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キンコン西野氏が火種 「コンテンツ無料化は、作家を殺す」のか? マンガを例に考える(3/4 ページ)

» 2017年01月24日 10時46分 公開
[新崎幸夫ITmedia]

 無料マンガアプリは、マンガの閲覧数に応じて作家側に広告収入が入るものが多い。無料公開が有料版や紙版の売り上げにつながらなくても、無料版が多く読まれれば作家側もある程度潤うという構図もある。

 余談だが、女帝の原作者である倉科遼さんは、作品の無料化に寛容なようで、「女帝」、その続編の「女帝花舞」、あるいは「ネオン蝶」といった作品もすべて無料で読める。

 このように、漫画家、原作者レベルが無料化・フリーミアム化に寛容な例は他にもあり、有名なところでは「ドラゴン桜」で知られる三田紀房さんも、エージェントの「コルク」経由で色々な読み放題アプリに作品を提供している。

「プロモーションのために、無料化する」

 最後に、プロモーションのために無料化する事例も、紹介したい。無名作家が「pixiv」など投稿サイトに作品投稿する場合、「より多くの人に見てほしい」「自分の画力を知ってほしい」という主旨で、無料公開する場合は多い。実際に、それでスカウトされるケースもあるから、経済面では確かに合理的ともいえる。

画像 「ブラックジャックによろしく」は2次利用フリーで公開されている(佐藤秀峰さんのサイトより)

 変わったところでは、佐藤秀峰さんのような事例もある。同氏は、2012年に「ブラックジャックによろしく」を条件付きで、2次利用フリー化。同作品の主人公は、多くのWeb広告や、政府の啓発ポスターなどに登場した。笑い話としては、アダルトビデオ作品も出たようだ。それはともかく、圧倒的露出により、他に例がないほどのプロモーション効果をもたらした。

 結果は、どうなったか。無料配信により読者が拡大し、有料電子書籍の購入者が増加。電子書籍関連の売り上げが急激にアップし、2次利用フリー化から4カ月半で1億円を突破したという。2次利用フリー化1年後の総括では、「続編『新ブラックジャックによろしく』を始め、『海猿』など他の佐藤秀峰作品の販売を希望する連絡が各電子書籍事業者から殺到しました」(佐藤さんのnoteより抜粋)と振り返っている。

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