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「ペンタックスのマウントは強い資産だ」──リコー、買収でカメラ事業に注力

» 2011年07月01日 19時59分 公開
[ITmedia]
photo リコーの近藤社長(左)とHOYAの鈴木CEO

 「リコーは強い戦略的意志を持って臨んでいく」──7月1日にHOYAから「ペンタックス」ブランドのカメラ事業を買収すると発表したリコーの近藤史朗社長は、カメラ事業の強化に注力していく考えを示した。ペンタックスが持つ3種類のレンズマウントを「ものすごく強い資産だ」と評価し、ペンタックスブランドを維持しながらレンズ交換式カメラに力を入れていく方針。「3年くらいの間には1000億円を超える事業に育てたい」と意気込む。

 買収は10月1日付けで行う。HOYAは、ペンタックスブランドでデジタルカメラ、交換レンズ、関連アクセサリー、セキュリティカメラ、双眼鏡など光機製品の開発・製造・販売を展開するHOYAの「PENTAX イメージング・システム事業」を、HOYAが新設する新会社に吸収分割・事業譲渡により承継させ、リコーが新会社の株式を100%取得する形で買収する。買収金額は非公開。

 リコーはペンタックス事業を本体には取り込まず、新会社にリコーのカメラ事業が合流し、リコーの完全子会社として運営していく。新会社の社名は未定だが、近藤社長は「ペンタックス」の名前が入ることを示唆した。

photo リコーが買収するペンタックスの製品群

 リコー傘下で新会社はレンズ交換式カメラの強化を図り、製品ラインアップと交換レンズ群を拡充していく。またリコーが展開しているオンラインフォトストレージサービスなどを活用したコンシューマー向け付加価値事業の創出を図っていくほか、ペンタックスの中判デジタルカメラを使った高画質なイメージアーカイブ事業への参入を検討する。

 「リコーはコンシューマー事業の確立を長年の課題としてきた。ネットワーク化の進展でオフィスと家庭の垣根が取り払われていくという今後のビジネス環境を考えると、コンシューマー事業は避けては通れないと認識している」──リコーの近藤社長は、都内で開いた記者会見でこう話した。「コンシューマー領域と隣接領域で確たる地歩を築きたい。その点でデジタルカメラは大切だと考えている」という。

 リコーは高級コンパクトを中心にデジタルカメラを展開しており、一眼レフとコンパクト「Optio」を展開するペンタックスとは「製品ラインアップに重複が少ない」とみているが、ペンタックスブランドとリコーブランドの使い分けは今後検討するとしている。

 HOYAは2007年8月にペンタックスを連結子会社化し、08年3月に吸収合併した。ペンタックス事業のうちデジタルカメラモジュール、DVDピックアップレンズ、内視鏡、人工骨、音声合成ソフトウェアは残し、今後もペンタックスブランドで展開。異なる領域ながら、2つの企業が同じブランドを使用していく状態になる。両社は今後、協業を検討していく。

 HOYAの鈴木洋CEOは「ペンタックスと合併して3年半、苦労もあったがしっかりした事業はできた。1つの区切りがついたと、リコーにバトンタッチする決断をした。この業界は再編されていくべきであり、その1つの先駆けではと思っている」と話した。

 会見での主な質疑応答は以下の通り。

──買収はどちらから持ちかけたのか。今後の見通しは

リコーの近藤社長 2年くらい前、どちらともなく会って話したいということになり、カメラ事業の話をした。短期的にはペンタックスは非常に良い状態だと評価している。リストラが済んでいるし、中判、K-5、ミラーレスのQなど、良いカメラをしっかり作る力を持っており、HOYAの中で利益を出しながらきている。そこにネットワークなどを加えて新しい事業を創造していきたい。3年くらいの間には1000億超えるような事業に育てていきたい。

──リコーブランドとの競合は。

近藤社長 まだしっかりと考えて戦略を決めているわけでないが、製品ラインアップはクロスしない。ブランドをどうするかはこれから考えたい。

──なぜレンズ交換式カメラの強化なのか。

近藤社長 コンパクトの未来はモバイル端末と競合していくだろう。写真本来の楽しみ方はレンズ交換式にシフトしていき、その中でも二極化するのでは。

──なぜこのタイミングで買収になったのか。

近藤社長 結婚と同じだと思う。双方の状況が良いタイミングにないと至らない。しっかりとHOYAの中でペンタックスが利益を出せるところまで来ている。PENTAX Qという新しいミラーレス一眼が出るが、こういうタイミングに持参金をつけて出してもらえるようなもので、ありがたいと思っている。

HOYAの鈴木CEO ペンタックス買収当時から単独でというより、何らかの形で単独ではないほうが望ましいと考えていた。当時からリコーにお預けすると想定していたわけではないが、ある一定期間の間に別の形を模索するというのがもともとの考え方だった。リーマンショックで予定通りいかなかった面もあるが、買収時の大きな意味での戦略の中だと考えてもらっていい。

──利益ベースの貢献度をどう見ているか。

近藤社長 市場は大変厳しいことは承知して買収に踏み切った。1000万台出さないと利益が出ないとか、そういう話はよくあるが、わたしどもはそうは考えていない。価値の高いものを、ブランドを愛してくれるみなさんを世界中で作っていく、きちんと価格管理してお客に渡していくことをしっかりやっていきたい。値崩れしないようにペンタックスはやっており、リコーと似たところがある。

──研究開発費などは増やすのか。

近藤社長 キヤノン、ニコンの大手2社に競合できるくらいにはチャレンジャーとして十分投資していきたい。

 シナジーを出して短期的に利益出していくということではなく、リコーの成長につながることをしっかりやっていきたい。世界に伍して戦っていけるような会社に育てたい、そのための努力をやっていきたいという決意で臨んでいる。無謀ではと思っている方もいると思うが、わたし自身がペンタックスのレンズ技術、絵作り、メカ設計を実際に評価して、この会社の技術は世界に誇れる技術であると確信している。

──マウントを複数抱えるのは無駄ではないか。

近藤社長 645用、Kマウント、Qの3つはものすごく強い資産だと思っている。QならQでしか出せない楽しみ方もあり、これらを組み合わせながら伸ばしていく。GXRはどうするか、いま答えは持っていない。

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