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“印刷して貼るメイク”パナソニックが開発 その貼り心地は――実際に体験してきた(3/4 ページ)

» 2016年11月18日 06時00分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 開発チームの川口さち子さん(技術戦略部 事業創出推進2課 課長)は、貼るメイクは「(市販のメイクと比べて)どちらかというと長持ち」と話す。通常のメイクは皮脂によって崩れてしまう場合があるが、貼るメイクは個人差はあるものの、肌と化粧顔料の間にシートを挟んでいる分、皮脂によるメイク崩れを抑える働きがあるという。ただ、市販のメイクと同様に、雨に降られたり、手で引っかいたりするとはがれてしまうという。

 化粧を“落とす”ときは、肌に手のひらを押し当ててこするだけで、簡単にシートがはがれる。市販のメイクとは違い、メイク落としは不要だ。

photo 手で簡単にはがせる

 そうした手軽さが、CEATEC JAPAN 2016では注目を集めた。川口さんは「わざわざ地方から、メイクアップシートを見るためだけに来場したユーザーもいた」と反響の大きさを振り返る。「美容皮膚科の医師や、会場のコンパニオンを担当しているスタイリストの方々にも来てもらえた。CEATECが美容系の展示会ではないことを考えると、異例の反応だと思う」(川口さん)。

 そのほかにも「ケロイドなど、子どもの傷痕を隠すのに使いたい」という保護者の要望や「塗るのは面倒だが、貼るだけなら抵抗感は少ない」という男性の意見も寄せられたという。

「白物家電と黒物家電の垣根をなくした商品を」

 「白物家電と黒物家電の垣根をなくした商品を作ろう」――メイクアップシートのアイデアは、パナソニック社内で2012年6月に始まった新規事業検討のワークショップで誕生した。通信系や化学、半導体部門など、専門分野が異なるメンバーが集まってアイデアを出していく中、美容・ヘルスケアの分野を、当時話題になり始めたばかりだったIoT(Internet of Things)と結び付ける発想にたどり着いたという。

 「美容家電はパナソニックが市場を開拓したが、ネットとの融合はまだだった」と川口さん。美容にIoTを活用する前提のもと、「自分たちが欲しくなる」「三日坊主にならず使い続けられる」という考えから、「見ない日はないだろう」と鏡をテーマに決めた。

photo CEATEC JAPAN 2016に出展したプリンタと鏡

 プロトタイプの開発は13年4月にスタートしたが、異なる人種でも肌の分析ができるようにしたり、シートで肌がかぶれないように刺激性試験をクリアしたり――などの課題を解決するのに時間を要したという。開発チームの淵上雅世さん(事業創出推進2課 主任技師)は「いくら研究段階とはいえ、安全性は保障しておかないといけなかった」と振り返る。

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