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iPhoneは法人市場に食い込めるのか

» 2008年07月23日 14時57分 公開
[Roy Mark,eWEEK]
eWEEK

 7月11日のiPhone 3Gリリースがメディアに温かく迎えられる中、多数のアナリストとライターは、同製品は法人市場に参入する態勢を整えたと妄信的に主張した。なぜかと言えば、Appleがそう言っているからだ。実際同社は、iPhoneは「これまでで最高のビジネス向け携帯電話」だと主張している。

 そんなことはない。そんなことはあると書いている人は単に、Appleのクールエイド(粉末ジュース)を一気飲みしているだけだ。

 そうした話題が盛り上がっているのは、iPhone 3Gで企業向けアプリケーション、特にMicrosoft Exchange ActiveSyncの内蔵サポートが追加されたためだ。Sybaseは7月21日に、Appleの法人市場への野望を支えるべく、Lotus NotesおよびExchange向けのワイヤレス電子メールを提供すると発表した。それに続いてもっと多くの企業向けアプリケーションが出てくるはずだ。

 だが、企業自身はiPhoneに恋をするだろうか? あるいは、ちょっかいを出してみたりするだろうか? 結局、企業の購買決定は、流行よりもほかの要素を考慮する。企業のITスタッフは既に、一般に好まれるスマートフォンを導入している。Research In Motion(RIM)のBlackBerryだ。

 BlackBerryだけでなく、企業は既に、Windows Mobile、Palm、Symbianなど各種OSを採用した多様なデバイスをサポートし、管理している。彼らが管理するデバイスを増やしたいと思うだろうか? 特に、1社のキャリア(AT&T)に縛られる場合に。

 「Appleが法人市場でどのくらい前進するかを観察するのは面白そうだ。IT部門は手強いが、クールな新しいデバイスに――少なくともある程度は――揺さぶられることもある」とIT Business Edgeのカール・ウェインシェンク氏は語る。

 Network Worldによると、企業でのiPhoneへの需要(同紙は多くないとみている)は「iPhoneをプレゼントとして受け取った幹部」によるものになるという。だが調査会社Forrester Researchは新たな報告書で、自分のデバイスを職場に持ってきて企業ネットワークにアクセスしたいという社員からの需要が増えると述べている。

 「これは統制を維持し、企業情報を報告しようとするIT部門、セキュリティや監査の担当者にとって悪夢になる。企業の情報がモバイル機器でも見つかるようになるからだ」と報告書を執筆したミシェル・パリノ氏は語る。

 IT部門は、ほとんどの企業向けiPhoneアプリケーションがAppleのサーバを通さなくてはならないことにも不満を持つだろう。J. Gold Associatesのアナリスト、ジャック・ゴールド氏は6月のリサーチノートで、このアプローチは「ミッションクリティカルなアプリケーションやプロプライエタリなアプリケーションでは一般に受け入れられない」と指摘している。

 このほか、法人市場へ切り込むというAppleの壮大な目標を阻む課題には、バッテリーの取り外しができないこと、耐久性への疑問、企業レベルでiPhoneを導入するのに必要なサービスの量などがあると同氏は言う。

 ゴールド氏は、「ほとんどの企業はiPhoneの採用とサポートが広がるまで待つべきだ。規制のある業界で、iPhoneがセキュリティや監査証跡のコンプライアンス基準を満たす可能性はかなり低い」と付け加えた。

 さらに一部のアナリストは、Appleは、同社が法人市場に進出することよりも、BlackBerryがコンシューマー市場に本格的に入り込んでくることを心配するべきだと主張する。RIMは企業と同様にコンシューマーも狙ったBlackBerry Boldを数カ月以内にリリースする見込みだ。

 「RIMはもう、モバイルオフィスソフトや電子メールを扱う企業ではない。企業に深く食い込んだベンダーに進化し、それを重要な差別化要因として推進し続けている」と451 Groupのアナリスト、トム・リゾ氏は5月に述べていた。「Apple、Nokia、Motorola、さらにHTCが企業向けハードで競っているが、彼らは企業のエコシステムにおける地位という点でRIMにかなわない」

 「これは今後も、競争をほとんど無意味にするほどの重要な違いとなる」とリゾ氏は付け加えた。

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