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「まとめ」人気で急成長 NAVERに聞く「人を信じる検索」

» 2010年02月01日 00時00分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 NAVERトップページ

 昨年7月、日本に再参入した韓国発の検索サービス「NAVER」の利用者が増えている。お題に沿ったリンクや画像を集めて“まとめページ”を作る「NAVERまとめ」が人気をけん引。ネットレイティングスの調査によると、12月のユニークユーザーは134万人に達した。

 NAVERが目指すのは、次世代に台頭する新たな検索プラットフォームの構築だ。既存の情報を技術だけで整理するGoogle的なアプローチに加え、ユーザーの手を借りながら必要な情報を作り上げて整理する新たな検索の形を提案。従来の検索の枠を超えた「サーチコミュニケーションプラットフォーム」を構築したいという。

「NAVERは人も信じる」

 NAVERは韓国でシェア7割のナンバーワン検索サービス。2000年に日本に参入したが振るわず、05年に撤退。09年7月、日本向けに特化したサービスを構築し直して“再上陸”した。

 日本版NAVER検索のコンセプトは「探し合う検索」。検索結果を一方的に提示するのではなく、ユーザーと一緒に作り上げるサービスを目指していると、同社の舛田淳 事業戦略室室長は話す。

画像 舛田室長

 現在、主流となっているロボット検索は、既存のコンテンツをロボットでクローリングし、「PageRank」など1つの指標に基づいて機械的に整理・提示するものが主流。NAVERも同様な仕組みを取り入れている。

 だが「NAVERは人も信じる」。ユーザーにコンテンツを作ってもらうなど、あえて人手を介在させることで、検索エンジンのロジックという一義的・機械的な基準だけでなく、個々のユーザーニーズに合わせた多様な情報を提示できると考えている。

 「Web上で情報が爆発する中、もう1度集約のプロセスが必要では。検索の対象は人が生み出したコンテンツ。人にフォーカスすることで、ネット上にない情報も生み出せる」

「ユーザーに検索結果を作ってもらう」NAVERまとめ

画像 NAVERまとめ「ハイチへの寄付リンク」

 この考えのもとで構築し、成功しているのが「NAVERまとめ」だ。「ハイチへの寄付リンク」「無線LANが使える、わいわい食べて飲めるお店【首都圏】」などテーマを設定し、ユーザー同士でリンクや画像、テキストなどをまとめられるサービスだ。まとめた結果はNAVERの検索結果に反映。「検索結果の一部をユーザーに作ってもらう試み」だ。

 まとめページの要望をユーザーから募集し、人力でまとめる「おまとめマン」の企画も話題に。専任スタッフがTwitterで要望を吸い上げ、1000件以上のまとめページを制作した。面白いまとめはTwitterや2ちゃんねる、はてなブックマークで話題になって注目を浴び、さらに情報が追加される――といった好循環も起きており、成長は「想定よりはるかに早いペース」という。

専任スタッフが口コミチェック

 「世界で最も身近な検索になりたい」――ユーザーとのコミュニケーションを重視する姿勢も徹底している。ユーザー交流のために専任スタッフを配置し、Twitterでコミュニケーションしているほか、mixiやブログ、掲示板などを検索してNAVERについての書き込みもチェック。ユーザーイベント「NAVERナイト」も開いている。

 著名人にNAVERのサービスや運営について意見を聞く「アドバイザリーボード」という企画も。西村博之(ひろゆき)氏やピクシブの片桐孝憲社長などが登場、「NAVERはイマイチ信頼感が無い」など厳しい指摘も記事として公表し、外部の意見を取り入れる姿勢を明確に示している。

「Nドライブ」で“次のフェーズ”に

 Webブラウザ上で手軽に写真編集できる「NAVERフォトエディター」や、最大5Gバイトまでのファイルを保存できる無料オンラインストレージ「Nドライブ」など、検索の枠を超えたサービスもスタートした。それぞれ「長期的視野に基づいて展開しており、単体での収益化は考えていない」という。

画像 NAVERフォトエディター

 フォトエディターは、「ユーザーにもっとネットに参加してもらう」ための取り組み。写真を手軽に編集してもらい、ブログや「まとめ」などのコンテンツを増やすきっかけの1つにしたいという。

 Nドライブは5Gバイトという大容量が無料で使える“太っ腹”さや、保存した楽曲や動画をiPhoneで再生できる機能などが注目を集めた。舛田室長によるとNドライブは、「2010年上半期中にスタートする、NAVERの“第2フェーズ”を構成する“点”の1つ。ほかの“点”を構成するサービスも上半期中に出す」という。点を結ぶ“線”がどんなものになるのか、それは明らかにしなかった。

 同社が目指すのは、ユーザーの声を聞きながらニーズに合ったサービスを構築し、検索とコミュニケーションを融合した「サーチコミュニケーションプラットフォーム」だ。約170人いるという同社のスタッフも、ほとんどが企画・開発・デザインを担当。豊富なリソースを、収益化ではなくサービス改善や新サービス構築に割いている。

 「検索サービスを作ることとユーザーがコンテンツを作ることは密接不可分。ユーザーに参加してもらって情報収集して公開し、その情報がユーザーに返ってくるという良いサイクルを作り上げたい」と舛田室長は話している。

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