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ゴッホの絵画に隠れた肖像画、X線分析で再現

» 2008年07月31日 10時35分 公開
[ITmedia]

 フィンセント・ファン・ゴッホの絵画「Patch of Grass」の下に隠れていた絵を、欧州の研究者がカラーで再現した。

 ゴッホが古い作品の上に新しい絵を描いていたことはよく知られており、専門家の推定では、ゴッホの初期の絵画の約3分の1は古い絵画が下に隠れているという。蘭デルフト大学やベルギーのアントワープ大学の研究者で構成される研究チームが、X線を使った新たな手法でPatch of Grassの下にあった女性の肖像画を再現した。

再現された肖像画 再現された肖像画

 研究チームが使った手法は、シンクロトロン放射光を使った蛍光X線分光法。絵画の隠れた層を発見するのには、たいてい従来のX線検査などが用いられているが、それには限界があるため異なるアプローチを採用したという。蛍光X線分光法では絵画の層の蛍光性を測定する。蛍光性はそれぞれの化学元素に固有なので、原子の種類(鉛や水銀など)や顔料を個々に描けるという。さらにシンクロトロン放射を使うことで、上の絵画層による測定のゆがみを抑えられ、また測定が高速になると研究者は説明している。

 Patch of Grassは1887年にゴッホが描いた作品で、クレーラー・ミューラー美術館が所蔵する。以前の研究で、この作品の下にある絵の頭部のぼんやりとした輪郭は発見されていた。これを独Deutsches Elektronen-Synchrotronの装置で2日かけてスキャンし、17.5×17.5センチの女性の顔を再現したという。

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