プロ棋士と人工知能がタッグを組むと、どこまで強くなれるのか――。
「ニコニコ超会議2016」(4月29〜30日、千葉・幕張メッセ)で、プロ棋士である斎藤慎太郎六段と将棋ソフト「Apery」がタッグを組み、3つの将棋ソフト「PONANZA」「nozomi」「大樹の枝」の“連合軍”と対決。激戦の末、斎藤慎太郎六段が勝利し、2年前の「ニコニコ超会議3」で行われたタッグマッチに引き続き、“人間側”の連勝となった。
斎藤六段は、ディスプレイに表示されたAperyの推奨手を確認しながら(持ち時間30分、秒読み30秒)、将棋ソフト側は3ソフトの合議制(1手10秒、手が分かれた場合はPONANZAの選択を優先)で試合は進められた。
中盤から終盤にかけて不利と思われていた斎藤六段だったが、詰めろをかけた勝負手(7一銀)で形勢が逆転。最後は将棋ソフト側の疑問手もあったものの、見事に“詰み”への道筋を読み切った。今回のイベントまで、「将棋ソフトとの合議制など経験したことがなかった」という斎藤六段。Aperyとどのように“協力”して対局を進めたのだろうか。
Aperyは状況に応じて3〜4通りの手を表示する。選択肢ごとにAperyが計算した点数(評価値)が付けられており、数値が高いほど“オススメ”ということになる。斎藤六段が対局中に考えていた基準は以下の2つだ。
特に相手が想定外の手を打ってきて、自分の判断に迷いが生じたときなどにAperyは頼りになったと斎藤六段は話す。
「自分の手が否定されると悲しくなることもありますが、お互いの手を照らし合わせることで、共に最善手に向かっていけたのではないかという手ごたえはありました。もちろん、まだタッグを極めたわけではありませんが、プロと最強ソフトが組むというのはいい試みだと感じます」(斎藤六段)
勝負手だった7一銀は、Aperyが示す手の評価値も割れていた場面で「詰みまで読みきれなかったが、王手をかけるほうがうまくいくと考え、自分の直感を信じて打った」という。対局後の感想戦では、PONANZA開発者の山本一成氏も「10手先ぐらいならば見逃さないが、20手や30手ともなると詰み筋を見落とすこともある」とコメント。斎藤六段の読みが上回ったことを示唆した。
斎藤六段は2015年3月から行われた「電王戦FINAL」でAperyを破った際も(参考記事)、事前に数百局の練習を重ねるなど、研究に対して熱心なことでも知られる。棋士として人工知能との付き合い方を尋ねると、将棋ソフトを自らの成長に生かすことに対して、あまり抵抗がないと話した。
「最善手を知るという点では、自分1人で研究したり、ソフトだけで研究するよりも両者が組むほうがいいと思います。ただ、それが賞金がかかったトーナメントなどになると人間としての気持ちやプライドもあるので(導入は)難しい。今は電王戦でPONANZAが活躍していますが、好手が多く楽しみにしているんです」(斎藤六段)
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