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「広く問題提起」──ドワンゴ「入社試験に受験料」発案の川上会長に聞く、その真意と“就活”観(2/5 ページ)

» 2013年12月06日 11時58分 公開
[山崎春奈,ITmedia]

 新卒採用で見るとこの数年、エントリーは数万人を超えています。物理的に全員と面接するのは不可能な規模です。学歴に関わらず優秀な人はもちろんいるはずですが、確率的に見るとどうしても有名大学出身者にほしい人材がいる率が高いことは間違いない。SPIの数値と入社して数年間の活躍との相関関係もはっきり出てきている。全員と会うのは無理な以上、優秀な人をこぼしてしまう可能性があっても、何らかの形でスクリーニングする必要はあるんですよね。

 じゃあそのやり方をどうしようかと。「他社とは違うこと」「今の就活の問題点に一石を投じられる施策」を考えて、受験料をもらうという方法をとることにしました。世の中全体を変えることはできないが、今のよくない風潮に迎合しないぞ、というメッセージを1社でもできる形で明らかにしたかった。受験料をとることを決めたら「リクナビ」には掲載を断られたので、今年情報を出しているのは「マイナビ」のみです。

photo 受験料制度の説明ページ

「社内でも反対は多かった」 反応は「予想通り」

──金銭でなくてもよいのでは、という声もあるが

 お金が一番難しいからです、ダイレクトだし生々しい。実際社内でも反対は多かったですよ。反発が来るに決まってますよね。大学入試や資格試験にも受験料はありますし、何らかの形で「足切り」しなければならない時、おそらく誰もが思いつく手段の1つのはずです。みんなが思いつくけど誰も実行してないことだからこそ、ここまで多くの賛否両論が出てくるわけですよね。これまでも自分たちは普通の会社は手を突っ込まないところにあえて切り込んできたわけで、広く問題提起するにはここだなと思って決めました。賞賛も罵倒も含め、かなりの反響がありますが――予想通りです。

 そもそも受験料制度が最善の方法だと言いたいわけでなくて、あくまで「スクリーニングの方法は多様であっていい」という一例なんですよね。どのやり方が最適か、なんて考えてしまうのがまずダメですよ。どんなやり方をしても絶対に取りこぼしてしまう人はいるので。本気度を測るなら小論文やレポートを課してはという意見もあるが、それだって文章を書くという側面の能力しか見られない。

 結局、テストにせよレポートにせよ、「人間の能力を人間が判断できるのか」って話なんですよ。“ダメ人間”でも放り込めば活躍する可能性はある。それは誰にもわからないし、測ることもできません。

──今の就職活動を見ていて一番問題と考えている部分は

 「とりあえず数を打つ」姿勢ですね。「1人で100社エントリー」とかリクナビの「一括エントリー」ボタンとか本当に馬鹿げていると思います。インターネットを使った就職活動の黎明期ならありだったのかもしれませんが、これだけ市場が成熟してる中では、不安に煽られてやってるだけで合理性はないですよね。企業も学生も疲弊するし、学生同士も首を絞め合っていて、みんな不幸。それに、いい大学出てテストでいい点をとれて“コミュ力”が高ければ業種も関係なく内定とれてしまうのだとしたら、やはりスクリーニング部分の多様性が少なすぎると思います。

 「他の企業も追随したら学生の負担は100社で数十万になる」という意見もありましたが、100社にエントリーするという前提がまずおかしいですよね。みんながたくさん受けてるから自分もそうしないと不利に思えるだけで、全員が数社ずつだけ選んでいたらマッチングのコストは今よりも絶対に下がるはずです。

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