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ドラクエ遠足・ウイイレ部も「ふざけてない」 ネットの高校「N高」が目指す“青春づくり”(2/2 ページ)

» 2016年04月07日 09時00分 公開
[片渕陽平ITmedia]
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サッカー部で「ウイイレ」は「実は理にかなっている」

 ネットで行う「部活」も、遠足と同様に、全日制・通学制の雰囲気をネットにどれくらい持ち込めるかという観点から生まれた企画だ。将棋や囲碁、格闘ゲームなど、オンラインでプレイしやすい部活を選んだ。ネットを通じて友達を作り、リアルでも遊べる関係につなげることを狙いに掲げる。部活の特別顧問には、各分野のトッププレイヤーを据え、N高からのプロ輩出も目指す。

 将棋部の特別顧問を務める阿部光瑠六段は、青森の実家で、インターネット将棋で日々腕を磨き、16歳でプロ入りを果たした人物だ。「物理的な距離を超えられるのがネットのメリット。ネット将棋を通じて、N高からもプロ棋士を輩出できるのでは」(秋葉さん)。

 「ウイニングイレブン」を教材に使うサッカー部について、秋葉さんは「ネタっぽい部活になってしまった」と苦笑しながらも、「実は理にかなっていて、特別顧問を務める元サッカー日本代表の秋田豊さんの持ち味が発揮できるはず」と話す。

photo 特別顧問は元サッカー日本代表の秋田豊さん。

 同ゲームは、選手のパラメータが精巧に作り込まれており、実際の選手の動きを再現するのが特徴だ。プロ選手が試合前のシミュレーションに利用しているケースもある。闘会議などのゲーム実況の経験もある秋田顧問には、プレイデータを基に、試合展開や部員の癖を見抜いてもらい、アドバイスをしてもらう方針という。

 スクーリングや闘会議など、秋田顧問が直接フットサルを指導する機会も設ける。ネット上の「ウイイレ」だけでなく、リアルの指導と両立してもらうために、一流のサッカー選手を顧問に選んだ。

 今後は、ダンスや音楽、落語、クイズなど、オンラインと相性のよい部活を増やしていく。「ネットの部活で交流が深まり、『実際に今度はどこどこで遊ぼう』と話がつながるかもしれない。ネットとリアルのハイブリッドは強く意識している」(秋葉さん)。

「N高に行ったら、友達ができた」を目指して

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 学校は真面目に勉強を教える場所――そんな世間の“常識的”な感覚に捉われず、「友達との交流の場」としての学校の役割も重要視した結果だ。「エンタメ要素が入っていると、生理的に拒否反応が出てしまうユーザーもいるかもしれないが、僕らは真剣に取り組んでいる」(秋葉さん)。

 開校準備に際し、通信制高校の現状を調べる中で、ガイドラインに「LINEやTwitterを推奨しない」と明記している学校があることに衝撃を受けたという。「放課後の談笑を規制はしないのに、ネットのコミュニケーションを奨励しないのにはびっくり。ネットツール自体を封印することは、友達づくりの幅を狭める」(秋葉さん)。

 ただ、秋葉さんは「ネットの場だけで完結してほしくはない」とも強調する。ネット遠足や部活を通じて仲良くなった友達同士が、スクーリングや職業体験、超会議などリアルな場で交流する――そんな循環を作っていければと展望を話す。“引きこもり量産学校”を作るわけではなく、普通の高校生も含め、さまざまな環境の生徒に「N高に行ったら、友達ができた」と言ってもらえる学校を目標に掲げる。

 「来年4月、2期生を迎える時には、保護者からも『N高に行きなさい』と言ってもらえるようになれば、何よりもうれしい。決して不可能だとは思っていないし、真剣にプロジェクトを進めているので、今後に期待してもらいたい」(秋葉さん)。

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