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» 2015年03月26日 09時45分 UPDATE

「日本製炊飯器と温水洗浄便座が大人気」だが、うかうかしていられない 中国ユーザーの意識と、追い上げる中国メーカー (1/2)

春節に訪日した中国人観光客が日本製品を“爆買い”したことは記憶に新しい。電気製品では白物家電は人気だったが、デジタル家電は今ひとつ。ただ、白物家電でも中国勢が追い上げてきている──山谷氏によるリポート。

[山谷剛史,ITmedia]

 春節で金持ちの中国人観光客が、日本のモノを「爆買い」して本国に戻っていったことが日本のテレビや新聞、Webメディアを騒がせた。今年は円安の影響もあり、多くの中国人が日本にやってきていたようだ。合計数十万円、時には100万円を超す買い物をした訪日客が報道ではフォーカスされたが、筆者自身そこまで金持ちの人には会ったことがなく、取材では羽振りの良さが特に目立つ人にフォーカスを当てたのだろう。

photo 中国人が今年の春節の訪日中に買ったものランキング。ホットリンクと普千(上海)商務諮訊有限公司がソーシャルメディアから調べた

 ご存知の通り、中国人観光客には化粧品や、炊飯器、温水洗浄便座といった白物家電のほか、デジタル一眼レフカメラとそのレンズが人気だった。化粧品や、中国への転売が話題となる紙おむつや粉ミルクは、中国製が安全面で不安なのに対し、日本製は安心できるというので訪日客が買い求めている。

 デジタル一眼レフカメラは、中国よりも安く購入できることから人気だ。中国でスマートフォンが広く普及しており、コンパクトデジカメはユーザーがいるとはいえ、ニーズはなくなってきている。かつては日本でコンパクトデジカメを買う人もいたが、風向きは変わった。もう忘れられた話かもしれないが、中国で「ガラケー」(従来型携帯電話)の人気があり、シャープやNEC製の携帯電話が中国に転売され、高所得者層に使われていたころもあった(現在は人気はほぼないが)。

 一方、日本のPCやスマートフォンが訪日中国人に売れるという話は聞いたことがない。中国ではごく一部の店舗で日本のPCやスマホを扱うものの、ニッチな存在であり、ニーズはほとんどない。

白物は人気だが、スマホやPCは売れない日本製

 なぜ訪日中国人に日本の白物家電は売れて、デジタル家電はデジタル一眼レフカメラを除いて売れないのだろうか。「言語が違うから」とか「値段が高い」といった理由が挙げられるが、これらの行動の根っこを紹介することで解いていきたい。ヒントはスマートフォンがブレイクした新進気鋭のメーカー「小米」(Xiaomi)だと書いておこう。

 PCはLenovo(聯想)製が人気だ。特にGPUが別付けで搭載され、スピーカーも強化した「IdeaPad Y」という機種が長い間トップに君臨した。ゲームもできて映像も見られると好評だったのだ。一時期東芝の「Qosmio」も販売されてはいたが、Lenovoは安い上に、圧倒的に露出が多かった。各媒体にはLenovoの製品紹介記事ばかりが掲載されていたし、家電量販店や電脳街でも販売されていたのは同社の製品ばかりだった。Lenovoが大量に露出し、みなLenovo製品を使うようになると、日本製品を買ってステータスの高さに満足するという人々は目立たなくなった。

photo 家電量販店で売られる製品には、スペックはほとんど書かれていない。そして店員も知らない

 日本製品は数字に出にくいこだわりが強みだが、このこだわりが中国のIT黎明期から伝わらなかった。日本製品の良さを伝えるべく、こだわりを紹介する記事もあったが、マニアですら製品の評価ポイントはスペックだけで、こうしたこだわりが理解できない人がほとんどだった。中国では製品のこだわりよりもスペックが大事なのだ。薄さは日本製品のすごさを伝えるポイントのひとつだが、残念ながら中国ではDVD再生のニーズが強く、人気が高かったのは2スピンドルノートで、薄さはあまり関心を引かなかった。

 携帯電話はどうか。フィーチャーフォン(従来型携帯電話)全盛期やスマートフォン普及初期までは、見た目とメーカーだけで端末を選ぶしかなかった。店頭で近くに寄ってくる店員はあくまで盗難防止のため。商品知識はなく、端末について簡単な説明をそらんじるだけしかできず、ユーザーが機能について深く知ることは難しかったのだ。

「小米」が打ち出した“物差し”

 そこに登場したのが小米(Xiaomi)だった。同社はハイコストパフォーマンスな新機種を、ネット限定・数量限定で小出しに販売を行う“飢餓ビジネス”でマニアの注目を浴びていた。同社が注目されたのは、採用しているパーツを明確にした点にもある。つまりCPUなら具体的に製造メーカーと動作クロックを明記したわけだ。

 それまでの中国製端末では、同じ型番でも分解したら別のパーツが使われているといったことがザラだった。そんな中、搭載パーツを明記することはかなりグッとくるポイントであり、しかも「このパーツを使ってここまで安く提供できる」というアピールは中国のヘビーユーザーを惹きつけ、やがて一般ユーザーにも広がった。

 PCが普及する過程で、中国の消費者はCPU、メモリ、ストレージ、ディスプレイサイズといったスペックの違いしか気にしなかった。ショップもメディアもそれしか差別化するポイントを知らないかのような状況だった。そこに小米は、スマートフォンのスペックを明記し、スマートフォンを比較するための物差しを提案したのだ。

photo 小米の空気清浄機

 小米は昨年、空気清浄機を発表し、白物家電にも参入した。その際、小米は米国家電協会(AHAM)が定める「CADR(Clean Air Delivery Rate、クリーンエア供給率)」という物差しを提案し、空気清浄機でも「スペックの割に安い」というメッセージを打ち出した。「PM2.5」が蔓延し、大気汚染問題が深刻な中国で、日本メーカー製空気清浄機の勢いは衰えていないものの、安価な中国メーカーがCADRの数字を出すようになり、中国メーカーの勢いも強くなってきたように思う。

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