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半導体業界、ウォール街の金融危機を懸念

» 2008年10月03日 14時02分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 米国の信用不安とウォール街の金融危機のニュースが伝えられる中、最新の報告書によると、8月の半導体売り上げは携帯電話とコンシューマー向けデスクトップPC、ノートPCの販売に支えられて5%強の伸びを示した。しかし売り上げが増え続けるためには米国議会の金融安定化法案が必要だと報告書は指摘する。この報告書に続きIntelとAMDの決算も発表される予定で、これによって見通しは一層はっきりする。

 半導体業界にとって朗報は、携帯電話、デスクトップPC、ノートPCの堅調な販売に支えられて8月の売り上げが5%以上増えたこと。悪いニュースとしては、ウォール街の金融不安により、特に消費者の購買意欲に陰りが出た場合、これから年末まで予想を下回る可能性がある。

 米半導体工業会(SIA)が10月2日に発表した報告によると、2008年8月の半導体売上高は227億ドルとなり、前年同月の215億ドルに比べて5.5%増加した。2008年は8月までの世界半導体売上高が1700億ドルを突破、前年同時期に比べて4.5%増えた。

 この数字はIntel、AMD、Samsungなどの半導体メーカーにとって好ましく見えるかもしれないが、SIAの報告書はジョージ・スカリス会長の慎重なコメントを掲載している。ウォール街の信用不安が今後も続き、結果として消費者が支出を手控えるようになれば問題が起きる可能性はあると同氏は警鐘を鳴らした。

 「半導体売り上げの半分以上は現在、消費者の購入に支えられており、世界のIT業界のサプライチェーン全体にとって消費者の購買意欲は不可欠だ。従って、米議会が米国金融制度の安定を取り戻すため迅速に動くことが不可欠となる」とスカリス氏は述べている。

 SIAのこうした見方は、Freddie Mac(米連邦住宅金融抵当金庫)、Fannie Mae(米連邦抵当金庫)、Lehman Brothersの破綻が金融業界からさらに広い業界へと広がるのか、IT業界が確信を持てない中で発表された。ウォール街を襲った今回の激震が9月に始まったことを考えると、SIAの次回報告書では、ウォール街の金融不安がIT業界に与える影響について、もっとはっきり見えてくるかもしれない。

 SIAが米議会に金融安定化法案の可決を要望したことは、デスクトップPCやサーバといった従来のIT販売に比べ、家電販売がどれほど重要になっているかを物語るものだ。これについてはGigaOMブログも触れている。

 GigaOMのステイシー・ヒギンボサム氏は言う。「テクノロジーのコンシューマー化――BlackBerryでスケジュール管理する母親から携帯電話とノートPC、MP3プレーヤー、デジタルカメラを持つティーンエージャーまで――の進行は、すなわちサーバよりもガジェット向けに販売される半導体が増えているということだ」。

 IntelとAMDは今月決算を発表する予定だ。両社の業績は、特にPCとサーバ販売に関連してIT業界の今後を占うものになる。さらに、消費者の購買意欲の一端を示し、ウォール街の問題で一般向けの家電販売に影響が出始めたかどうかも示される。

 しかし、現在のウォール街の問題はほとんどが9月半ばに始まったものであるため、両社の第3四半期決算(9月30日締め)には最後の数週間の影響は反映されないかもしれない。Piper Jaffrayの金融アナリストは今週、Intelの第3四半期決算は目標を達成するだろうと述べた。

 SIAの報告書では、DRAMとNANDフラッシュメモリを含むメモリの価格下落が続いていることも明らかになった。一部の半導体メーカーはこの影響で、過去数カ月にわたり業績に影響が出ている。メモリ価格の下落が続いていることは、DRAMとNANDプロセッサ大手のMicron Technologyが10月1日に発表した第4四半期決算に、3億4400万ドルの赤字を計上したことで表面化した。

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