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パックマン美少女擬人化も“公認” バンダイナムコが「カタログIPオープン化」で模索するファンとの新しい関係(1/3 ページ)

» 2016年01月22日 11時00分 公開
[山崎春奈ITmedia]

 「おもしろいきかくを まっているぞ!」――「パックマン」「ゼビウス」「マッピー」などバンダイナムコエンターテインメントの往年のゲームタイトル17個のIP(知的財産)を他企業や個人クリエイターに開放し、2次利用を推進するとして昨年4月にスタートした「カタログIPオープン化プロジェクト」。個人法人、学校まで、エントリー数はこれまでに200以上にのぼる「予想以上の反響」という。老舗ゲームメーカーが“愛娘に旅をさせる”ことを決めるに至った経緯、加速するUGC文化に対する思いは。

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 「カタログIPオープン化プロジェクト」は、同社の過去のゲームタイトルの中から1980年代の作品を中心とした17タイトルのキャラクター、音楽、ストーリー、設定、ゲームシステムなどをオープン化し、提供するもの。商用利用や2次創作を含めて公認するなど、クリエイターが利用できる権利の大きさが話題を集めた。

「宝物」をユーザーに委ねる勇気

 プロジェクトを企画・統括するネットマーケティング部ゼネラルマネージャーの桝井大輔さんは、取り組みの意図を「これからのエンターテインメント企業がUGC文化とどう向き合っていくかを真剣に考えたチャレンジ」と話す。

 ネットやSNSの発展に伴い、ゲームやアニメの「実況」文化や、イラストや動画などの2次創作がますます盛んになっていることはメーカー側としても感じているという。「今やユーザー自身が楽しむところまで含めてコンテンツの魅力」としつつ、権利的、事業的にはナイーブな部分もあるのも事実だ。「いつまでも“グレー”のままではもったいない、真っ白にした時にどんな景色が見えるのか、試してみたかった」(桝井さん)。

 バンダイナムコグループが10周年を迎えた2015年は、旧社名(バンダイナムコゲームス)を現社名に改めた年でもあった。「事業領域を拡大させるためにも、ゲームに限らず、より広くデジタルコンテンツと向き合っていくという意思の表れ」――新たな社名にふさわしいプロジェクトとして、外部の企業やクリエイターとのオープンイノベーションにつながる場を生みだしたかったという。

photo 社屋のエントランスにはパックマンの関連商品が

 とはいえ、長く愛されてきたキャラクターやゲームシステムは同社にとって「宝物」に等しい大切な資産だ。知名度はあるもののグッズ展開などは現役の人気IPより少なく、ポテンシャルを生かしてほしいという思いは強い一方、実際に一切をユーザーに委ねてよいものかという懸念の声はもちろん上がったという。関係部署を回って説明を続け、懸念を1つずつ解いていった。「『絶対に反対』という声はほとんどなく『できたら面白そうだけど不安』という意見が多かった。それならできる、『チームが責任を持ってケアします、やりましょう!』と」(桝井さん)。

 ラインアップした17タイトルは、キャラクターにとどまらずゲームシステムや音楽まで100%同社が権利を持ち、すべて開放できるものにこだわった。ちょっとでも日和ってしまったらつまらなくなる、やるなら徹底的にやろう、中途半端になるようならやめよう――そう心に決め、数カ月をかけて準備を進めていった。

審査は「通すためのもの」

 「我々にとっては大事な“愛娘”だが本当に求められているのだろうか? 誰も手を挙げてくれなかったら?」――そんな心配は杞憂に終わり、4月に受け付けをスタート後、7月にはエントリー企業は100社を超え、50件以上の企画が具体的に持ち込まれるなど、予想以上の反響となった。

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