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ネットで広がる法律相談サービス 「弁護士の“食べログ”に」

» 2012年10月05日 12時34分 公開
[本宮学,ITmedia]

 スマートフォンなどの普及に伴い、ネット上で法律相談を受けられるサービスが成長している。個人が肌身離さず持ち歩くことが多いモバイル端末の“秘匿性”と、他人に知られたくないような赤裸々な悩み相談がマッチしているようだ。

photo 弁護士ドットコム

 「相談件数はここ数年で激増した」――こう話すのは、法律相談サイト「弁護士ドットコム」を運営するオーセンスグループの元榮(もとえ)太一郎社長。同サイトは2005年に弁護士比較サイトとしてオープンし、2007年に登録弁護士による無料相談サービス「みんなの法律相談」をスタート。今では月間8000件ほどの相談が寄せられ、累計相談件数は21万件を超えているという。

 「2009年にフィーチャーフォン版、2010年にスマートフォン版をそれぞれ公開してから相談件数が一気に増えた」と元榮社長は振り返る。中でもフィーチャーフォン版は主婦層の利用が多いといい、平日の昼下がりから夕方にかけて多くの相談が寄せられるという。

 高額なイメージがある法律相談を、ネットの無料サービスを通じて気軽なものにしたいと元榮社長は話す。「これまで、弁護士に相談するのは“コンコルドに乗る”ような非日常的なもので、一部の富裕層しかできないイメージがあった。それを、電車に乗るように誰もが利用できる身近なものに変えていきたい」

「弁護士の“食べログ”に」

 弁護士ドットコムでは、誰でも法律に関する悩みや質問を無料で投稿できる。回答するのはサイトに登録している約4500人の弁護士だ。1つの投稿に対し、平均1時間半で回答が寄せられるという。

photo 元榮社長

 相談内容は交通事故、相続、労働問題やワンクリック詐欺被害などさまざまだ。特に多いのは男女問題に関する相談で、全体の約15%を占めているという。「人の数だけ男女問題はありますから」と元榮社長は言う。

 サイト上で行われた無料相談は一般公開され、ほかのユーザーも自由に閲覧できる。「いまや人々は“これって法律的にどうなんだろう”と思う出来事があったら真っ先にネットで調べる。誰もがここに寄せられた投稿を見て、解決のヒントにしてもらえれば」。相談内容を公開したくない場合、有料で弁護士と1対1で相談することも可能だ。

 相談は基本的に無料だが、こうしたユーザーとのやり取りは弁護士にとってもメリットがあるという。サイト上で弁護士は「質問者が納得!」「ありがとう」といったポイントで評価され、人気が出ると「活躍中の弁護士ランキング」としてサイト上に掲載される。これが弁護士の知名度向上や、案件の受注につながっているという。

 「弁護士を“食べログ”みたいに探せるようにしたい」と元榮社長は強調する。「普段から弁護士に相談したことがない人は、いざ自分が問題に直面したときに誰に相談すればいいのか分からない。そこで、弁護士を口コミサイトみたいに探せるようなサイトにしていければと思う」

 8月には、カカクコムなどを傘下に持つデジタルガレージグループと資本提携。「運命的なものを感じた」と元榮社長は言う。「もともと(カカクコムが運営する)食べログを意識していた。業界的に情報が少ない中で、口コミとランキングで弁護士を探せる検索サイトを目指していた」。提携によって開発部隊を強化するほか、デジタルガレージグループのメディア企業との連携も考えているという。

 日本でも2004年に法科大学院制度が始まってから8年たつが、法律家が人々に身近になったとはまだ言い難いのが現状だ。「1つの県に80人ほどしか弁護士がいないケースもある」(元榮社長)。弁護士ドットコムは今後、ユーザーによる口コミ機能やランキングのアルゴリズムなどを強化し、法律専門口コミサイトとしての利用拡大を目指していく。

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