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» 2010年04月12日 16時25分 UPDATE

“ドラムキーボード”に通じる、Googleが考える“最高の日本語入力”とは

エイプリルフールに話題になったGoogleのドラムセット型キーボード。アイデアが生まれた経緯と同社が目指す“究極の日本語入力”について聞いた。

[小笠原由依,ITmedia]
photo ドラムセット型キーボード

 さまざまなネタ企画に沸いた今年のエイプリルフール。Webサイトに普段とは違う趣向を凝らす会社が多い中、GoogleはJIS第1水準漢字がワンストロークで入力できるドラムセット型キーボードを公開し、話題になった。異色のキーボードの背景や、“最高の日本語入力”とは何か、Google日本語入力の開発担当者・小松弘幸さんと工藤拓さんに聞いた。

 ドラムセットのように、ユーザーを取り囲む形で多数のキーが並ぶキーボード。JIS第1水準の漢字1つ1つや、「m(_ _)m」「(´・ω・`)」といった顔文字が1つのキーに1つずつ割り当てられており、それぞれ1プッシュで入力できる、というのが特徴だ。


photo 「四」「月」「馬」「鹿」の4文字が縦に並んでいる
photo 記者も実際遊んで(?)みた。愉快な気持ちになるが、どこに何があるかを探すのに一苦労。覚えるまでが大変だ!

 例えば「素晴らしい」と入力するために、ローマ字入力なら11回(「subarashii+変換キー」)、かな入力でも6回(「すばらしい+変換キー」)と打ち込む必要があるが、このキーボードなら5回で入力できる、という。

 実際に、エレクトリックドラムセットのパッドにキーを敷いて制作した。キー配列には特にこだわっていないというが、同じ偏(へん)の漢字を1カ所にまとめるという工夫も。ユーザーの正面に置かれたキーボードの右端には「四」「月」「馬」「鹿」という4つのキーが縦に並ぶ。入力はドラムスティックを使っても、手を使ってもいい(……ただし残念ながら、実際の入力はできない)。


photo Google Japan ブログに幾つかの案が掲載されている

 「日本語入力で一番困るのは変換。じゃあキーを全部作っておけばいいんじゃない?」――そんな発想からキーボードの開発がスタートした。きっかけは同社のエンジニアが集まり、2月末に行ったスキー旅行。「エイプリルフールが近いけど、今年は何をやろうか」と盛り上がった。

 まずは「大きなキーボードを作ればいいのでは?」と、縦や横にサイズを拡張する案が上がった。そのうち「横にだーっと長いキーボードを作って2人でセッションするのは?」「セッションするのであれば、多段的にして小室哲哉さんがシンセサイザーを演奏するようにしても面白いかも」と発想が膨らんだ。

 横に倒した円柱にキーを配置したトウモロコシ型、球にキーを乗せたミラーボール型などさまざまな案が登場。最終的には、ユーザーを取り囲むような輪の中に入って使う“浮き輪型”とドラムセット型に絞られ、「早く打ち込めそうだし、写真映えしそう(笑)だから」(小松さん)とドラムセット型に決まったという。

「電気・ガス・水道・IME」――IMEを社会インフラの1つに

photo 小松弘幸さん

 このキーボードのコンセプトは「空気のような入力」と「変換に煩わしさを感じない入力」の2つ。このコンセプトは、同社が提供する日本語入力システム(IME)「Google日本語入力」にも通じる。

 同IMEは昨年12月にβ版として公開。Webから集めた情報を元に辞書を自動生成し、新語や専門用語、芸能人の名前などに強いのが特徴だ(「Google日本語入力」開発者が語る、その狙い

 開発を始める際に決めたコンセプトは「空気のようなIME」。「使っていることを意識させない思い通りの日本語入力を作りたいと思った」(小松さん)という。

 ユーザーが変換に対して感じるわずらわしさを少しでも軽減するため、冒頭の数文字を入力すると候補語が出るサジェスト機能を搭載。「サジェストが当たっていれば、2、3文字入力しただけで変換できる。頭で考えたスピードとアウトプットのスピードが同じになる」(小松さん)


photo 工藤拓さん

 頭の中に漢字が浮かぶがPCで変換できない、というケースをフォローするため語彙(ごい)の充実も目指した。「はっきりとした数字は言えない」が、登録された単語数はほかのIMEに比べ、けた違いだという。

 とはいえ、単語の数が豊富になればなるほど、精度を保つのが難しくなる。単語数の多さにIMEが混乱し、ユーザーが想定したものと違う単語が出てしまう可能性があるためだ。

 同IMEでは、Web上で使われる頻度をベースに、よく使われるものの表示ランクを上げるという工夫をした。「Web上のドキュメントをほぼすべてクロールしているため、割とまともなランク付けになっていると思う」と、工藤さんは自信を見せる。

 モードレスも強く意識した。従来のIMEには「話し言葉」「地名」「人名」などを優先的に変換するモードがあるが、「少なくとも自分のまわりにモードを変えて作業する人はいない」(工藤さん)。モードがなくても、ユーザーが何を入力しようとしているかを先読みできるIMEを目指すとしている。

 最後に2人が考える究極の日本語入力について聞いた。「今あるキーボードが日本語入力に最適かどうか分からない。キーボードから再デザインしないといけないような気がします。でも、慣れたものが一番。バランスが重要ですね」(小松さん)

 工藤さんが目指すのは“インフラ”としてのIMEだ。「新幹線や飛行機は、ユーザーから『すごい』とも『だめ』とも言われない。技術のすごさに気づかず、空気のように便利に使っている。僕が目指すのはそういうIMEです。そこにあるかぎり、便利さに気づかないような。電気・ガス・水道・IMEと名前を並べられるような、社会インフラの1つのようなものを目指しています」

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