。中世、高野山は日本中から人が集まる情報の集積点になっており、高野聖たちは「昼寝をしていても情報が入ってきた」。

 秋葉原のある千代田区は、都内で最も大学が多い地域。研究都市つくばと直結しており、大手町や丸の内のようなビジネス街にも近い。区内のIT企業の数は渋谷の倍あるという。「アキバでみんなの会話を聞くだけで、最近のITが分かる」

 「高野聖は現代でいうエバンジェリスト」――高野聖が全国に布教に回ったように、アキバ発信の文化が全国に広がっていると話す。「テクノカルチャーやメイド喫茶のようなサブカルチャーも、アキバから広がった。アキバは知のトレンドの発信拠点になれる」

銀座とアキバは似ている?

画像

 「アキバはどんな街ですか?」と尋ねると、ほとんどの人が「電気街」と答える。「アキバはどこからどこまで?」と尋ねても、多くの人が、JR秋葉原駅や万世橋、銀座線末広町駅などを境界にした「大きく見ても500×700メートルの地域」を指すという。「アキバは地域のイメージが明快で、境界が明確」だと妹尾さんは言う。

 似た特徴を持つ街が都内にもう1つある。銀座だ。だが銀座とは、決定的に違う点がある。「銀座は地名だが、アキバは地名ではない。アキバのあたりは地名で言うと『神田』だが、人々はここにアキバというバーチャルな街を見ている」

 アキバの通りは、ニューヨークのブロードウェイに似ているという。「大通りは大衆向け、1本入るとマイナーになり、もう1本入ると怪しげな店が出てくる」。真新しい電化製品を売る店の隣に、海苔(のり)の老舗が軒を連ねるなど、新旧が融合しているのもアキバの特徴だ。

ユーザーが作るアキバ

画像 妹尾さんによるとアキバ系オタクは「テクノ系」「ハード系」「ソフト系」「コンテンツ系」「萌え系」の5種類。「最近はバックパックで見分けられるようになってきた」という

 アキバに集まるこだわりの消費者たちは、商品のイノベーションを支援しているという。「商品戦略は通常、ベンダーがシナリオを描くが、アキバでは商品を見たユーザーが『俺ならこうする』と辛口の批評をしたり、改良したりしていく」

 TXの開通で、知の拠点・つくばと直結。TX沿線には東京大学柏キャンパスもある。アキバはつくばや柏での研究結果を、実証実験するフィールドになるだろうと期待する。「アキバには、地域住民と来訪者と事業者がそろっている。産業クラスターになれる可能性がある」

 今後は、人型ロボット産業を育成する拠点にすべきと訴える。「ロボットはおもちゃに過ぎないという人もいるが、マイコンが出た70年代当時もそう言われ、日本のPCは国際標準になれなかった。今、パソロボ(パーソナルロボット)ができてきている」

 「一方で、ロボットを見ると『いつか爆弾を持って向かってくるのではないか』と考える。先端技術は危ない。危ないからこそシビリアンコントロールが必要だ。新技術を前にすると、あがめるか遠ざけるかどちらかになりがちだが、実際に触れて可能性と限界を知るべきだ」

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