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2ch「ステマ」戦争 人気板が住民大移動で一気に縮小、その背景の事情と心情(3/4 ページ)

» 2012年01月13日 15時49分 公開
[久我山徹,ITmedia]

 アフィリエイトブログは個人運営が多いとみられるが、企業が取り組んでいるケースもあるとされる。ニュー速には1日に数百のスレッドが立ち、多くのユーザーと投稿が集まることから、ニュー速のスレをまとめるアフィリエイトブログは多い。

 ただ、2chのスレッドの転載はほぼ無断で行われており、著作権法上は違法に当たる。だが匿名ユーザーによる投稿の集合という2chスレの性格上、ユーザーが法的手段に訴えることは、実効性という観点からも難しい。CGMコンテンツの法的な間隙を突いて儲ける手法は2ch住民の反感を買い、管理人が得ているという「多額のアフィリエイト収入」について、2chではまことしやかに語られている。ネット上のクリエイターなどが収益を上げることを嫌う傾向を表す「嫌儲」(けんちょ、けんもうなどと読まれる)という言葉は、過去に起きたアフィリエイトブログをめぐる騒動を評して生まれたと言われている。

 2007年末、当時2chの管理人だった西村博之(ひろゆき)氏は「ニュースの掲示板なので、情報は広く伝達したほうがいいです」と転載禁止に反対したとされ、アフィリエイトブログによる転載は2ch運営側に黙認されてきた形だ。転載を嫌うニュー速民のために、転載禁止を明確にうたう「ニュース速報(嫌儲)」ができたものの、ほとんどの住民はニュー速にとどまっていた。これが今回の騒動の導火線にもなっている。

photo ニュー速(上)と異なり、嫌儲(下)には転載禁止が明記されている

 近年になってアフィリエイトブログの影響力は大きくなっており、企業が情報提供などで協力しているケースもあるとみられる。2chでは、今回問題となったアニメ系ブログやゲーム系の大手アフィリエイトブログサイトなどに対し、「企業から金をもらって意図的なネガティブ記事を掲載しているのではないか」という憶測があり、真偽はともかく一部で根強く信じられてきた。

 今回の騒動では、2chのレスにフリーライドして稼ぐ手法への不満に「ステマ」への疑心暗鬼が重なり、アフィリエイトブログへの反感が一気に吹き出した格好だ。ニュー速というコミュニティーは「企業と結託したアフィリエイトブログ」による「ステマ」のプラットフォームとして疑われ、数多くの“炎上”事件の舞台となってきたニュー速自身が住民の手によって炎上する事態に陥ったのだった。

恣意的

photo 議論スレの様子

 ニュー速のスレのほとんどが「ステマ」「アフィリエイト」の連呼で埋まるようになった6日夕方、アフィリエイトブログへの転載禁止について議論する「自治スレ」が立った。

 そこでは(1)アフィリエイトブログがニュー速のスレをまとめてアクセスを集め、アフィリエイトや検索連動広告で稼いでいるのはおかしい、という従来からの批判も多かったが、新しい視点として(2)アフィリエイトブログがスレの内容を恣意的に編集し、ネットに拡散させることでニュー速のイメージを悪化させている──という意見も相次いだ。

 昨年、「福島県産米がJAグループ熊本の袋を使って産地を偽装している」というデマが広がったり、ある若者の死が「原発の犠牲者」などと取り上げられる事件があったが、これはニュー速に立ったスレが元になっている。スレ内ではデマを否定するレスがいくつもあったものの、大手まとめサイトはこれを無視し、あおるようなコメントだけを意図的に選んで掲載し、Twitterユーザーがこの記事を安易に拡散することで傷口を広げた。

 アフィリエイトブログが「いかにも2ch的」なパブリックイメージに沿った殺伐としたレスを選んで掲載し、そのまとめを読んだ人々から「2chはひどい」などとコメントされるケースも多い。後にまとめの内容がデマだと判明しても、「犯人」としてやり玉に挙がるのは2ch。東日本大震災の際、Twitterでデマを流したユーザーが「ニュー速のデマでした」と弁解、アカウントを削除して“逃亡”した件は今もニュー速民の語り草だ。

 デマやねつ造に基づくスレが立てられる現実はあるが、こうしたデマを強く否定するバランス感覚もニュー速にはあり、まとめサイトはこうした面を意図的に見逃している──という不満だ。

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