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AMD、低価格ノートPC用プロセッサは当面なし

» 2008年07月24日 07時00分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 米AMDは、超低価格ノートPC向け市場への進出を当面見送っているが、新任の最高マーケティング責任者ナイジェル・デッサウ氏は、AMDはこのいわゆる「Netbook」分野を引き続き注視していくと述べている。この分野が発展しつつあるからだ。

 デッサウ氏は3月にAMDの上級副社長兼最高マーケティング責任者に就任した。同氏は電話取材に対し、AMDは超低価格ノートPC市場の今後の発展に関心を持っているが、今のところ、こうしたノートPC向けに特化したプロセッサを提供する計画はないと語った。

 「われわれは、この市場セグメントは重要ではないと判断しているわけではない。成長していないと判断しているわけでもない」とデッサウ氏。「われわれは小規模な企業であり、今の段階では得意分野に注力しなければならないと考えている。当社はこのセグメントに参入してはいないが、注目している。このセグメントが成熟するとともに、どうなっていくかを見ていくつもりだ。ただし当面は、われわれが一番得意なことに集中していく」

 こうした超低価格ノートPCが、モバイルコンピューティングの次の段階を代表するものなのかどうかについては議論がある。だが、ASUSTeK Computerの「Eee PC」での成功に続こうと、業界各社がこの市場への投資や、新型プロセッサ、新設計ノートPCの投入を始めている。AMDとx86プロセッサで競合するIntelとVIA Technologiesは、それぞれ超低価格ノートPC向けプロセッサを提供している。DellHewlett-Packard(HP)AcerなどのPCベンダーは、この市場に向けた新しいNetbookを既に発売しているか、あるいは発売を予定している。

 AMDは低価格の省電力型プロセッサに力を入れてきたことから、x86プロセッサでこの市場に参入するのに有利な立場にあるように見える。このことが7月14日の週から注目されるようになった。新任のダーク・メイヤーCEOが、AMDが2008年中に超低価格ノートPC向けプロセッサを同社のロードマップに追加する可能性を示唆したからだ。

 一部のブログでは、メイヤー氏が言及したのはAMDの「Bobcat」というプロセッサで、この製品はIntelの「Atom」や、VIAが最近発表した新型低消費電力プロセッサ「Nano」と競合することになるだろうと述べられている。

 AMDの低消費電力プロセッサ「Geode」も、超低価格ノートPC市場向けに投入される可能性がある製品だ。Geodeは、OLPC(One Laptop Per Child)プロジェクトのノートPC「XO」の一部モデルに採用されている。

 しかし、デッサウ氏は電話取材の中で、AMDは今のところこの市場については、今後の展開を見守ることでよしとしていると話した。また、一部のアナリストは、AMDは当面この市場に参入しないと考えている。同社は業績不振が続き、経営再建を目指しており、限られたリソースを、規模が大きいサーバやPC向けの市場に重点的に配分する方針に転換しているからだ。

 AMDは7月17日に7四半期連続の赤字決算を発表し、ヘクター・ルイズ氏がCEOを辞任すると表明した。メイヤー氏は、AMDは方向を転換し、中核事業であるグラフィックスとプロセッサに精力を注ぐと述べた。そうなれば、同社は中堅企業市場への取り組みを深め、まだ未知数のNetbook分野から遠ざかることになるだろう。

 このことから見て、AMDは、6月にリリースした新しいモバイルプラットフォームに重点を置くことになりそうだ。このプラットフォームは、中小企業および消費者向けのメインストリームノートPC用に設計されている。ノートPC市場は従来こうしたユーザー層がけん引役となっている。また、AMDは今年、大企業や中堅企業向けの販売拡大につながると期待するデスクトッププラットフォームもリリースしている。

 デッサウ氏は電話取材の中で、AMDはOpteronブランドの強化にも取り組んでいると述べた。これは、Opteronプロセッサのクアッドコア版「Barcelona」に技術的な問題が発見されたことから、AMDが同プロセッサをスケジュール通りに出荷できなかったことを受けたものだ。このつまずきの一因は、AMDが同プロセッサの実動サンプルを顧客にスケジュール通りに提供しなかったことにある。

 AMDは、新しい45ナノメートル(nm)プロセスの採用でパフォーマンスが向上するOpteronの新版「Shanghai」の準備を進める中で、Barcelonaで学んだ教訓を生かしていると、デッサウ氏は語った。また同氏は、AMDは顧客に、「プロセッサのパフォーマンス(クロック速度の向上など)と、プロセッサが企業で必要な特定のワークロード処理を実際にどうこなせるかの違い」を示さなければならないと付け加えた。

 「われわれはプロセッサのスピードと、それが顧客にどのように使われるかを、分けて伝えなければならない」(デッサウ氏)

 デッサウ氏は具体的な説明はしなかったが、AMDはOpteronの仮想化機能と、マルチソケットサーバ分野での従来の強みを前面に押し出していくと述べた。この分野では、統合メモリコントローラのような技術のおかげで、OpteronはIntelプロセッサに対して優位に立ってきた。

 しかし、Intelの新しいマイクロアーキテクチャ「Nehalem」では、Opteronとの差はなくなりそうだ。統合メモリコントローラなどの機能が追加されるからだ。

 「われわれは顧客と市場に、『過去の過ちは繰り返されない』『最新のOpteronはベンチマークを上回っており、顧客の抱える問題を解決する』と安心してもらえるようにしなければならない」とデッサウ氏。「45nm製品では、彼らにサプライズを提供する必要がある。それは彼らの予想より、もう少し良いものを作るということだ。Barcelonaではがっかりさせてしまったが、Shanghaiではサプライズを届けなければならない」(デッサウ氏)

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