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録画番組の海外転送、レコーダーが業者管理下なら著作権侵害に 最高裁、審理差し戻し

» 2011年01月20日 18時49分 公開
[ITmedia]

 テレビ番組を録画し、ネット経由で転送して海外でも視聴できるようにした機器を使ったサービスに著作権(複製権)を侵害されたとして、NHKと民放9社がサービス差し止めと損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が1月20日、最高裁第1小法廷(金築誠志裁判長)であった。判決は、レコーダーが業者の管理下にある場合は著作権侵害に当たると判断。一審、二審判決を破棄し、審理を知財高裁に差し戻した。

 問題になったサービスは、「日本デジタル家電」が運営。同社のHDDレコーダー「ロクラクII」を使い、国内に設置した親機にテレビ番組を録画し、ネット経由で海外の子機に転送する。同社は親機をレンタルし、子機を販売・レンタルしていた。

 個人が国内の自宅などに親機を設置する場合は問題にならないが、同社が親機を管理する形でサービスを提供しているケースがあるとして、テレビ局側はサービスの差し止めと1億3800万円の損害賠償を求めて提訴。同社は「当社は機器をレンタルしているだけで、管理・支配していないため、番組の複製主体には当たらない」と主張していた。

 08年5月の一審・東京地裁判決は、同社が機器の設置場所を提供するなど、複製を実質的に管理・支配し、それによって利益を得ていると認め、同社が複製の主体として著作権を侵害していたとして損害賠償733万円の支払いなどを命じた。

 だが09年1月の二審・知財高裁判決は、「レコーダーが同社の管理・支配する場所に置かれていたとしても、同社はユーザーが録画を容易にするための環境を提供しているに過ぎず、番組を録画・転送しているのはユーザー自身であり、著作権法が認めている私的複製に当たる」として、同社はテレビ局側の請求を棄却。一審と二審で判断が分かれていた。

 最高裁判決は、「サービス提供者の管理・支配下で、アンテナで受信した放送をレコーダーに入力している場合は、録画指示をユーザーがするのであっても、サービス提供者が複製の主体と解するのが相当」とし、同社が複製の主体として著作権を侵害しているとの判断を示した。

 理由として、サービス提供者は「管理・支配下において放送を受信してレコーダーに入力するという、レコーダーを使った番組複製の実現における枢要な行為をしており、この行為がなければユーザーが録画の指示をしても番組複製は不可能であり、サービス提供者が複製の主体というに十分だ」とした。

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