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日本と海外でキーボードが全然違う!? PCローカライズに込めた熱い思想“中の人”が明かすパソコン裏話(1/5 ページ)

» 2016年10月13日 11時00分 公開

 こんにちは、日本HPでPCのローカライズなどを担当している白木智幸です。メーカーの中の人だからこそ知っている“PCづくりの裏話”を明かす本連載。第1回の「ACアダプターのローカライズ」に続き、今回はローカライズの第2弾として、「キーボード」を取り上げてみたいと思います。

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 キーボードは一見どれも同じように見えますが、購入してから「これは失敗した」と感じたこともあると思います。実は、キーボードには、押したときの深さ「ストローク」と、キーの大きさと間隔「キーピッチ」、そして「反発力」という3大要素があります。これらを押さえていただくと、自分に合った製品と出合えるチャンスがグッと増えると考えています。

クルマの「燃費」くらい大切な「ストローク」

 「ストローク」について少し大げさに表現するなら、クルマで言うところの「燃費」くらい大切な指標です。クルマの燃費は「排気量」と密接に関わっています。排気量の大きなクルマが燃費で不利になるように、ノートPCの場合は「薄く」なると、内部のスペースが少なくなるので、どうしてもストロークが浅くなりがちになります。

photo キーの上部から押し込んだ底面までの距離をストロークという

 ピアノの鍵盤を押したとき、普通の半分の浅さだったとしたら押しにくいと感じるのではないでしょうか。場合によってはおもちゃのキーボードのように感じるかもしれません。PCのキーボードでも同様に、ストロークが短くなると違和感を抱くことになります。

 また、キーストロークは製品の厚さ・薄さに影響します。キーストロークが大きくなると、製品の厚さが増してしまします。ハンバーガーに例えると、ストロークが大きいということは具材である「ビーフパティ」が大きいと考えていただければ分かりやすいかと思います。

 ただし、ハンバーガーの場合は具材がぎっしり詰まっていて分厚い商品でも「良い」と感じられるのですが、ノートPCの場合は、薄さが求められます。薄いデバイスほど軽さでは有利になりますし、なにしろ薄型の製品はデザイン性が高いので、所有した時の喜びもひとしおです。したがって、製品を企画する上では「薄さ」と十分な「ストローク」を両立させる必要があります。

 そして、薄くするためには剛性を確保する必要も出てきます。熱や部品同士の干渉を抑えながら、少ないスペースにまるでパズルを組み合わせるかのようにきれいに収めていく必要があるのです。

photophoto ノートPCは階層構造になっている(左)、内部構造の例。キーボード背面にはバッテリーセルが配置されスペースを無駄なく利用している(右)

ローカライズの本丸「キーピッチ」

 続いての要素「キーピッチ」は、キーの大きさと間隔を指します。12〜13インチサイズのノートPCであれば、キーボードのピッチはデスクトップPCと同じ約19ミリを確保できますが、これ以下のサイズの場合、キーボードのサイズが小さくなり、ピッチが狭くなる可能性があります。

photo キーの中央から隣のキーの中央までの距離をキーピッチと呼ぶ

 キーピッチが狭い場合は、1つ1つのキーが小さくなります。キーの大きさが小さくなると、タイプミスしやすくなりますし、キーが全体に中央によった形になるために、両手を中央に寄せて肩を小さくかがめて入力するような形になります。これは、長時間の入力作業を快適に行うということを考えると、人間工学(エルゴノミクス)の観点では良いことではありません。

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