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「Web専業メディアはオープン化対象外」 総務省記者クラブに定例会見への参加条件を聞いた

» 2010年01月07日 18時32分 公開
[小笠原由依、小林伸也,ITmedia]

 「会見を開放するといっても、Web専業メディアは対象外。現時点では、質問権を持つ参加は認められない」──「開放」したという総務省の定例記者会見に参加したい。ITmedia News編集部が総務省記者クラブに問い合わせをしたところ、こんな回答があった。

 総務省は1月5日、記者クラブに加盟していないメディアに対して総務相の定例会見を開放した。会見には「J-CASTニュース」といったWebメディアも参加し、ニコニコ動画のライブ配信「ニコニコ生放送」が生中継も行った。

 総務省が主管する分野はITmediaとも関係が深い。地上デジタル放送と「ダビング10」や、ネット上の「有害情報」問題、携帯電話の周波数割り当て問題などをめぐり、これまでもたびたび同省に取材をしてきた。会見の開放は、大臣から直接コメントを得られるチャンスでもある。

 定例会見に正式に出席するべく、総務省に問い合わせたところ、会見を主催するのは総務省記者クラブなので、記者クラブに問い合わせてほしいという回答だった。

 開放といっても、定例会見に出席し、大臣に対し質問をするには登録が必要だ。会見を主催するのは同クラブ。同クラブが審査した上で登録可否を決める。質問なしでオブザーバー的に参加を申し込むことは以前から可能だったが、「開放」の趣旨を考え、編集部としてはあくまで質問が可能な形で出席したい。

クラブによる審査が必要

 「日本インターネット報道協会には、所属してます?」――クラブの幹事社(現在は朝日新聞)に参加条件と申請方法を問い合わせると、こう言われた。

 登録には、日本民間放送連盟や日本雑誌協会など、記者クラブが指定した5団体の会員社に属している必要があるという。J-CASTニュースなどが所属している日本インターネット報道協会はこの指定を受けている。フリーの記者は、クラブ加盟社や指定団体が発行する媒体に定期的に記事を提供していれば条件を満たす。

 ITmedia Newsは、指定された団体に所属していないことを伝えたところ、フリーの記者扱いになったのか、「審査するので総務省関連の記事を複数、執筆実績として送ってほしい」と指示を受けた。登録したい記者1人1人について必要という。執筆実績として認められる記事は原則、「雑誌や新聞など紙媒体に掲載されたもの」。Web専業で紙媒体への記事掲載はしていない、そう伝えると担当者の声が曇る。「もしかしたら申請が通らないかもしれない。ただ、審査をするので念のため申請書類と一緒にプリントアウトした記事を送ってほしい」

photo 記者クラブから届いた書類

 審査にかかる期間は「分からない」。通常業務との兼業で記者クラブの業務を行っていること、「場合によってはクラブ総会を開いて審査を行わねばならない」ことが理由だ。

 申請者への諸注意が書かれた用紙、「定例会見参加登録受付票」「新聞倫理綱領」といった書類がFAXで届く。対応は丁寧で、到着確認の電話まで頂いた。受付票の必要項目を埋め、送り返せばいいらしい。

だが……

 翌日(1月7日)の午前中、追加の質問をしようと連絡を入れると別の担当者が出た。忙しい時間帯に電話をしてしまったようで「今取り込んでるので、聞くことがあるなら簡潔に」とくぎを刺される。質問に対する回答は受けたが、続けて「アイティメディアさん、日本インターネット報道協会には加盟してないですよね? 参加条件満たしてませんよね?」と返された。

 申請書類と記事を送れば一応審査する――昨日話した内容を伝えたが、Web専業メディアはオープン化の対象外、大臣に対する質問権を持つ参加は認められないとはっきりと言われる。Webメディアへの対応は今後、記者クラブ総会を開催して決めるという。

 「日本インターネット報道協会はOK」だが「Web専業メディアは認めない」というのはよく分からない。なぜだろうか。団体ならいいのだろうか。

 「Webメディアへの対応を話し合うのはいつごろか」「指定団体の選出基準は何か」「Web専業は、現時点でなぜ対象外なのか」。聞きたいことはたくさんある。質問を続けようとしたが「取り込み中なため、午後にもう一度かけなおしてほしい」と話は終わった。

 午後2時〜3時の間に3度ほど連絡を入れたが、誰も電話に出ない。今後Webメディアへの対応を検討する予定だというこのタイミングでは、申請しても通らないのだろうか。

「『知る権利』は民主主義社会をささえる普遍の原理」

 FAXで送られてきた書類によると、会見への参加に当たっては「新聞倫理綱領」にのっとって報道活動を行うよう要請されている。

 その新聞倫理綱領は2000年に改めて制定されたものだ。その2段落目には「国民の『知る権利』は民主主義社会をささえる普遍の原理である」とある。

 さらに「この権利は、言論・表現の自由のもと、高い倫理意識を備え、あらゆる権力から独立したメディアが存在して初めて保障される」とうたう。そして「新聞はそれにもっともふさわしい担い手であり続けたい」と続く。

 大臣会見の登録可否を決める記者クラブは「あらゆる権力」とは違うのだろうか。われわれが記者クラブに認めてもらう形で大臣会見に参加することは、「あらゆる権力から独立したメディア」という理想に照らしてみるとどうなのだろうか。「知る権利」を持つ「国民」のメディアとして「独立」すべき「権力」とは、2010年のいま、何だろう。

 理由がよく分からない制限をパスするために、認められるかどうか不透明な申請を手間をかけて出すべきなのかどうか。いまは考えている。

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