「welqの記事を勝手に『監修』してみれば、少しは世の中に貢献できるのでは」――記事内容に問題があると指摘され、“炎上”しているディー・エヌ・エー(DeNA)の健康情報サイト「welq」の記事を、“勝手に監修”と銘打って問題点を精査した専門家がいる。東京大学大学院薬学研究科特任准教授の五十嵐中(いがらし・あたる)さんだ。
五十嵐さんは、welqの記事を1本選んで「勝手」に監修し、11月27日にFacebookで公開。「まともに『監修』に取り組んだとしたら、全面書き換えを要望せざるを得ないページだった」と指摘している。
五十嵐さんは、医療統計学などが専門の研究者で、東大薬学研究科で医薬政策学講座を担当。『「医療統計」わかりません!!』などの著書(佐條麻里さんとの共著)もある。
今回“監修”したのは、「医療保険制度は改正された!?利用できる3つの機能とは?高齢者の負担増?」と題された記事。日本の医療保険制度について解説した長文だ。
五十嵐さんはこの記事について、医療保険制度の定義が二転三転したり、「混合診療」を「混合治療」と、「保険証」を「保険所」と誤記しているなど、多数の間違いや矛盾点を指摘。「全体を通して、記述の不整合と濃淡の差が大きすぎる」とみる。
また、文中に「とされる」「といわれる」が多用されるなど「コピペの香りが匂う」とし、転載元の記事を5本特定。記事のほとんどがコピペだと指摘した上で、「コピペ元の記述が微妙に食い違っているために、パッチワークで作ったwelqページで章ごとに矛盾が生じる原因となっている」と分析している。
五十嵐さんは今回監修した記事について、「誤りの多いページを恣意的に選んできたのではないかという批判も考えられる」とし、「恣意性を排除した形の『welqのシステマティック・レビュー』をこれまた『勝手』に実施しようと思う」と予告している。
welqはDeNAが昨年10月にスタートしたヘルスケアに関するキュレーションサイト。医療や健康に関する記事を大量に掲載しており、検索上位に表示されることが多い半面、医療の専門知識を持たないライターが書いた記事がほとんどとみられ、「内容の信頼性が薄い」「ほかのメディアからの無断転載をみられる内容が多い」などと、たびたび批判を受けていた。
DeNAは11月25日、「公開されている記事について、医師や薬剤師などによる監修を始める」と発表したが、「対応が遅い」「監修を受けていない記事は非公開にすべきだ」など批判は続いている。
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