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» 2016年11月11日 13時55分 公開

「よく諦めなかったね」――高さ数メートルの“リアル恐竜”作り続けて13年、たった6人の制作企業の思いは

全長8メートルのリアルな恐竜の着ぐるみ「TRXO3」を、商用壁画などを手掛けるON-ARTが発表。同社は10年以上にわたって恐竜を作り続けているという。その原動力は。

[片渕陽平,ITmedia]
photo 全長8メートルのティラノサウルス「TRXO3」とON-ARTの金丸賀也社長

 「よく諦めなかったよね、そう言われます」――10年以上、“実際に動く”恐竜を再現しようと挑戦している企業がある。商業施設の壁画や博物館のジオラマ制作などを手掛けるON-ART(オンアート)は11月10日、中に人が入って歩くティラノサウルスの着ぐるみ「TRXO3」を発表した。

 中生代から白亜紀に生息したティラノサウルスを全長8メートルのサイズで再現。着ぐるみの中には人間が1人だけ入り、飛行機の操縦かんのようなレバーを駆使し、手や足、首、口などを細かく動かせる。恐竜の動きをリアルに見せるために、化石骨格の研究や専門家の意見を参考にしたという。

 骨格には航空機のボディなどに使われる炭素繊維(カーボンファイバー)を採用。鉄の約7倍相当の強度と軽量化を実現し、全体の重さは約38キログラムに抑えたという。表面には柔らかい樹脂製の素材を使い、安全面に配慮した一方、同社が商用壁画やトリックアートの制作で培った塗装技術を応用し、頑丈そうに見える皮膚の質感に近付けている。

photophoto 大きな尻尾を振ったり、天に向かってほえたりと、ダイナミックな動きを披露
photo ティラノサウルスに食べられそうになるON-ARTの金丸社長。「何回も噛まれているが大丈夫」という

 「もし恐竜が生きていて目の前に立っていたら、どんな感じがするか」――そんな思いから、同社は2003年に恐竜の着ぐるみの制作に着手。開発した着ぐるみを使い、テーマパークや博物館などのイベントでパフォーマンスを披露しながら、よりリアルで迫力のある恐竜の制作を続けてきた。同社の金丸賀也社長は「資金は自分たちだけで調達した。恐竜で稼ぎながら恐竜を作る“自転車操業”だった」と振り返る。「中小企業は人任せではダメ。いくら知識がなくても自分たちで全部しないといけない」(金丸社長)。

 そうした甲斐があってか、12年には経済産業省の「第4回ものづくり大賞」で関東経済局管内 優秀賞を受賞した。産業機械の受賞が多い中で、エンターテインメント関連の技術が受賞するのは異例だったという。「経産省の担当者に受賞理由を聞いたら『君たちは小さな会社なのに、日本の技術で世界に挑戦している』と前向きな姿勢を評価してもらえた」と金丸社長は話す。

 同社は現在、制作した着ぐるみを使って年間500回以上の公演を行っている。着ぐるみの販売はしていないが、観客がYouTubeに投稿した動画を見て、国内外から「売ってほしい」「いくらで買えるのか」などの問い合わせも相次いでいるという。「今はテーマパークなどの依頼を受けて企画を用意しているが、ここ1〜2年くらいをめどに、自分たちで20〜30頭の恐竜が登場する大型イベントも企画したい」。

photophoto 恐竜のテーマパークの開園を構想

 このほか、来年には福井県立恐竜博物館が監修した「フクイラプトル」(福井県で化石が見つかった恐竜)の着ぐるみも発表予定。金丸社長は「恐竜の歴史を知ることも大事だが、そこに実際にいる存在感を味わってほしい」とし、いずれは恐竜のテーマパークの開園を夢見ていると話していた。

 「従業員6人の小さな会社だが、ものづくりの端くれにいるつもり。中小企業だからこそ、新しい挑戦を続けたい」(金丸社長)

photo 金丸社長を囲む恐竜たち

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