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作るだけでは育たない 「1→10」支える“みんなの力”「1を10にする」ネットサービスの育て方

» 2009年03月16日 16時19分 公開
[古川健介(ロケットスタート),ITmedia]

 初めまして、ロケットスタートという会社をやっている古川健介といいます。ネット上では「けんすう」という名前でよく活動しています。ITmediaで連載をさせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。

画像 古川健介さん

 さて、この連載のテーマは、「『1を10にする』ネットサービスの育て方」です。「1を10にする」「ネットサービスを育てる」とは何でしょうか?

 最近、プログラムの知識がネットや本で充実してきたり、サーバーなどのインフラが充実してきました。「mixi」や「2ちゃんねる」のような、ネットサービスと呼ばれるものを個人で作ることも難しくはない時代になっています。

 ネットサービスを考えてリリースすること。これを僕は、「0→1」と呼んでいます。何もないところからサービスを生み出すという意味で0→1です。

 一方で、ネットサービスはリリースされただけでは意味がありません。リリースしただけで自動的に成功したサービスは今まで1つもないといっても過言ではありません。そのサービスを育てることが必要です。このことを「1→10」と呼んでいます。1になったものを10まで育てる、という意味です。

 「1→10」は非常に重要です。成功の絶対条件といっていいでしょう。しかし、サービスを作るところは注目されていても、ネットサービスを育てるところは、あまりノウハウが共有されていません。

 そこで、この連載では、「1を10にするネットサービスの育て方」をさまざまなネットサービス運営者に聞き、そのノウハウを公開していきたいと思っています。

「0→1」は1人でできる 「1→10」はみんなでやる地味な作業

 そもそも、なぜ「1→10」は「0→1」に比べて情報が少ないのでしょうか?

 「0→1」の作るという作業はクリエイティブで楽しい作業です。アイデア一発で世界を変えれるかもしれない、リリース時に大きな話題を呼ぶかもしれない、「あのサービスを作った人」として有名になれるかもしれない、など期待も膨らみます。楽しみながらできるでしょう。

 0から1を作り出す、ということは大きな人数はいりません。1人でもできます。

 日本最大の掲示板「2ちゃんねる」は西村博之さんが学生のころに個人が作ったサイトですし、携帯SNSで大ブレイク中の「GREE」も田中良和さんが会社員のころ趣味で作ったサイトです。「モバゲータウン」もディー・エヌ・エー(DeNA)の川崎修平さんがほぼ1人で立ち上げました。

 ものを作る、ということは概念的なものや哲学的なものが大きく絡んでくるため、周りの人があれやこれや言うよりも、1人で好きなものを作り切ってしまったほうが、新しいものが生まれやすいのだと思います。いろいろな人の意見が入っているサービスはつまらないものになってしまいがちです。

 たった1人でサービスを作って、それが大ブレイクして……となると世間は注目します。インタビューもよくされます。1人でも作れるんだ! と憧れる人も増えてきます。

 一方で、リリースされたネットサービスを育てて、大きくして、多くの人に使ってもらうための「1→10」は、1人の力では出来ません。多くの人の力が必要です。そして地味な作業がほとんどです。細かい仕様変更、終わらないバグつぶし、批判ばかりの問い合わせ対応……そんなネガティブな印象さえあります。

 複数人が毎日地味な作業をして、初めてネットサービスができあがるのに、多くの人がそれを知らない、もしくは興味がないのが「1→10」の情報共有の妨げになっているのではないかと考えています。

大ブレイクしているサイトの運営に学べ!

 育てていくには運営者のポリシーや想いも大事ですし、多くの関係者がそれを理解して、実際にオペレーションすることも必要です。営業担当者がいれば、彼らの意見も重要ですし、クライアントの意向もあります。また当然ながら、使ってくれるユーザーの意見は非常に大切です。

 多くの斬新なネットサービスが、この段階でつまづいていきます。アイデアはよかったけど、まったくブレイクしなかったサイトも多々あります。

 では、大ブレイクしているサービスや、業界のトップを走っているサービスは何がスゴイのでしょうか。

 それは、運営ポリシーの明確さだったり、効率的に回せるオペレーションだったり、いろいろあります。運営者に話を聞いてみると、「そんなやり方があったのか!」とびっくりするようなものから、「当たり前のことをいっているけど、その当たり前をしっかりやっている」というものもあります。想像していたよりも裏側が大変だったり、思ってたよりもスマートに運営していたりとさまざまです。

 この連載は、大ブレイクしているサービスがどう育てられ、どう運営されているのかなどを運営者にインタビューし、すでにネットサービスを運営している、もしくはこれから始めたいと思っている個人や企業に参考になるようなものを目指していきます。

古川健介

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 1981年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部在学中に、中高生コミュニティー「ミルクカフェ」や2ちゃんねる型レンタル掲示板「したらば」を運営。現在はロケットスタート社長で、コミュニティを中心にしたネットサービスの立ち上げ、運営を手掛ける。


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