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カラー電子ペーパー端末「FLEPia」10万円で発売 Webや写真閲覧も

» 2009年03月18日 17時56分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 富士通フロンテックは3月18日、カラー電子ペーパーを搭載した電子書籍端末「FLEPia」(フレッピア)を直販サイトで発売した。電子書籍やWordファイル、JPEGファイルなどを表示できるほか、無線LAN通信機能を搭載し、Webサイトの閲覧も可能だ。9万9750円。

 国内の電子書籍端末をめぐる環境は厳しい。松下電器産業やソニーが2003年ごろから販売していたが撤退。専用端末やコンテンツの価格が高すぎたり、利用できる書籍数が限られているといった問題が普及を阻んできた(電子書籍端末売れず──ソニーと松下が事実上撤退)。一方、米国では、Amazonの「Kindle」がヒットするなど、市場が着実に成長している。

 富士通フロンテックの新端末は、2種類の電子書籍ビューアソフトを搭載し、既存の大手販売サイトの電子書籍に対応。文庫本中心に合計2万冊が読めるとしている。電子ペーパー端末として初めてカラー表示に対応。ドキュメントビューアやWebブラウザ機能も搭載したことで、書類を手軽に持ち運んだり、外出先でWebブラウズしたいユーザーのニーズも見込む。

薄くて軽い端末 最大26万色表示

画像 色はホワイトとブラック

 新製品は、」2007年4月に発売したサンプル機を改良し、コントラストや表示速度を改善した。

 表示部は8インチ(768×1024ピクセル)で、本体サイズは158(幅)×240(高さ)×12.5(厚さ)ミリのA5サイズ。重さは385グラムで、片手で持っても重いとは感じない。電磁誘導式のタッチパネルを装備。付属のスタイラスか本体下部のファンクションキーで操作する。

 表示は、右から徐々に書き換わっていくプログレッシブ方式で、書き換え速度は、64色なら1.8秒(スキャン1回)、4096色なら5秒(同2回)、26万色なら8秒(同3回)。モノクロの電子書籍なら64色、カラーの写真なら26万色など、コンテンツに合わせてユーザーが切り替えられる。

 一度画面にコンテンツを表示すれば、電源を切っても半永久的に表示を保てるため低消費電力で利用できるのが特徴。フル充電(充電時間3時間)・64色モードで1分に当たり1ページ更新した場合、40時間連続駆動する。


画像 スタイラスで操作

 OSはWindows CE 5.0で、Internet Explorerやメール機能などを利用できるほか、WordやPDF、PowerPoint、JPEGファイルなどの表示にも対応した。画像を連続再生するスライドショー機能も備え、デジタルフォトフレームとしても使える。

 電子書籍再生用アプリとして、シャープの「ブンコビューア」、ボイジャーの「T-Time」を搭載。それぞれの対応サイトから書籍データをダウンロード購入して表示できる。パピレスと提携し、専用の電子書籍販売サイト「ふれっぴ屋」もオープンした。

 コンテンツはSDメモリーカード(別売り)に保存。128ビットAESに対応し、セキュアにコンテンツを持ち運べるとしている。

 ソフトウェアキーボードを備え、WebサイトのURL入力など簡単な入力も可能。ステレオスピーカーを内蔵し、電子書籍の読み上げにも対応した。

 IEEE 802.11b/g対応の無線LAN通信機能、Bluetooth通信機能を搭載。携帯電話とBluetooth接続し、携帯電話経由でダイアルアップ接続することもできる。

実機を触ってみた

 実機を使ってみたところ、文字だけの電子書籍ならくっきりと読みやすい。ただ、デフォルトの4096色モードだと、ページが完全に表示されるまで5秒かかるため、漫画など次々にページをめくるコンテンツを快適に閲覧するには遅いと感じた。JPEG画像のスライドショーは、一般のフォトフレームを利用するより低消費電力になりそうだが、反射型の電子ペーパーだとどうしても画像が暗いのが気になった。

画像 WebブラウザのデフォルトトップページはGoogle

 Webブラウザを使ってニュースサイトを閲覧してみたところ、接続に時間がかかったものの、リンク先へのアクセスなどは軽快。文字も読みやすく、目も疲れない印象だ。

 検索などで文字を入力したい場合の文字入力は面倒だ。ソフトキーボードの起動だけで画面を切り替えるため時間がかかり、記者が慣れていないせいもあるだろうが、スタイラスで文字を選ぶのも難しかった。

 コンテンツビューアとして実用的に使うには、画面切り替えの高速化やユーザーインタフェースの改善、電子ペーパーの特性に合ったコンテンツ選びが重要になりそうだ。同社は、4096色モードで切り替え速度1秒以下を目指して開発を進めるなど、改善を図っていく。

 今後は、機能をしぼり、低価格化・小型化した製品や、企業向けの大型製品も開発する考えだ。

2年で5万台 法人向けにも

 今後2年で5万台を販売する計画。携帯電話で電子書籍を読んでいる層や、教科書や書類をコンパクトに持ち歩きたい学生・社会人、外出先でネットにアクセスしたいユーザーなどをターゲットに据える。

 新聞社と連携し、電子新聞を配信するサービスも提供したい考え。朝日新聞社や日本経済新聞社などと話を進めてきたが「販売店をパスして配信するのか、購読料をどうするか、端末をリースにするかなどで話が行きつ戻りつしている」(同社の利根廣貞経営執行役常務)という。「製品を出したことで、話が具体化してくのでは」

 5万台のうち2割は法人向けに販売する計画。飲食店の注文端末や、銀行の窓口で、待ち時間に申込書などに簡易的に入力する端末としての利用を見込む。

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