米連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官は4月7日(現地時間)、米オハイオ州のケニオン大学で開催されたプライバシーに関するイベントのオープニング講演で、私企業から購入したiPhoneのロック解除ツールはiPhone 5s以降のモデルでは使えなかったと語った。
「(このツールは)5sでは使えなかった。つまり、狭い範囲の端末でしか使えないツールだ。これについては確信を持てる」(コーミー長官)
米AppleはiPhone 5s以降で採用しているプロセッサ「A7」でダウングレード目的のインストールを防止するために、Secure Enclaveコプロセッサでもシステムソフトウェア認証を利用するようにしている。恐らく、FBIが購入したツールはこの機能に対応していないのだろう。
FBIはカリフォルニア州で起きた銃乱射事件で死亡した犯人のiPhone 5cをロック解除するためのツールの提供を、当初は米Appleに求めていたが、Appleがこれを拒否し、連邦地裁にAppleにツール提供を命令するよう訴えていた。FBIはその後、第三者(サン電子傘下のイスラエル企業と見られている)からツールを入手し、ロック解除に成功したとして、要請を取り下げた。
コーミー長官の発言は、講演の後の質疑応答でのものだ。同氏はまた、「FBIは秘密を守るのが非常に得意だ」とし、ツールの購入先は明かさなかったが、「このツールの購入先の企業についてはよく知っているが、この企業もツールを外部に流出させないと強く確認している」と語った。
Appleにロック解除方法について説明するのかという質問には、「もしAppleに説明したら、Appleは(ロック解除に使った脆弱性を)修正するだろう。そうしたら、われわれは振り出しに戻ってしまう。(Appleに説明するかどうか)まだ決定していない」と答えた。
米連邦政府は連邦機関が発見した情報セキュリティの脆弱性について開示する方針だが、捜査当局には例外が認められているため、FBIにはロック解除方法を開示しないという選択肢もあるとみられている。
以下にコーミー長官の講演の録画を転載する。質疑応答は52分30秒ごろからだ。
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