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» 2012年08月03日 15時17分 UPDATE

部屋とディスプレイとわたし:時代は多様性を欲してはいない──コンテンツのクラスタ化と、むしろ画一化 (1/3)

「現代人は好みが多様化し……」とよく説明される。だが時代は多様性を求めているのだろうか。「クラスタへの細分化と、そのクラスタの中での画一化が同時に起こっている」のではないだろうか。

[堀田純司,ITmedia]

 私は、他の書き手の方たちとごいっしょして「AiR(エア)」という電子書籍をつくっています。現在はほとんど年に一度のペース。“年刊”です。2010年5月の創刊以来、地味に継続を続け、現在は3号になりました。なぜこんな営みを続けるのか。各著者それぞれに意図は違うとは思いますが、私の場合は「これだ。これが自分の読みたかったコンテンツだ」と感じてもらえる人に、たとえそれが“少数”であっても出会いたいと考えて続けています。

趣味は多様化しましたが……

 みなさまは「社会が多様になった」と思われますでしょうか? そう、確かに現在は、昔にくらべて、いろんな分野の多様性、ダイバーシティが高まったように感じます。たとえば人々のライフスタイルも様々になった。かつては街のスーパーマーケットはどこも似たような時間に開店して、似たような時間に閉まっていたものでしたが、今では深夜まで、あるいは24時間で営業していたりします。これは現代人の、多様なライフスタイルに対応するためでしょう。私のように朝方まで起きて明るくなってから眠る「自宅警備型」の生活リズムの持ち主には、いい時代となりました。

 デジタル技術も発達し、メディアの世界も変容しました。現代では、あなたがどんなに“どマイナー”な趣味の持ち主でも、ブラウザを開き検索すれば、情報にアクセスすることができる。たとえば今「キラー・デンティスト2」というタイトルで検索すると、「ああ、これはヘッドがアレした殺人歯医者さんの映画なんだな」ときちんとその情報が得られます。また「クレイジーワールド・オブ・アーサーブラウン」などという用語で検索してもウィキペディアのページやYouTubeの動画がヒットし、「ああ、この人はヘッドの上に火を載せて歌うアレな人なんだな」と、その音楽性を知ることができます。

 ネットのおかげで細かい情報を拾い上げることが可能になったわけで、こうした時代を迎えて「多様な趣味を楽しむことができるようになった」という実感をお持ちの方も少なくないと思います。

増えたベストセラー

 では、こうした現在の状況を反映し、コンテンツの世界においても多様な商業が成立するようになったのでしょうか。実はそれが、そうとも言い切れないのです。

 たとえば、長年その低落傾向と不況が叫ばれる出版分野。すっかり市場も冷え込んで、ベストセラーもさぞ出づらくなっただろうと思うところですが、これが違うのです。実は2011年には100万部以上のベストセラーが、漫画を除いても「謎解きはディナーのあとで」(小学館)、「樫木式・カーヴィーダンスで即やせる! 」(学研マーケティング)、「体脂肪計タニタの社員食堂」(大和書房)など、実に7作も出ている(オリコン2011年本ランキングより)。ちなみにこの年は拙著「僕とツンデレとハイデガー」も刊行されていますが、余裕でランキングのはるか圏外。血の涙が頬をしたたり落ちます。

 2011年は震災もあり特殊な年だったのかもしれませんが、2010年、2009年、その前の2008年もコンスタントに100万部以上のヒット作が登場しており、実は現状、業界では不況期にもかかわらず「むしろベストセラーが出やすくなった」と言われています。

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