ITmedia NEWS > ネットの話題 >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

三浦九段の将棋ソフト“不正使用疑惑”は「証拠なし」 ただし出場停止処分は「やむを得なかった」

» 2016年12月26日 19時47分 公開
[ITmedia]

 プロ棋士の三浦弘行九段が対局中に将棋ソフトを不正使用した疑いで、日本将棋連盟が設置した第三者調査委員会は12月26日、「三浦九段が不正行為に及んでいたと認めるに足る証拠はないと判断した」と発表した。調査の結果、疑惑の根拠として挙がった証拠には「実質的な証拠価値が乏しかった」(同委員会)という。一方、連盟が年内の公式戦への出場停止処分を下したことは「やむを得なかった」としている。

photo 第三者委員会の但木敬一委員長(ニコニコ生放送より)

 三浦九段の疑惑は、竜王戦と名人戦の全4局で、スマートフォンなどを使い、将棋ソフトの指し手を参考にした疑い。一部の棋士から「対局中に離席が多い」との指摘があり、疑惑が浮上した。三浦九段は疑惑を否定し、「疑念を持たれたままでは対局できない」「休場したい」と話したため、日本将棋連盟は今年10月12日、三浦九段に対し、直後の竜王戦を含む、年内の公式戦出場を停止する処分を下した。

photo プロ棋士の三浦弘行九段(日本将棋連盟のWebサイトより)

 その後、連盟が設置した第三者調査委員会が調査したところ、夕食休憩後に30分ほど離席したという指摘には根拠がなかったという。「三浦九段の指し手が、将棋ソフトの指し手と一致している」という指摘も、計測ごとにばらつく指標だったため、証拠価値はないとしている。さらに、三浦九段が提出したスマートフォン、PCなどを外部企業が解析しても、不正行為の痕跡は見当たらず、十分な証拠がないと判断したという。

 出場停止処分については、直後に竜王戦の開幕を控えていたこと、疑惑が晴れないまま三浦九段を出場させれば、混乱を招く恐れがあったこと――などから、「処分当時、高い必要性と緊急性があったと認め、判断はやむを得なかった」(同委員会)と説明している。

「今や将棋連盟は未曽有の危機に直面している」

 「将棋ソフトの棋力の向上により、今や将棋連盟は未曽有(みぞう)の危機に直面しているといっても過言ではない」――第三者委員会の但木敬一委員長はそう話す。将棋ソフトが存在しなかった時代とは違い、但木委員長は「相手が将棋をソフトを使うのではないか、という疑心暗鬼の心が棋士に生まれていることを見逃すことはできない」と強調する。

 その上で、但木委員長は「電子機器を持ち込まないようにする手続きの整備、発覚した場合の制裁など、合理的なシステムの構築を急ぐ必要がある」と連盟に提言。「将棋連盟が現実を直視し、将棋ソフトの正しい位置付けを示す必要に迫られている」と話している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.