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日本ペンクラブ、「電子出版権」に反対意見

» 2013年10月18日 18時11分 公開
[ITmedia]

 日本ペンクラブ(浅田次郎会長)は、文化審議会の小委員会が打ち出した「電子出版権」の創設に反対する意見を表明した。「経済原理にのみのっとってできあがった」と批判し、「ネット空間における言論表現の自由のあり方を揺るがしかねず、既存の紙メディアにおける出版行為にも重篤な影響を及ぼす」としている。

 文化審議会の著作権分科会 出版関連小委員会は9月の中間報告で、「電子出版権」の創設を軸とした検討を進めるべきとした。出版社が著作者と契約することで書籍を独占的に発行できる「出版権」と同様の権利を電子書籍でも認める(具体的には複製権と公衆送信権とされた)もので、出版社に限らずネット企業など「電子書籍を発行する者」が幅広く対象となり、他人への再利用許諾(サブライセンス)もできるようにした。

 電子書籍の普及が進む中、ネット上の海賊版電子書籍などに出版社らが差し止め請求などで対応できるようにするのが狙いで、日本経団連などが提唱していた。出版社への著作隣接権付与は懸念が多く出たため、中間報告では見送られた。

 日本ペンクラブは、中間報告(PDF)が「はじめに」で「便宜的に、パソコン、携帯電話、専用端末等の機器を用いて読まれる電子化されたコンテンツを広く『電子書籍』と呼び」としていることについて「議論の根幹にかかわる重要な定義が<便宜的に>呼称されるようなことがあってはならない」と、権利主体・客体が不明確だと指摘。配信サービスが停止した際に読者が購入した電子書籍を読めなくなるリスクなども現状では解決されておらず、「本質から外れた議論を立法事実として認めるわけにはいかない」として、議論のやり直しを求めている。

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