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「テレビ局とwin-win」 Ustreamの「謙虚」な戦略、CEOが語る(1/2 ページ)

» 2010年05月20日 15時15分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 来日したジョン・ハムCEO(左)とブラッド・ハスタンブル社長

 「謙虚はわれわれのDNA。既存メディアとwin-winで繁栄したい」――来日した米Ustreamのジョン・ハムCEOはこう繰り返す。

 Ustreamは2007年2月のスタート以来急成長し、現在の月間ユニーク視聴者数は1億人以上。成長のドライバーとなったのは、テレビ局など大手メディアによる活用や、有名人が出演する番組だ。既存メディアと対立するのではなく、謙虚な姿勢で対応し、共存共栄を目指してきたという。

 ライブ動画配信サイトとして米国ナンバーワンの地位を揺るぎないものにし、世界展開に踏み出した。第一歩は日本。ソフトバンク子会社のTVバンクと合弁で、新会社・Ustream Asiaを設立。日本でも謙虚な姿勢でテレビ局などと協業し、アジア市場でナンバーワンの地位を手に入れたいという。

「海外派兵の兵士のために」

画像 Ustreamの歴史。一番左の写真は陸軍時代の2人

 UstreamのハムCEOとブラッド・ハスタンブル社長は、陸軍士官学校(米ニューヨーク州)の同窓生。Ustreamのアイデアは、2人の海外派兵経験から生まれた。

 「海外派兵中、母国の家族や親類と連絡する手段は電話やインスタントメッセンジャーぐらいしかなく、1対1のコミュニケーションしかできない。一度にたくさんの人とつながれるツールがほしい」と考え、2人は個人が動画をライブ配信できるサービスを発案。開発者のジュラ・フェヘルCTOと3人で2006年、Ustreamを起業し、07年2月にサービスを始めた。

 Ustreamの強みとして、数百万人規模の視聴に耐えられるインフラと配信実績、WebカメラやiPhoneなどあらゆる端末で配信・視聴できる利便性、TwitterやFacebookとも連携し、ソーシャルメディアから集客できる点などを挙げる。「誰でも、いつでもどこからでも配信・視聴でき、ライブ体験を共有できる。Ustreamは“ライブ”の形を変える」

「既存メディアを尊重」「Ustreamはテレビ視聴率を上げる」

 Ustreamは着実に成長を続け、月間ユニーク視聴者数は1億人以上、登録ユーザー数は500万人以上。シリコンバレーの本社のほか、ロサンゼルスや欧州にも拠点を持つ。常時雇用のスタッフは約100人という。

 急成長したユーザー投稿型動画サービスは、YouTubeのように、当初はテレビ局など大手メディア企業と対立するケースも多いが、“YouTube後”にスタートしたUstreamは「謙虚」に展開。メディア企業と話し合い、積極的に協業してきたという。

 「既存メディアを破壊するようなベンチャーもあるが、われわれは謙虚なDNAを持っており、既存メディアを尊重する。彼らはコンテンツ配信先を探しており、われわれはコンテンツを求めているため補完関係を築ける。既存メディアも変化の時代、win-winで共存共栄することが、長い目で見れば一番大きなチャンスになる」

画像 ハムCEOは、テレビ放送とUstreamを組み合わせればいかに視聴率が上がるかを、何枚ものプレゼン資料を使って繰り返し説明していた

 米国では、CNNやNBC、FOX、ABCといった大手ネットワークがUstreamを使っているという。「Ustreamを活用すれば、テレビの視聴率が上がる」とハムCEOは強調。さまざまな例を挙げながら、Ustreamがいかに、既存メディアの価値を高めるかを力説する。

 例えばABCが昨年、音楽賞「アメリカン・ミュージック・アワード」放送前、アーティストが会場入りする様子をUstream配信したところ210万人が視聴し、テレビ放送の視聴者数も前年より200万人増えたという。Ustreamを“取材”に活用する例も。チリ大地震の際CNNは、現地Ustreamユーザーが配信している映像をニュースで使ったという。

 米Disney、米Coca-Colaなど大手企業に加え、ホワイトハウス、米航空宇宙局(NASA)など公的機関までUstreamを活用。バラク・オバマ大統領が演説を配信したり、KISSなど有名アーティストがライブ映像を配信したり、映画劇場公開前の試写会に使ったり――という例もある。

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