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新マルチメディア放送サービス「i-dio」、エフエム東京などが来年3月から 旧地上アナログ帯域を再利用

» 2015年10月16日 12時09分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 地上アナログテレビ放送の終了で空いた周波数帯を再利用する「V-Lowマルチメディア放送」が来年3月に始まる。愛称「i-dio」として福岡、東京、大阪でサービスを開始し、順次エリアを拡大、2019年度には世帯カバー率78.3%を目指す。成功には受信機の普及がカギになりそうだ。

photo 愛称は「i-dio」
photo 2019年度には世帯カバー率78.3%を目指す

 V-Lowマルチメディア放送は、地上アナログテレビ放送の終了で空いた周波数帯(99〜108MHz)を再利用し、移動しながらスマートフォンやカーナビでコンテンツ受信できるサービス。放送波にIPパケットを変調して載せる「IPデータキャスト」(IPDC)を活用し、不特定多数に情報を提供する「放送」と、個別にデータを送る「通信」の同時活用ができ、映像や音声に加え画像や文字、ファイル、制御信号なども送信できるのが特徴だ。

 総務省は、複数の事業者による参入機会を確保するためとして、放送局などインフラを整備する「ハード会社」と、放送業務を行う「ソフト会社」を分離する仕組みを導入。TOKYO FMと、各地のFM放送局が参加するJAPAN FM NETWORK(JFN)がハード会社「VIP」と、「東京マルチメディア放送」など全国6社のソフト会社を設立して参入した。番組を制作するコンテンツプロバイダーも加え、役割を3体制に分けて運営する。

photo 周波数帯(99〜108MHz)を再利用
photo IPデータキャスト(IPDC)の仕組み
photo 全国を7地方に分けて展開する
photo ハード事業者、ソフト事業者、コンテンツプロバイダーの3層に分かれる

 全国を7つの地方に分け、各地域ごとにコンテンツを配信する。エフエム東京とJFNのハード・ソフト会社の持ち株会社、BICの藤勝之常務は「音声のラジオ、映像のテレビに次ぐ第3の放送。さまざまなデータの形で、地域ごとに異なる情報を提供できる」とアピールする。

 視聴は基本的に無料。現時点では、アマネク・テレマティクスデザインと、エフエム東京子会社のTOKYO SMARTCASTの2社がコンテンツ配信を予定している。

 アマネクの今井武CEOは本田技研工業出身。年間300万台の自動車へのチューナー標準搭載を目指し、気象や道路状況を配信する計画だという。車の位置情報をもとに周辺店舗の情報やクーポンも提供し、カーナビからスマホにクーポンのデータを送信して購買につなげる仕組みも用意する。

 「受信料ではなく、スマホなどの誘導先で商売が生まれる。そうしたモデルを考える企業にコンテンツプロバイダーになってもらい、新市場を開拓してほしい」(BICの藤常務)

 受信機として、放送波をWi-Fiに変換するスマホ用の「Wi-Fiチューナー」、自治体向けに防災ラジオ「MeoSound VL1」を配布するほか、チューナー内蔵のSIMフリースマホ「i-dio Phone」も12月に発売予定だ。今後はカーナビなどの機器に埋め込む受信モジュールを開発するという。

photo スマホ用の「Wi-Fiチューナー」
photo チューナー内蔵の「i-dio Phone」
photo 自治体向けに防災ラジオ「MeoSound VL1」

 BICの千代勝美社長は「放送と通信を融合したビジネスモデルは世界初の挑戦。あらゆる機器にV-Lowの受信モジュールを埋め込み、新時代のエコシステムを構築する」と意気込む。

photo BICの千代勝美社長(中央)、藤勝之常務(右から2番目)ら。

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