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利益優先でリスク軽視 医療記事の監修「コスト見合わない」と見送り……DeNAキュレーションサイト問題の背景(2/4 ページ)

» 2017年03月13日 17時00分 公開
[岡田有花ITmedia]

「iemo」「MERY」の著作権侵害、買収前から把握

 DeNAが公開していた記事約38万件を調査委員会がサンプル調査したところ、著作権侵害の可能性がある記事は1.9〜5.6%あったという。また、16年11月10日時点で公開されていた画像約472万点のうち、複製権を侵害していた可能性がある画像は約75万枚に上ったという。

 iemoとMERYは、DeNAに買収される以前から、画像の著作権侵害が指摘されていた。両サイトは、他サイトの画像をコピーし、自社サーバに保存した上で表示していたのだ。DeNAも買収前にこれを把握しており、著作権侵害を解消することを買収条件にしていたという。具体的には、画像をコピーするのではなく、引用元サイトに直接リンクを張って表示させる形に変えさせた。

 だがMERYだけは、買収後に新規に作成した記事について、コピーした画像を引き続きサーバ保存して表示していた。MERYは「直リンクは他社サーバに負担をかけ画像だけ利用するタダ乗り」だと考えていたためという。調査委員会はMERYが画像をサーバに保存し続けたことについて「極めて不適切であったと言わざるを得ない」と批判している。

 各サイトとも、他サイトから画像を引用する際はツールを使っていた。画像利用を禁止するサイトはブラックリスト化されており、ツールが自動で制限するが、それ以外のサイトの画像なら利用できる状態。掲載時の引用元の確認も不十分で、各サイトの担当編集者などの裁量次第だったという。

 10サイトとも、記事の文章にコピペがないかの確認も行っていたという。ただ、編集担当者などが違和感を覚えたところを検索エンジンで検索するなどにとどまり、全文チェックはしていなかった。また、コピペがあっても、どの程度が問題かの基準がなく、判断は編集者やディレクターの裁量に任されていたという。

医師の監修は「コスト面で見合わない」と見送り

 調査委員会がWELQに掲載されていた記事19本について調査したところ、薬機法違反の可能性がある記事が8本、健康増進法・医療法に違反する可能性がある記事がそれぞれ1本あったという。

 また、「死にたい」などセンシティブなテーマの記事にアフィリエイト広告を掲載したり、医療に関する記事にユーザーへの配慮に欠ける内容を掲載したり、医師の間でも見解に相違がある内容を安易に掲載するなど、倫理的に問題がある記事が掲載されていたと指摘している。

 「WELQ」立ち上げ前には、医師の監修の必要性について議論していたという。WELQ開始にあたり、約100本の試作記事を執筆し、法務部の確認を受けたところ「医療に関する内容を含む場合は専門家の監修を付けるべき」と指摘を受けていた。

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