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将棋電王戦、「やねうら王」修正前バージョンで対局 ドワンゴ「運営の判断ミス」と全面謝罪

» 2014年03月19日 19時45分 公開
[ITmedia]

 ドワンゴと将棋連盟は3月19日、「第3回将棋電王戦」第2局において使用される将棋ソフト「やねうら王」について、一旦受理したバグ修正を認めず、改修前のソフトで対局を行うことを決めた。ドワンゴは「運営側でバグ修正を認めたこと自体が判断ミス」と全面的に謝罪している。

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 「第3回将棋電王戦」は、現役プロ棋士5人が将棋ソフトと対戦する団体戦。出場ソフトの1つ「やねうら王」が対局3週間前に「棋力には影響しない」として安定性を高めるバグ修正を加えていたが、対戦相手の佐藤紳哉六段は「修正後は明らかに別物」と批判していた。

 15日に公開された公式プロモーションビデオで、対局直前にソフト変更があった経緯が明かされると、ネット上では批判が噴出。将棋ファンや他ソフト開発者から、特例を認めた運営側の落ち度や開発者側の姿勢を責める声が相次いでいた。プロモーションビデオは現在非公開になっている。

photo ドワンゴ川上量生会長

 これを受け、19日に行われた会見にはドワンゴの川上量生会長、日本将棋連盟の片上大輔理事、やねうら王開発者の「やねうらお」こと磯崎元洋さんの3人が出席。22日に予定されている第2局は、修正前のバージョンのやねうら王を使用すると発表した。

 川上会長は「バグ修正を認めたこと自体が、ドワンゴ自身が決めたルールを覆す誤った判断だった。問題発覚後、安定性を求め新しいバージョンでの対局を求めたことも含め運営側の間違い。磯崎さんへの批判も出ているが、そもそも引き起こしたのは我々であることは強調したい」と全面的に謝罪し、次回以降は開発者側のソフト修正期間に関してより明確なルール作りをしていくとした。

photo 「やねうら王」開発者の磯崎元洋さん

 開発者の磯崎さんは、電王戦出場決定から1週間以内とされていた修正期間を変更したのは、本業との兼ね合いであり、ドワンゴ側との合意の上と説明。「事前に許可をとり、決められた中で修正を加えたつもりだったが結果的に不手際で迷惑をかけたのは明確。棋力が上がるとは考えていなかったが、対局直前に佐藤六段をわずらわせたことはお詫びしたい」とした。

photo 日本将棋連盟 片上大輔理事

 ドワンゴと共に運営にあたる将棋連盟の片上理事は「最も反省すべきは、事実を明らかにすることだけを優先し、将棋ファンの気持ちを考えない、ただ不愉快になる映像を公開してしまったこと」と対立構図を煽るような公式PVについて謝罪。PV公開後、一番ショックだったのは「やらせ」「茶番」という言葉であり、「棋士にとって盤上の勝負は命を削った神聖で真剣なもの。八百長が一切ない世界であるという誇りを少しでも疑われてしまうやり方を選んでしまった責任を感じている」と話した。

 「佐藤六段は一貫して『ルールを決めるのは僕ではない、決められたものに従います』というスタンスだった。ネットではソフトの修正はルール違反、失格にすべきという意見も見られたが、プロ棋士として、そこに強いソフトが存在しているのに対局をしないという選択肢はない。佐藤六段をはじめ、ソフトであっても同じように敬意を表し、全力で挑む4人の棋士を応援してほしい」(片上理事)

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