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» 2009年06月10日 11時00分 UPDATE

これを見れば分かる! デジタル技術の仕組みと傾向:音楽も写真も“タッチ”するだけでゲット 「TransferJet」

“タッチ”するだけで音楽や写真など大容量データを高速に転送できる「TransferJet」は、高齢者や子供でも使えるシンプルで簡単な無線技術を目指し、ソニーが開発した。

[小笠原由依,ITmedia]
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うーん。


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どうしたの乙女ちゃん、渋い顔して。


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この間友達と旅行に行った時に撮った写真をね、友達が送ってくれるって言ってたんだけど、まだ来ないんだよねぇ。もう1カ月経つのに!


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よくあることじゃん。ちなみに乙女ちゃんは友達にちゃんと送ってあげたの?


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え? あはははー。


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送ってないのか……それじゃますます来ないでしょ。


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だよねぇ。でもPCに取り込んだりするのがめんどくさくてついつい忘れちゃうんだよねぇ。


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まぁ、気持ちは分からなくもない。そんな乙女ちゃんにちょうどいい技術があるよ。近接無線転送技術「TransferJet」って知ってる?


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なにそれ? なんとかジェットって、なんかすごく飛びそうだね。


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それが“飛ばない”んだよねぇ。どういうものか教えてほしい?


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え? なになに? 教えてください。



“タッチ”するだけなら誰でも使える

photo TransferJetモジュールを内蔵した2台の携帯電話で、画像データを交換。1Mバイト程度の画像データなら、1秒もかからずに交換できる(写真はソニー・エリクソンの試作機)

 誰でも使える簡単な無線技術――TransferJetは、「高齢者から幼い子供まで、無線技術を簡単に使えるように」とソニーが開発した近接無線転送技術だ。FeliCaなどの非接触IC技術のように、対応機器同士を直接かざすだけで通信を行うという直感的なインタフェースで、複雑な接続設定やアクセスポイントも不要。ホストとターゲットの関係もないため、携帯電話など機器同士での直接通信も容易だ。

 電波が四方八方に飛ぶ放射電磁界を利用した従来の無線アンテナではなく、「誘導電界」を利用した「TransferJet Coupler」(トランスファージェット カプラー)という専用アンテナを採用。送信用カプラーを受信用カプラーに近付け、送信側から発生した誘導電界に受信側が入ると、データ伝送が始まる仕組みだ。

 通信距離は約3センチと非常に短いが、その分ほかの電波と干渉することが少ない。規格上の最大転送速度は560Mbps、実効レートは375Mbpsと、USB 2.0と同程度の速度でデータを転送できる。

 「携帯電話を使うとき、ユーザーは何も考えなくても電源を入れるだけで基地局につながり、あとは固定電話のように使える。つながる相手が決まっているものは、無線さえつながればユーザーは誰でも自由に使える」とソニーの岩崎潤事業推進担当部長は話す。そんな"当たり前に誰にでも使える無線"の開発は、どんな方式の無線が適しているか、ブレーンストーミングするところから始まったという。

 結果、電波を遠くに"飛ばす"からセキュリティのなどの問題が生まれ、データの暗号化など複雑な設定をしなくてはならない──という意見が出た。「設定の手間をハードルと考えるならば、タッチするとか置くとか、そういう動作に置き換えましょう、ということになった」(岩崎さん)と、電波を飛ばす距離を限定し、認証の手間を最低限に抑えた。

 近距離に限定したのは技術的な問題もある。同社はUltra Wide Band(UWB)の開発も進めてきたが、「1つの部屋で2〜3人が同時にUWBを利用すると、電波が干渉して、途端に性能が落ちてしまう」ことから商品化は難しいと感じたという。性能だけでなく、利用できる電波帯に各国で制限がある点からもUWBは使いづらいと判断した。

 TransferJetは、日本を含む各国で免許不要で使える4.48GHz帯を利用する。誘導電界は離れると急激に電波強度が減衰する(距離の2乗に反比例する)という特性を生かすことで、ほかの無線との干渉を防ぎ、システムもシンプルにできる。

「女子高生に持たせたら、想像もつかないところにタッチするはず」

photo 屋外での利用だけでなく、デジタルカメラで撮影した写真を自宅のテレビに転送して閲覧したり、ビデオカメラからテレビやPCに映像を取り込むという用途も

 「いろいろなところにタッチすると、いろいろなことができるという文化にしたい」(ソニーの小高健太郎統括部長)――将来はTransferJetの"インフラ化"を目指している。

 TransferJetにはホスト−ターゲットの関係がない。互いの機器にカプラーさえ搭載していれば、デジカメ同士、PCとデジカメ、携帯電話とPCなど、多様な組み合わせでの直接通信が可能だ。このほど、キヤノンやカシオ計算機、KDDI、セイコーエプソンなど大手19社とコンソーシアムも設立。技術情報を公開し、多彩な機器に普及させたい考えだ。

 自宅での利用はもちろん、デジタルサイネージに搭載し、見る人の携帯電話に情報を転送する──といった、パブリックスペースでの利用も考えている。

 写真を撮影した端末でタッチするだけでプリントできるキオスク端末という構想もある。「高齢の方でも、桜を見たらデジカメや携帯で写真を撮ることはできますが、撮った写真を見るのは携帯電話やデジタルカメラ上だけで、プリントをしたり、人にあげたりができない人が多いんです」(岩崎さん)

 音楽販売での利用も視野に入れている。店頭でCDケースを並べ、携帯電話でタッチすれば楽曲を試聴できる自動販売機も構想の1つ。通信距離が3センチという特性のため、異なる発信機を近くに並べても干渉せず、それぞれの曲をスムーズにダウンロードできる。

 携帯電話にダウンロードした音楽を友達に聴かせ、友達が気に入れば、携帯同士をタッチするだけで楽曲を転送し、おサイフケータイ(FeliCa)で課金も行える――といった仕組みも考えている。FeliCaなら暗号処理機能などのセキュリティ機能を備え、課金システムも確立しているため、TransferJetと補完できるという。

 ──などなど、いくつもの構想はあるが、岩崎さんは「結局、これらは大人が考えた文化なんです」とばっさり。「若者がこれを持つと、われわれの考えとは違うことをするのではないかと思う。それこそ女子高生に持たせたら、想像もつかないところにタッチしたりするはず。若い人たちにも使ってもらって、ライフスタイルなども変えられればいい」とTransferJetの未来に思いをはせていた。


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その場で交換できれば、めんどくさがりやの乙女ちゃんとその友人たちでも忘れないでしょ?


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確かに! 写真を撮ったその場で印刷できたら盛り上がりそうだしね。そういえば、おばあちゃんに印刷してって言われてたのもすっかり忘れてた!


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おばあちゃん、かわいそうに……


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まぁ、それはいいとして、これって何でデータを伝送できるの?


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おい、話聞いてなかったのか!


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ちがう! もっと詳しく知りたいの!


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ありがとうございます!


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乙女(文系女子)

デジタル製品に興味はあるが、細かいスペックの話はよく分からない。結局、デザイン重視で選びがちだが、どうせ買うなら、きちんと製品の性能を理解して自分に合ったいい物を買いたいという思いがある


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ムサシ(理系男子)

自称デジタル人間。デジタル製品のことなら、細かいICの隅々まで、何でもこい。基本的には物静かだが、得意分野となると熱く語り始める。女の子に「すごい!」といわれると、やる気が出る


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