Alter/Egoは、独自の入力インタフェースを持っておらず、音符やさまざまなコントロールはすべてMIDI情報にアサインされているため、特定のDAWに依存することがない。今回はLogic Pro XとAudioUnitsプラグインで試したが、CubaseやSONARであっても同じでフル機能を使うことができる。
だが独自のインタフェースを持っていないことのデメリットもある。それは、発音させる音素によっては音が遅れて出てくるということだ。例えば、「あ」と「さ」を発音した場合、歯擦音の「s」の部分が母音の「a」に先行して発音される。両方の母音の部分はほぼ同じタイミングになるが、実際には「さ」のほうが先に発音されることになる。これをMIDIの音符として記述するときには「さ」の場合は体感上の音より前に音符を置かなければならない。
VOCALOIDやUTAUでは、こうした音素毎の違いを吸収して記譜しているのだが、Alter/Egoを使ったALYSの場合には、その修正をユーザーが手作業で行う必要がある。
これは地味ながらけっこう手間取る作業だ。母音だけでできた曲とかはほとんどないので、入力したあと、ほぼ全域にわたって再編集しなければならない。
もっとも、歌詞を先に入れておけば、MIDIキーボードで、こうした遅延も考えながら入力することで、かなりショートカットできる場合もある。レガートというオプションをチェックして音符を重ねるように弾けば、出だしの音を低いところから正しい音程に短時間で上げる「しゃくり」という技術を、母音分割やピッチ調整を使わずにできるので、これも省力化になる。さらにはライブで演奏も可能というところはこの歌声合成方式のメリットの1つだろう。
こちらは、リアルタイムのMIDIキーボード入力で歌わせてみた動画だ。さ行など、音素によっては突っ込み気味に弾く必要があるが、なんとかなるレベルだと思う。もちろん、後で細かい調整も可能だ。今回は右手で弾いているのを左手にiPhone 6s Plusを持って手持ち撮影していたので使えなかったが、ピッチベンドホイールやモジュレーションホイールをリアルタイムで操作すれば、もちろん反映される。うまく使いこなせば、短時間で「調教」も可能になる。
ALYSがシャンソンやフレンチポップス、さらには日本語の歌をボカロキーボードっぽくライブで弾いて歌うというのも、いつかやってみたいものだ。
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