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偉大であり続けるのは難しい──“ジョブズ後”のAppleは「光らなくなった」か 「沈みゆく帝国」著者語る(4/5 ページ)

» 2014年07月24日 12時10分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 偉大でい続けるのは難しいと思わざるを得ない。クックがCEOとして悪いからとか、Appleがミスをするからということより、大企業としてのプレッシャーとか創業者を亡くした企業の課題があまりにも多いからというのが理由です。

これから数年のAppleが面白い

――今後のAppleの見所は?

 これから数年がすごく面白い、大切な時期だと思います。Beats買収のころからティムも自分らしい経営を始めていて、ホームネットワーク分野で頑張るなどのビジョンも打ち出し始めており、それをどう実行していくかがここ2〜3年だと思います。

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 Appleは秋にまったく新しいプロダクトを出していくといわれていますが、過去のAppleを見ると、一発目で大成功したことはあまりないんですよね。一発目はまぁまぁの評判で、2回目で本当にすばらしものができあがり、大勢に買ってもらうパターンなので、次に新しいものを出し、まぁまぁの評判だったときにティムがどう出るか。スティーブのように投資するのか、一歩引いてしまうのかが見所だなと。

 みんな、次のイノベーションにどうしても期待してしまう。何を出してこれるかというのは注目するところだと思います。ここまで成功し、これほどiPhoneを売ってきて、今の売り上げや利益に1割プラスになるビジネス作るだけでも、今まで以上のヒット商品を出さないといけないと思うので、そこはすごく厳しい立場だと。

 新しい製品を期待している声は、社内でもすごくあると思います。みんなイノベーションを起こしたくてAppleに勤めているので、何かエキサイティングなことに加わりたい。それが結構ご無沙汰なので、そのフラストレーションがたまっているという声が聞こえています。シリコンバレーはいろんなビジネスが生まれ、面白いことが起きている中で、Apple社内でやっていくべきか、会社を出るべきか悩んでいる方がいるのは聞きますね。

――スティーブ型とティム型の上司がいたら、どちらの元で働きたいですか?

 やっぱりスティーブかな。感情で動く人だから、ある日「バカ」と怒られても、翌日いいことをすればほめてくれます。一緒に大きな仕事をできる可能性があるという意味ではスティーブの方が魅力的かなと。

終わりが見えない中での執筆

――岩谷さんは、本執筆のために4年間みっちり取材したとのことですが。

 取材は2011年の秋ごろから始めましたが、すごくストレスでした。ちゃんと内容が集まるかが最後まで心配だったし、今起きているニュースを追いながら今後Appleがどうなるかを書くのは、どこで終わらせるか分からずに書くことになる。明日何が起きるか分からない中、どう書くかは相当悩みました。「これからAppleが、創業者がいなくても偉大でい続けられるか」がキークエスチョンだと感じ、それを考えながら取材してゆき、答えを自分で出す過程……観察録のようなものを書いたつもりです。

 最初の1年は取材中心。2週間に2章ぐらいのペースで書いていました。でも取材中心の生活はすごく、気が遠くなる。新聞記者は毎日アウトプットがあり、達成感があるが、取材だけしていたら、毎日何も書かずに過ぎてしまうので、時には1日のできごとをリストアップして確認したりとか……本当に書けるのか、心配で眠れませんでした。

ジョブズがいたら書けなかった

――Apple関係者はインタビューに応じないことで有名ですが、この本を書くために何人ぐらいにインタビューしましたか?

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